弁護士が児童向けミステリー出版 「社会の仕組み、楽しく学んで」

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「二人と一匹の本格捜査ミステリー(1)消えたボウリングボールの行方」を出版した村松由紀子さん=名古屋市中村区で、山下俊輔撮影 拡大
「二人と一匹の本格捜査ミステリー(1)消えたボウリングボールの行方」を出版した村松由紀子さん=名古屋市中村区で、山下俊輔撮影

 名古屋市の弁護士、村松由紀子さんが児童向けの推理小説「二人と一匹の本格捜査ミステリー(1)消えたボウリングボールの行方」(文研出版、絵=ao)を出版した。幼いころに読んだ本が自身のその後の人生に大きく役立ったという村松さん。「この本がきっかけで本に親しむ子どもが増えたらうれしい」と話す。

 子どもの頃から読書が好きで、ファンタジーから推理小説、自伝、ノンフィクションまで幅広い作品に触れてきた。中学2年の長女(13)が小学生の時、現実に即した児童向けの小説が少ないことに気付いた。「法律など社会の仕組みが楽しく学べる小説があってもいいのに」と夫(51)に話すと「それなら自分で書けばいいじゃない」と助言された。

 頭の片隅にあったのは、子どもの頃に読んだローラ・インガルス・ワイルダーの「大草原の小さな家」シリーズだ。米国開拓時代、自然の脅威と向き合いながらたくましく生きる少女とその家族などを描いた児童文学で、村松さんは「楽しく読んでいたが、アメリカのその時代のことをよく理解できた。アメリカ人の世界観を共有できたことで、本を読んだり、アメリカ人と接したりする際の一つの指標のようなものになった」と振り返る。

 「そこまでいかなくても、警察の捜査はこういう形で始まるんですよとか、弁護士はこういうことを考えるんですよとか、子どもたちが『そうなんだ』と楽しみながら、少しだけイメージを持てるような作品」を考えたという。

 わずか数日で書き上げたという作品は、小学5年生のリョウタと幼なじみのナナ、リョウタの愛犬、ジュンの「二人と一匹」が、ボウリング場で起きたボウリングボール盗難事件を解決するストーリー。夫がボウリングを趣味としていることから、ボウリング場を舞台に選んだ。

 長女からアドバイスを受け、複数の出版社に作品を郵送し、文研出版の編集者の目に留まった。何度かやり取りし、分量を増やすなどした上で2022年秋に世に出た。編集者から出版決定の知らせを受けた時「本当に本になるんだ」とうれしさがこみ上げたという。

 表紙にはシェイクスピアの「ハムレット」に出てくる「To be or not to be,that is the question.」という有名なセリフが書かれている。「するべきか、それともしないか」「在るか、それとも在らぬか」などと訳され、この言葉が謎解きのヒントになっているという。

 作品はシリーズ化が決まっており、第2弾は大学研究室が舞台になるという。企業法務を手掛ける弁護士業と作家の二足のわらじとなることについて、「大変だけど楽しい。多くの人に読んでもらって『面白かった』と思ってもらえるのが一番」と話す。【山下俊輔】

村松由紀子(むらまつ・ゆきこ)さん

 弁護士。ニューヨーク生まれ。親の転勤の関係でニューヨークのほか、パリ、神戸、鹿児島などで育つ。同志社大卒、名城大法務研究科修了。弁護士法人「クローバー」(名古屋市中村区)の代表弁護士を務める。

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