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まいにちボードゲーム

日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。

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「ロロップ」でスタートアップ

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木の手触りが優しい「ロロップ」 拡大
木の手触りが優しい「ロロップ」

 6色のキューブを最下段から交互に抜いていくだけ。カタン、カタンと小さな音を立ててキューブが落ちてきます。単純なのに悩ましいアブストラクト(テーマがなく完全情報公開)作品の「RoRop(ロロップ)」は、佐賀県神埼市で生まれました。作者の江口昌紀さん(40)はIT系の仕事に従事していましたが、2019年末、ものづくりを考える会社「フレル」を設立。20年には、県の起業家支援プロジェクトの支援を受けて知育玩具の開発へ乗り出しました。九州から世界へ向けて事業展開を目指しています。

七転び八起き

アブストラクトゲーム「ロロップ」をデザインした江口昌紀さん 拡大
アブストラクトゲーム「ロロップ」をデザインした江口昌紀さん

 江口さんは小さいころから将棋やオセロに親しみ、中学・高校時代はテレビゲームにのめり込んだといいます。地元の商業高校を卒業後はゲーム関連の専門学校で情報処理などを学び上京。大手ゲームソフト会社のデバッガー(プログラムの誤りや不具合を見つける役割)に携わっていましたが、ファミリーレストランのアルバイトが忙しくなり、「これでは大好きなゲームにしっかり関われない」と考え佐賀に戻りました。

 パソコンに強いことから医療法人やNPO団体などでIT導入担当として働くように。職業訓練学校に通ってITスキルのリスキリング(学び直し)にも努め、15年にはウェブ制作会社を立ち上げました。

 さまざまな業種のプロモーションを手伝ううち、ものづくりに魅了され自分でも手に「触れる」ものを生み出したいと考え新たに「フレル」を設立。自社の製品を企画していた時期に、友人の賀村航大さん(30)に誘われてボードゲーム会に参加し、「コリドール」というアブストラクトゲームに出合い幼少期にボードゲームを遊んだ記憶がよみがえります。パズル的なゲームを作りたいと考え、頭をよぎったのが「テトリス」や「ぷよぷよ」のような落ちモノゲーム。賀村さんと試行錯誤を重ね完成したのが「ロロップ」です。

木の手触りと滑らかな動き

ボードが傾いているので、最下段からキューブを抜くと上のキューブが滑らかに落ちてくる 拡大
ボードが傾いているので、最下段からキューブを抜くと上のキューブが滑らかに落ちてくる
抜き取ったキューブは個人用シートに並べる。獲得した色の数と一番多い色のキューブの数を掛け合わせ、さらに全部のキューブの数を足す。この場合、6×4+14で38点 拡大
抜き取ったキューブは個人用シートに並べる。獲得した色の数と一番多い色のキューブの数を掛け合わせ、さらに全部のキューブの数を足す。この場合、6×4+14で38点
「アレンジ・フォー」ルールでは、縦横斜めのいずれかに四つ同じ色のキューブをそろえれば勝利 拡大
「アレンジ・フォー」ルールでは、縦横斜めのいずれかに四つ同じ色のキューブをそろえれば勝利

 やっと作品の紹介です。6列の溝が彫られている縦横約20センチのボードと、一辺約2センチのキューブが6色6個ずつで計36個。ボードは傾けられるよう背もたれ用の板が付属しています。つまりは溝に並べられたキューブを抜き取ると上のキューブが滑り落ちてくる仕組み。木の手触り感と工作精度の高さから滑らかに落ちてくるのが気持ちいい。6色6個のキューブが落ちる(ドロップする)からロロップなんですね。

 ルールはキューブを集める「ベーシック」と、縦横斜めのいずれかに四つ同じ色のキューブをそろえたら勝ちの「アレンジ・フォー」の2種類。筆者が好きなのは「ベーシック」。同じ色が縦横に並ばないように36個のキューブをすべて配置します。スタートプレーヤーから一番下のキューブを抜いて個人用のシートに並べていきます。同じ色のキューブが最下段に複数あれば同時に獲得しても構いません。すべてのキューブがなくなったらゲーム終了。一番多く獲得した色のキューブの個数掛ける獲得した色の数、それに全キューブの数を足して勝敗を競います。「黄色を集めたいけど3個とも取ると次のプレーヤーに青を4個取られてしまう」。次の配置が読めるだけにいくつキューブを取るかが悩ましいのです。4人まで遊べますが基本は2人対戦でしょうか。

人脈を生かし

 地元・佐賀県や筑後川を隔てた福岡県大川市は家具作りで有名です。プロトタイプの自作後、量産化を目指す江口さんは地元の工場をいくつかあたりました。しかし、予定していた価格で引き受けてくれるところがありません。「安売りはしたくないけど1万円以下で出したい」。その後、知人から少年刑務所にコンピューター数値制御で正確な加工ができるCNC工作機が導入され活用策を探っているという話を聞かされます。ここなら大幅にコスト削減が見込めるかも。受刑少年の作業として依頼したところ最初は品質が安定しませんでしたが、材料や工程の見直しにより予算内での量産が可能になりました。

 さらには紹介してもらった有名家具店に眠る端材を使った高級バージョンの計画も。幅広い業種のIT導入を手伝ってきた江口さんだけに、人から人へと仕事がつながっていったといいます。

ハウスルール大歓迎

自分で新しいルールを作るヒントとして布袋や無色のキューブも付属 拡大
自分で新しいルールを作るヒントとして布袋や無色のキューブも付属

 「ロロップ」は論理的な落ちモノパズル。「用意されているルールだけではなく、自分たちでどんどん新しい遊び方を考えてほしい」と江口さん。そのために使い方が決まっていない無色のキューブ3個や布袋も同封されています。将来的にはハウスルール(独自のルール)を募集してホームページで公開する計画も。また、プログラミング教育への可能性を探るため福岡雙葉小学校(福岡市中央区)と共同研究を立ち上げるなど知育面でも可能性が広がっています。「考えることは楽しい」。江口さんが子供たちに一番伝えていきたいことなのです。

 購入はフレルの直販サイト(https://feg.official.ec/items/69074283)から。税込み8800円。【野地哲郎】=次回は5月20日掲載

「RoRop(ロロップ)」データ

 2~4人用◆所要時間15分◆8歳以上対象◆2022年初版

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