「会えなくてさみしい」 コロナ下で迎えた最大の危機/9
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新型コロナウイルスは人と人のつながりを深く分断しました。感染拡大が起きたのは、元五輪選手でアルツハイマー型認知症になった柿下秋男さん(69)=東京都品川区=が多くの仲間と出会って充実した日々を歩み出した時期でした。柿下さんに最大の危機が訪れます。【銭場裕司】
<この連載は全14回です。その他のラインアップはこちらからご覧ください。6月中旬ごろに10~14回目を配信する予定です。>
2020年4月12日、柿下さんは「みんなの談義所しながわ」のメンバーが開いたオンラインのイベントに参加した。5日前に初の緊急事態宣言が出されたばかりでウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った。
柿下さんはこの年の1月、厚生労働省が手がける認知症希望大使に就任していた。だが、コロナの影響で予定していた講演の中止が相次ぎ、いつも楽しみにしていたデイケアの筋力トレーニングも参加者が急減した。のちにはトレーナーではなく、ビデオの映像を参考にする形式に切り替わることになる。
こうした状況もあり、柿下さんには自分の気持ちを鼓舞する思いもあったかもしれない。4月のオンラインイベントでは「明るいことがなくなると笑顔が減っちゃう。今回のような(オンラインの)やり方が起爆剤になってほしい」と熱っぽく語っていた。
自分だけが別の場所に
だが、その後も収束の見通しは立たず、月に1度、高齢者住宅の地域交流スペースを間借りしていた「談義所」は再開できない日が続く。…
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