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ジャニーズと「性被害」 まず事実関係を明らかに

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 大きな影響力を持つ芸能事務所で何があったのか。

 ジャニーズ事務所に所属していた26歳の男性が、2019年に亡くなった創業者のジャニー喜多川氏から性被害を受けていたと記者会見で語った。

 男性は12年に15歳で事務所に入り、16年に辞めるまで喜多川氏から「合計で15回から20回ほど性的被害を受けた」と述べた。ほかのメンバーが被害に遭うのを見たとも話した。

 会見に先立って、英BBC放送が喜多川氏による性加害疑惑を取り上げていた。

 これまでにも報道がなかったわけではない。1999年には、喜多川氏が所属する少年らにセクシュアルハラスメント行為を繰り返していると週刊文春が報じた。

 これに対し、名誉毀損(きそん)にあたるとしてジャニーズと喜多川氏が出版社を訴えた。その結果、「セクハラに関する記事の重要部分は真実」と認めた高裁判決が、最高裁で04年に確定した。

 故人のため、弁明の機会が与えられないことは考慮すべきだ。

 男性の会見を受けてジャニーズは、所属タレントらに聞き取り調査したほか、かつて所属した人向けの相談窓口を設置する方針を記した文書を取引先に送付した。

 まずは、事実関係を明らかにすべきだ。04年の判決確定以降、どのような対策を取ってきたのかも問われるだろう。プライバシーなど人権に配慮しながら、第三者による適切な調査が求められる。

 芸能界では「#MeToo」運動の広がりもあり、性暴力やハラスメントの訴えが相次ぐ。立場を利用して、スターを目指す人たちの弱みにつけ込むのは言語道断だ。

 欧米では近年、カトリック教会の聖職者による少年への性的虐待が問題になっている。判断力が十分に備わっていない未成年の場合、より深刻だ。

 多くの人気男性アイドルを抱えるジャニーズは、長らく芸能界を席巻してきた。起用すればテレビ局は安定した視聴率が期待できる。もたれあいの関係があったのではないか。

 夢を売るエンターテインメントは、視聴者や観客の信頼によって支えられている。携わる者はその原点を忘れてはならない。

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