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3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、世界一に輝いた日本代表「侍ジャパン」を支えた遊撃手が、1軍公式戦に帰ってきた。大会中にけがをおしてプレーする姿が話題を呼んだプロ野球・西武の源田壮亮選手(30)が26日、出場選手登録され、オリックス戦で「2番・遊撃」で先発した。「大会(WBC)で感じた気持ちをチームに還元したい」。六回には早速、適時打を放った。
「やっぱり特別な時間でした。優勝するためにみんなで頑張って、結果的に優勝できた。すごく充実感がありました」。5月中旬、復帰に向けて順調に調整を続けていた源田選手は激戦を振り返った。
1次リーグの韓国戦で、二塁けん制で帰塁した際に右手小指を骨折した。「(けがした瞬間は)悔しかったけど、どうやってプレーしようかという気持ちでした」。リタイアの選択肢は頭になかった。
栗山英樹監督と継続出場の可否について話し合った。「いろいろ話しました。出場できる喜びが大きかった分、大会にかける気持ちは強かった」。自分の思いを伝えるうちに、思わず涙がこぼれてきたという。「小さい頃に見て憧れ、もっと野球が好きになり、夢をもらった大会」。思い入れは人一倍強かった。
右手小指をテーピングで固定して、グリップに小指をかけず浮かせてバットを振ることでプレーが可能と判断し、負傷からわずか6日後の準々決勝で試合に復帰。けがをする前と変わらない軽快なプレーを見せ、駄目押しの適時打を放った。そこから決勝まで全試合に出場して優勝に大きく貢献した。
直後に開幕した今季プロ野球はけがの治療を優先し、1軍入りせず調整を続けた。穴があいた定位置の遊撃では新人の児玉亮涼選手(24)、2年目の滝沢夏央選手(19)の若手2人がチャンスをつかもうと持ち味を発揮。「(2人の活躍は)すごいと思うけど、負けていられないです」。穏やかな口調の中に強い意志と自信をにじませていた。
何と言っても「源田たまらん」のフレーズで知られる卓越した守備力は、自他ともに認める最大の武器だ。滝沢選手も「すべてがすごい。まだまだ(レギュラー争いで自分が)勝負できる立場じゃない。自分が打球に追いつけなかったときに『源田さんなら捕っていたかも』と思うことがある」と仰ぎ見る存在だ。
WBCで得た学びは大きい。日本球界を代表する名だたる選手たちが、必死に声を出して目の前の一球に集中する姿が印象的だった。「ベンチの姿勢や試合への準備などに感じた部分(勝利への強い意志)をチームに還元したい。あの気持ちで(ペナントレースも)戦えたら、すごい結果が出るんじゃないかと思う」
1軍復帰を果たした26日の見せ場は、4点を追う六回だった。2死二塁で迎えた3打席目、フルカウントから内角低めの変化球をはじき返し、今季初安打となる左前適時打を放った。勝利はつかめなかったが、試合後は「とにかく食らいつこうと必死でした。たくさんのファンの前で野球ができるのは当たり前じゃないと、改めて感じた」と充実感をにじませた。
試合前には栗山監督から「迷惑かけてしまってごめん。今日から、また野球界のためによろしくお願いします」と連絡を受けたという。源田は「(けがをしてもWBCに出場したのは)一切後悔はないですが、ファンに心配をかけたので、取り返すだけ」と力を込める。
苦難を乗り越え、代えがたい経験を積んだ「世界一の遊撃手」が、一回り成長した姿でファンを沸かせる。【川村咲平】