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<鼎談書評>寺山修司 没後40年 評者・三浦雅士、小島ゆかり、本村凌二

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イラスト・寄藤文平
イラスト・寄藤文平

 ◆寺山修司 没後40年 鼎談(ていだん)

 ■評者 三浦雅士(評論家) 小島ゆかり(歌人) 本村凌二(東大名誉教授・西洋史)

 ■推薦・三浦氏

 ◆ラカンで読む寺山修司の世界 野島直子・著(トランスビュー・4180円)

実感拒み、虚構世界へ

 三浦 寺山修司は領域横断的な仕事をした人だけれど、一つのまとまりとして分かる書籍がほとんどありません。スキャンダラスだったとか見世物っぽかったとか、俳句、短歌、演劇などの各分野について書いたものはあるものの、彼がなぜこれだけ多彩な作品を作ったのか、本質的な総論はない。本書が唯一、寺山全体を分かるようにしてくれた。ラカンという精神分析家の観点で寺山の世界を「こうすると分かりやすくなりますよ」と言っています。

 寺山は俳句から出発して短歌に移りました。単純化すると、俳句の世界は統合失調症の論理で考えると分かりやすく、短歌は神経症の世界だ、と展開されます。俳句は表意文字、短歌は表音文字の世界。漢字の世界と平仮名の世界と言ってもいい。さらに、漢字の世界は視覚、平仮名は聴覚の世界だと示唆していて、ラカンの精神分析を理解する上でも便利。

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