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結婚って何ですか

パートナーとの関係が多様化するいま、「結婚」について改めて考えるための特集ページです。結婚に関するさまざまな疑問を取り上げます。

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「気分が上がる」増えるシニア婚活 風潮に変化?その最前線

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「茜会」が開催した婚活パーティーで、パーティション越しに会話する参加者=東京都渋谷区で2023年2月24日午後2時25分、岩本桜撮影
「茜会」が開催した婚活パーティーで、パーティション越しに会話する参加者=東京都渋谷区で2023年2月24日午後2時25分、岩本桜撮影

 男女ともに結婚しない人の割合が増える一方、結婚してもおよそ3組に1組が離婚している現代の日本。そんな中、新たなパートナーを求める中高年やシニアが増えているという。「シニア婚活」の最前線を取材した。【岩本桜】

「気分上がる」シニア婚活の現場

 「今はどこかお勤めですか?」「いやいやもうリタイア。いい年ですもん」「お互い様です」

 2月下旬、東京都内で開かれた婚活パーティー。結婚相談所「茜会」が主催し、50~80代の男女約20人が集まった。

 男女が1対1でテーブルに着き、パーティション越しに顔を寄せ合って趣味や家族の話で盛り上がっていた。参加者には、気になる相手の名前を記入する「マッチングカード」が配られ、マッチングが成立したら本人に連絡が入るシステムだ。

 「一緒に旅行や食事を楽しめるパートナーと出会いたい」。都内のケアマネジャーの女性(64)は還暦の手前に夫をがんで失い、一周忌を過ぎてから婚活を始めた。

 婚活が外出するきっかけになっているといい、「ここ(結婚相談所)に来るだけで気分が上がる。ちょっとおしゃれをして出かけて、いろいろな人と話せるのも楽しい」と声を弾ませた。

思い出の共有が楽しい

 神奈川県の女性会社員(58)は、茜会を通じて今のパートナー(63)と出会った。数年前に愛犬が死んで「心にぽっかり穴が開いた」という。何か新しいことに挑戦しようと茜会に入会した。

 結婚を強く望んでいたわけではなく、気兼ねなく接することができる相手を探していた。茜会から月2回ほど男性を紹介してもらい、パーティーにも2回ほど参加した。

 約1年半在籍し「良い経験になったし、そろそろやめようかな」と思った直後にパートナーと出会った。

 一緒にいてストレスもなく、趣味も合う。2人で旅行や食事に行き、思い出を共有できるのが楽しいという。婚姻届は出していない。女性は「特に(結婚の)必要性を感じないし、婚姻届を出したくなったら考えます」と話す。

クラブ活動やバスツアーも

 茜会は1960年の創業で、40代以上を対象に婚活支援サービスを展開している。

 会員は約4000人で、平均年齢は男性59・3歳、女性56・7歳(2020年9月時点)。新型コロナウイルスの影響で休会している人もいるが、23年1月までの約3年間で会員は約2割増えた。

「茜会」が開催した婚活パーティーの様子=東京都渋谷区で2023年2月24日午後2時49分、岩本桜撮影
「茜会」が開催した婚活パーティーの様子=東京都渋谷区で2023年2月24日午後2時49分、岩本桜撮影

 茜会の運営会社の川上健太郎・統括部長は「近年は少子高齢化が進み、晩婚や熟年離婚も増えている。昔は『いい年して相手を探すのは恥ずかしい』といった風潮があったが、そういったことが恥ずかしくない時代になり、ニーズが増えたのでは」と分析する。

 お見合いのほか、ゴルフなどを楽しむクラブ活動、バスツアーや町散策といったイベントも企画している。川上さんは「『旅行したい』『おいしいものを食べたい』と思っても1人では行きづらい人もいるので、こういったイベントは人気がある」と話す。

パートナーを探す目的は

 川上さんによると、パートナーを探す目的は「結婚がしたい」「恋人がほしい」などさまざまで、法律婚のほかに週末婚や事実婚を望む人もいる。

 年代によっても違いがあるようだ。同社アドバイザーの山崎和美さんは「60代は『一緒には暮らしたいが婚姻届は出したくない』という人も多い。70代になると『週に何回かデートができればいい』と考える人もいる」と話す。

 別の結婚相談所「オーネット」(東京都中央区)が運営する中高年専門サービス「スーペリア」では、会員の大半はすぐに結婚をしたいわけではないという。子供の理解を得られない、親の面倒を見る必要があるなど、当事者だけでは解決できない問題もあるためだ。

 新型コロナの影響も出ている。新型コロナの流行後、スーペリアではそれ以前に比べて40代後半の女性会員が約2倍に増えた。マネジャーの山中崇志さんは「病気を含めて『何かあったらどうしよう』と不安を持つお客さんが増えた」と説明する。

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シニア婚活が増える背景

 なぜ、新たなパートナーを探す中高年やシニアが増えているのか。中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は「90年代ごろから(結婚しない人が増える)未婚化が進み、離婚も増えた。このため独身者の層が厚くなり、結婚の需要が増えた」と分析する。

 少子化社会対策白書(22年版)によると、1970年の50歳時の未婚割合は男性1・7%、女性3・3%だったが、2020年は男性28・3%、女性17・8%と共に上昇した。

 山田教授は「自治体による見回りなど、1人暮らしの高齢者をケアするための費用は今後増加する」と指摘。その上で、「パートナーを持つ中高年やシニアが増えることで、孤立防止につながり、パートナーに何かあった時にもう一方が病院などのサポート機関につなぐことができる。孤立した高齢者の見回りにかかる費用を節約できるほか、高齢者を支援する民生委員の負担軽減にもつながる。2人にとっても住居費などが節約でき、幸福度を高められるだろう」と歓迎する。

パートナー選びの注意点

 新たなパートナーを選ぶ上で気をつけるべき点は何か。離婚や相続に詳しい日原聡一郎弁護士は「パートナーが死亡する万が一の時に備えて、遺言書を作った方が良い」とアドバイスする。

 遺言書を作る際は、①弁護士に相談して作成するか、公証役場で公証人に作成してもらう②遺言内容を実現するための手続きを行う「遺言執行者」を指定すること――が重要という。

 弁護士や公証人が入ることで、法的に不備がない遺言書を作ることができる。さらに遺言執行者を指定することで、残されたパートナーと相手の家族とのトラブルを回避できるためだ。

 茜会の川上さんは「相性だけでなく、財産や子供との関係、お互いの仕事や住まいなども考慮してパートナーとの関係を決めてほしい」と話している。

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