ウクライナの建物修復 奮闘する日本人が石綿の2次被害も防ぐ
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ロシアによる侵攻で破壊されたウクライナの街の復興を、司令塔として担っている日本人らがいる。現地の住民と協力して建物の修復に取り組むが、安全な作業を妨げているのが、発がん物質のアスベスト(石綿)だ。ウクライナの建物にはロシアとの特殊な関係が原因で、石綿が多く含まれている。戦禍に苦しむウクライナで石綿による2次被害まで広がらないよう、日本人らのチームは指針(ガイダンス)を作成し、復興に力を尽くしている。
石綿は耐火や保温のために使われた繊維状の鉱物で、吸い込むと中皮腫や肺がんなどの原因となる。
石綿に配慮しながら建物の修復に取り組んでいるのは、米ロサンゼルスに本社を置く国際災害復旧コンサルタント会社「ミヤモト・インターナショナル」(MI)。社長は東京都出身の宮本英樹さん(60)で、東京工業大で耐震工学を学び博士号を持つ。
宮本さんは「地震大国・日本では、関東大震災以来の震災の経験や耐震構造の研究で蓄積があり、世界に通用する」と1997年に会社を設立した。以降、紛争地や危険地域でインフラ建設などを進める国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)など国連機関と一緒に活動し、信頼を得てきた。最近ではハイチやトルコなどで震災復旧に取り組んでいる。
2022年2月下旬にロシア軍がウクライナに侵攻した後、ウクライナ軍が押し返して占領地域を奪還すると、UNOPSなどが建物の修復で「専門家がいる集団が必要だ」と視察を依頼してきた。宮本さんは9月末、スタッフ9人で現地入りした。
今年1月14日、キーウ(キエフ)近郊のビーシュホロド地区。宮本さんらは、4階建ての大規模集合住宅(64世帯)を訪れた。レンガなどによる構造が破壊され焼けただれ、多くの窓に板がはられていた。調査していると、近くの住民がスマートフォンでこの集合住宅が炎上している映像を見せてくれた。現地報道などによると、22年11月のロシア軍によるミサイル攻撃で火災が発生し、複数の住民が亡くなっていた。
ドイツなど他国に逃れたものの、避難生活に疲れ、自宅が破壊されているにもかかわらず故郷に帰って来る人も多いという。多くの家族は破壊を免れた知人の狭いアパートに身を寄せており、一刻も早い住宅の修復が期待されている。「住民は困っている。震災の復旧の経験を生かせば、復旧での貢献は可能だ」。宮本さんは現地を見てそう感じた。
国連機関との調整を経て、MIは約100の学校…
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