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「19×19」の答え、すぐに出せますか――。算数の人気プロ講師の小杉拓也さんが書いた「小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本」(ダイヤモンド社)が、2022年12月の発売以来41万部の大ヒットを記録している。ふた桁暗算が「5秒でパッと解ける!」とのキャッチコピーで多くの読者をつかんだ。担当編集者が語るベストセラーの理由とは? 【後藤豪】
「おみやげ算」で計算
まず、この本の根幹となっている「おみやげ算」について整理しよう。
ポイントは暗算しやすくするため、どちらかの数から数字を渡して、もう片方を「10」にする点だ。「12×16」を例に取ると、最初に「12」から「16」に「2」を“おみやげ”として渡し、「10×18=180」と計算。次に、一の位同士を掛け合わせて「2×6=12」と計算。この二つを足し合わせた「180+12=192」が、12×16の答えになる。
同様に、“おみやげ”を渡すときに足したり引いたり、一の位同士を掛け合わせたりすることで、ふた桁暗算をマスターできるという仕掛けだ。本の中には100問以上のおみやげ算のテストがあり、反復練習できるようになっている。
「ふた桁×ふた桁の暗算」というマニアックな分野にスポットを当てた本が、なぜ異例のヒットとなったのか。ダイヤモンド社の担当編集者の吉田瑞希さん(30)に聞いた。
楽しく簡単にできる
――この本を企画しようと思った理由は何ですか。
◆22年4月に、小杉先生から「19×19まで暗算できる本はどうでしょうか」と提案してもらったことがきっかけです。
実際にやり方を先生に教えてもらうと、簡単にできるし、私も知らなかった方法でした。「こんなに簡単に楽しくできるんだ。本にして皆さんに知ってほしい」と思い、企画会議に出しました。
書店回りで得た“気付き”
――同じような学習参考書を手がけたことはあったのですか。
◆一回もなく、弊社自体も学習参考書を多く出している出版社ではないので、周りに聞ける人がいませんでした。
そこで、書店を回りました。紀伊国屋書店やブックファーストなど、品ぞろえが多い大型店のほか、教育熱が高くて、教育関連の本がよく売れる東京・世田谷の一般店も回りました。
そこでまず、ドリルにするか、本として出すかで迷いました。縦にめくるのがいわゆるドリルと考えると、ドリルはシリーズ化されているものが多いのです。実際、ドリルの棚に行って1冊抜いてみたんですけど、ギュウギュウすぎて一回抜いたら入らないんです。シリーズとして他の出版社がドリルを出していて、そこに1冊、急に入れるのはとてもハードルが高いことが分かりました。
一方、本という形式ならば、小杉先生は他社でも売れている本があり、まとまって棚に並んでいます。「最終的に小杉先生の本が並ぶこの場所に入れば大丈夫だな」とは思いました。
こだわったタイトル
――売り場が限られている中で、どこに入れるかという闘いをしていたわけですね。
◆大きい書店は別として、一般的な規模の書店では、学習参考書の棚には平積みスペースがほとんどなく、棚に差すのが主流です。その中で「小学校の算数の学習参考書」となると、もっと限られたスペースになります。棚に差す展開になると思ったので、タイトルにはこだわりました。
棚に入ったときに、「誰がどうなれる本」かが分からないと、書店側がどこに置いてよいかも分かりません。この時点で、小杉先生から…
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