- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

宗教を理由に、親が子どもへの医療を拒むケースが後を絶ちません。中でも、キリスト教系新宗教「エホバの証人」は輸血拒否の教義で知られ、信仰の自由と救命を巡り、議論を呼んできました。医療現場はどう向き合ってきたのか、そして子どもの思いは。当事者に話を聞きます。(3回目/全3回)
輸血拒否を語る③宗教2世の遥さん(仮名)
両親や親戚の多くがエホバの証人の信者という家庭で育ちました。幼い時から集会に通い、小学1年の頃まで神の存在を信じていました。ただ、言うことを聞かないとむちで打たれるのが嫌でした。「ハルマゲドンが来る」などと集会で毎週聞かされるのも、好きにはなれませんでした。
信仰に熱心な母の指示で、輸血拒否の意思を示したカードを首からかけて生活しました。1995年の阪神大震災後、母は「地震で下敷きになった時に輸血拒否が伝わらなかったら大変だ」と心配し、寝ている時もカードを付けさせられました。
15歳の時、虫歯でもないのに歯に激痛が走りました。寝返りを打ち、枕がほおに当たると痛みで目が覚めるほどでした。口に入れたものをかみ切れず、食事もできない状態になりました。
母に付き添われて大学病院を受診すると、原因は歯のかみ合わせで、あごの骨を切って位置を調整すれば治ると説明されました。
母は「輸血が必要ですか?」と聞きました。「難しい手術ではないけれど、もし大きな血管を傷つけたら輸血が必要になる。輸血の同意書は必要だ」と医師に言われると、母は「それならやらないです」と即座に断りました。
その後も歯の痛みが消えなかったので、同意書なしで手術ができないかを聞くため、今度は父と一緒に受診しました。医師にエホバの証人の信者であることを告げ、「無輸血で手術をしてほしい」と伝えました。医師からはこう諭されました。「万が一の場合、命を助けるには輸血するしかない。手術をせずに放置すれば痛みがずっと続き、あごが外れたり、歯が割れたりするリスクがある」
しかし、父は「輸血だけはどうしてもダメなんです」と譲りませんでした。父と医師は互いに感情的になり、激しい口論になりました。私はいたたまれず、「先生もういいです。輸血が必要なら手術は受けられません、受けたくないです」と告げました。医師は「そうですか」と悲しそうな様子でした。
「もう戻りません」と置き手紙
帰り道、バス停で横にいた父は…
この記事は有料記事です。
残り1111文字(全文2099文字)
時系列で見る
-
「むち打ち虐待」訴え続ける元信者 エホバの証人、異例の通知後
89日前 -
不審物と間違えられた銃撃事件減軽嘆願署名 送り主の半生
89日前 -
「どんな教団もカルト化しうる」 天理大教授が抱く危機感
100日前 -
「信仰は親からの最高の贈り物」 前田万葉さんが考える伝え方
107日前 -
宗教2世らが当事者団体設立 「苦しみに気付ける社会に」
114日前 -
「自分たちとは違う」のか? 伝統教団に潜む傲慢さ 瓜生崇さん
114日前 -
「輸血だけはダメ」15歳、父母の反対で手術できず 消えぬ痛み
140日前 -
「エホバだから断ることはしない」無輸血手術を担う医師の決意
141日前 -
小児がんの2歳、再発防ぐ治療を母が拒否 「説得できず」医師悔い
142日前 -
「輸血しないで」搬送の18歳が懇願 信仰と救命、医療現場の苦悩
143日前深掘り -
宗教による子どもへの医療拒否 3割「経験した」 全国55病院調査
143日前スクープ -
「母は輸血を拒否したまま死んだ」 願った延命、葛藤続けた40年
162日前 -
輸血拒否など容認せず 「エホバの証人」に周知要請 厚労省
178日前 -
「愛着を断ち切れ」教団からの脱走 幼子と引き裂かれた母の悔い
187日前 -
「げんせのバカバカ」消えぬ教団の記憶、家族再会に喜びも
188日前 -
「カビ生えたまんじゅうも食べた」過酷な修行 両脚縛られる罰も
189日前 -
「宗教虐待防ぐ新法を」紀藤弁護士に聞くオウム真理教事件の教訓
189日前 -
「これって誘拐?」保護された53人の子ども 教祖を神格化
190日前 -
むち打ち体罰、「就学前から被害」7割 エホバの証人信者アンケ
195日前