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2020年春に始まった新型コロナウイルス禍は人と人が接する機会を奪い、舞台芸術や音楽など多くの表現活動に影響を与えた。変容した日常は「文学」に何を残したのか。22年9月まで12年半にわたって毎日新聞「文芸時評」を担当した文芸評論家の田中和生さんに、文学の現在地とこれからを聞いた。
「普段から家にこもって書いているので……」。この3年あまり、取材の折にコロナ禍の影響を尋ねると、多くの作家はそう答えた。個の営みである文学では、創作活動そのものがストップすることはなかった。
コロナ禍を描いた小説は少なくない。金原ひとみさんの短編集『アンソーシャル ディスタンス』(21年5月)には外出自粛などの社会規範にあらがう男女が登場し、木村紅美さんの『あなたに安全な人』(21年10月)は感染症流行下の地方都市が舞台。その他の作品でも、登場人物がマスクをしていたり、多数の人が集う場が避けられたりと、情景や人間関係の描写にコロナ禍はさまざまな影を落としている。ただ、そうした変化は表…
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