この国はどこへ これだけは言いたい 軍備増強は「静かな危機」 批評家・浅田彰さん 66歳
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

米誌タイムが上目遣いの岸田文雄首相の写真を表紙に掲載し、こう紹介した。<岸田首相が長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる>。現実はどうだろうか。
岸田政権は昨年12月、相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力(敵基地攻撃能力)」を明記した国家安全保障戦略など3文書を閣議決定。今後5年間で総額43兆円程度の防衛費を投じる方針を決めた。世界の軍事費と比較すると、ロシアやインドを抜き、米国、中国に次ぐ世界3位になる見込みだ。
1980年代に主著「構造と力」や「逃走論」でニューアカデミズムの旗手とされた批評家で京都芸術大教授(思想史)の浅田彰さん(66)は、岸田首相が推し進める軍備増強路線を「静かな危機」と呼ぶ。
「安倍晋三元首相は戦後レジームからの脱却を主張し、日本を国際秩序の担い手とするため本格的な再軍備を進めようとした。それに敏感な人たちが反対した」。だからこそ、ハト派の宏池会から岸田政権が誕生した当初は、リベラルへの揺り戻しに期待する世論もあった。「ところがふたを開けたら、政権維持…
この記事は有料記事です。
残り2538文字(全文3003文字)