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日本で働く外国人は過去10年で2・5倍以上に増え、労働力不足を背景に今後も拡大する見通しだ。安心して生活できてこそ仕事に励めるのはどの国も同じ。名古屋市西区のスタートアップ拠点「なごのキャンパス」で開業した「KUROFUNE(クロフネ)」は、増え続ける外国人ワーカーに過ごしやすい環境を提供しようと、生活全般を支えるアプリを開発。母国語で薬をオンライン購入できるなど、新たなサービスを続々と生み出している。
3月に開始したのは「お土産サービス」。全国のアプリユーザーが商品を共同購入、物流会社がまとめて母国に発送するしくみで、費用も手間も抑えられる。
実は外国人ワーカーの大半は、母国の家族に定期的に医薬品や生活用品などを送っている。「(量販店の)ドン・キホーテやドラッグストアで大量に買い込み家で段ボールに詰め、郵便局に運んで母国に送る。週2日の休みのうち1日がその作業で終わる技能実習生もいる。それがスマホ一つ、職場で休憩時間にできるようになるんです」と社長の倉片稜さん(32)は熱弁する。
アプリで使えるサービスは現在7種類。24時間生活相談や母国語で薬をオンライン購入できるサービスなど四つは無料だ。年額1万6500円の有料プランは、ケガや病気で働けない場合の所得補償保険▽手数料低額の海外送金▽オンライン日本語教育――が加わる。外国人を雇用する企業が福利厚生の一環として導入しているという。
当初は人材紹介がメインだったが生活支援に軸足を移した。契機になったのは創業2年目に参加した若手の起業塾。現場に出て外国人や企業にヒアリングをすると、双方の悩みは想定していた職場環境ではなく生活だった。「これだ」。倉片さんらは手探りでサービスを考案、プラットフォームとなるアプリを完成させた。
会社を支えるのは7カ国出身のスタッフたち。翻訳、顧客対応、営業など業務は幅広い。特に来日前のユーザー開拓に力を入れる。現地でダウンロードしておけば事前に日本の情報を入手し日本語も学習できる。「言葉が少し上手になったところで来日し、空港でワイファイを拾った瞬間にアプリを立ち上げ、これで生活に困ることはない、と。それが完成形ですね」
目指すは「このアプリがないと生活が成り立たない」と言わしめる外国人ワーカーのインフラ。世界に開かれた日本に導く、黒船のような存在になりたい。それが社名に込めた思いだ。【太田敦子】
■メモ
KUROFUNE
2018年設立。資本金4100万円、従業員17人。倉片稜社長は元外資系メーカー営業。アジアの旅先で日本が働く場所としてネガティブな印象を持たれていることを知り、危機感を抱いたのが起業のきっかけ。