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宗教を理由に、親が子どもへの医療を拒むケースが後を絶ちません。中でも、キリスト教系新宗教「エホバの証人」は輸血拒否の教義で知られ、信仰の自由と救命を巡り、議論を呼んできました。医療現場はどう向き合ってきたのか、そして子どもの思いは。当事者に話を聞きます。(1回目/全3回)
輸血拒否を語る①小児外科医、松永正訓さん
千葉大学医学部付属病院で勤務した19年の間に2件、輸血拒否を経験しました。1980年代後半と90年代半ばのことです。胸の中に異物が突き刺さっているような、忘れられない出来事です。
1件目は生後3日の新生児で、胃に突然穴が開く「胃破裂」でした。ミルクが胃からあふれ、腹膜炎を起こしてショック状態になっていました。胃から出血していたのか、極度の貧血状態でした。手術前に大量の点滴と輸血をする必要があり、処置をしていたところ、新生児の父親が駆けつけて「輸血をやめてくれ」と言うのです。
「宗教的な理由ですか?」と聞いたら、「その通りだ」と。85年に神奈川県でエホバの証人の両親が子どもへの輸血を拒否し、子どもが死亡した事件がありました。「ああ、エホバの証人の輸血拒否が、自分の身にも降りかかってきたのか」と思いました。
大学病院の内科に父親の親戚という医師がいたので、説得してもらおうと呼びましたが、父親もその医師も輸血に反対しました。これ以上話し合いにならないと思い、2人を処置室から出して輸血を続行、手術をして新生児は助かりました。
小児外科という仕事は手術をして終わりではありません。外来で診て、その子の成長を支えていくのも仕事です。でも、そのご家族はもう病院には来ませんでした。医者として仕事が全うできなかったことをとても苦しく思いました。
「永遠の命を失う」と言われ
2件目は、2歳の女の子でした。胸とおなかの境目あたりに…
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