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コロナは流行繰り返す「エンデミック」へ 西浦博氏が鳴らす警鐘

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新型コロナは流行が繰り返される「エンデミック」という段階に入ると指摘する西浦博・京都大教授=京都市左京区で2023年3月31日、山崎一輝撮影
新型コロナは流行が繰り返される「エンデミック」という段階に入ると指摘する西浦博・京都大教授=京都市左京区で2023年3月31日、山崎一輝撮影

 新型コロナウイルスの感染症対策の礎となるデータ分析を3年にわたってリードしてきた理論疫学者の西浦博・京都大教授は、「5類移行」を前に危機感をあらわにする。西浦氏は今後、新型コロナは流行が繰り返される「エンデミック」という段階に入るとみており、来たるべき「第9波」以降について「(死者、入院者が最多だった)第8波よりも大きくなることも覚悟しなければなりません」と警鐘を鳴らす。西浦氏は「第9波」やその先の未来になぜ過去最悪の被害がもたらされると考えているのか。2回に分けて紹介する。【聞き手・金秀蓮】

 3年に及ぶコロナ禍で、どんな課題が浮き彫りになったのでしょうか。各界の専門家らに聞きました。
第1回 安倍、菅、岸田…… 尾身茂氏が見た3首相 リスコミで課題も/上
第2回 「不満だった」 政府の準備不足と尾身茂氏が挙げた教訓/下
第3回 星野リゾート代表 「観光産業、コロナ前に戻るべきではない」
第4回 東京五輪「中止という選択は厳しい」 小池都知事と新型コロナ
第5回 人間関係にもコスパの原理 コロナが深めた孤独と孤立=石田光規・早稲田大教授
第7回 「命を奪うのに最適に進化」 西浦教授がいまだ恐れる新型コロナ

 ――5類移行への考えは。

 ◆5類にいつかならざるを得ないと思っていました。流行ごとの致死率の比較や、流行によってどれぐらいの人が死亡するかを踏まえ、それらが妥当な値になると移行できますが、その感覚は人によって異なります。

 データを分析する立場から言うと、人口全体の中で自然感染していない高齢者が半分以上いる今の日本のような状況では、いまだ大きな反動が予想されます。第9波が想定されますが、過去最大の流行をきっかけに「これまでの対策はなんだったんだ」と思うぐらい死者が出る可能性さえあるのです。そのようなリスクに国がもっと十分に対応するだろうと思っていましたが、そうはなっていません。

 ――十分な対応とは。

 ◆リスク評価者として空気を読まずに言うと、社会全体として感染リスクが高い場での伝播(でんぱ)を止める行動制限のような「ボリューム対策」を縮小しつつも続けることが必要だと考えてきました。

 政府が新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくまん延防止等重点措置をとったのは第6波(2022年1~3月)が最後でした。22年7月だったと思いますが、「従来なら緊急事態宣言相当の状況です」とか「措置をとるならこのタイミングです」と厚生労働省のアドバイザリーボードで発言しました。措置をとるのととらないのとでは、「死者数が相当違うだろう」ということが短期的な試算で分かっていたからです。でも、他の専門家の多くは黙認する状況になりました。

 対策を緩めると、自粛していた高齢者や療養型の病院で寝たきりの人、高齢者施設に入所している人が、これまでと比較できないぐらい感染することにつながり、死亡すると考えられます。その人たちの命を守るには、ボリューム対策がまだ必要で、人口全体で起こる感染の広がりを止める対策を低いレベルでも続けながら緩和しないと流行に歯止めがかからなくなります。

 これまでは国が責任を持って制御する感染症でしたが、これからは個人に委ねられます。流行状況によってコミュニティーレベルで、出かけるのを控えるとか、祭りはやめておこうといった判断をすることもできます。都道府県か市町村かは分かりませんが、地域で新たな対策の動きが出てくるか注視しています。

 ――5類への移行後、感染のデータが得られにくくなりますが、分析は十分行えるでしょうか。

 ◆5類化に伴い、データの取得やリスク評価の体制は大きく変わります。例えば、感染者数は指定された医療機関のみ…

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