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大阪の「日雇い労働者の街」の近くに星野リゾートが都市観光ホテル「OMO7(おもせぶん)大阪」を開業してから1年。同社の大阪初進出に加え、ブランドと街の組み合わせの意外性が話題になったが、実は稼働する客室が全体(436室)の半数以下の状態が続いている。なぜそうなっているのか。大阪進出は正解だったのか。
4月の平日、午後8時すぎ。屋外にこしらえた高座に上がった落語家が「ここは大阪の中でも大阪という場所でございます」と軽快に話し始めると、十数人の観客からは笑い声が起きた。
高座があるのはOMO7大阪(大阪市浪速区)の敷地内の芝生エリア。広さは約7600平方メートルにも及び、大阪名物の箱ずしとクラフトビールがふるまわれていた。ただ、テラス席には空席が目立っており、館内もチェックイン手続きに混み合う様子はない。満員御礼にはほど遠い、静かな夜だった。
ホテルは2022年4月22日に開業した。JRと南海電気鉄道が交差する新今宮駅のすぐ北にあり、電車1本で関西国際空港に行き来できる。駅の南側は大阪市西成区で、日雇い労働者の街として知られた「あいりん地区」がある。
観光客を主な顧客層に見据え、スタッフが徒歩圏の観光地「新世界」「通天閣」などを案内する街歩きツアーを売りにした。だが、新型コロナウイルス禍で宿泊需要の見通しが立たず、開業時から稼働する客室を全体の3分の1に絞った。まずは人件費を抑えながら、運営のノウハウを蓄積する狙いだった。
開業から半年の22年10月には、新型コロナを巡る政府の水際対策が大幅に緩和され、訪日客(インバウンド)の受け入れが本格化した。自治体による旅行支援制度の恩恵もあった。それでも客室の稼働は最大でも全体の半数程度にとどめている。
それはなぜか。
星野リゾートを率いる星野佳路代表が注目している数字がある。…
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