コロナ3年、専門家と役所の間で感染研所長が苦心した中立性
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感染症の専門家でもあり公務員――。国立感染症研究所(感染研)の脇田隆字所長は、新型コロナウイルス対策を厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の座長として、この3年、難しいかじ取りを迫られた。「パンデミック(世界的大流行)に十分対応できる体制ではなかった」。新型コロナ対応が「平時」に戻った今、脇田氏が口にした「反省」「疑問」とは。【聞き手・横田愛、村田拓也】
――新型コロナ対応では、アドバイザリーボードの動向が注目されました。座長として活動をどう評価しますか。
◆感染症対策でまず大事なのは、データの収集と分析、評価です。本来は感染研、地方衛生研究所、保健所、自治体が主なプレーヤーです。しかし、今回はそれだけでは対応しきれず、外部の力が必要でした。
感染研の立場からは、成り立ちと経緯も説明する必要があると思います。感染研の前身は1947年に旧厚生省所管で設立された「国立予防衛生研究所(予研)」で、病原体の研究と、ワクチンの検定が主な役割でした。
時代が進む中で、サーベイランス(監視)や解析の重要性は増したのですが、新型コロナの発生直前、研究職員約300人のうち、こうした業務に専門的にあたる疫学や公衆衛生部門の担当者は1割程度でした。病原体研究部門が中心の体制で、パンデミック時に、公衆衛生対応を十分にサポートできる体制ではなかったという反省があります。
2021年度に研究職員が倍増され、疫学と公衆衛生部門のほか、研究開発部門を強化しました。それでもパンデミック対応に必要な、全ての機能が直ちに備えられるわけでもありません。外部の専門家を交え、アドバイザリーボードで国から独立した形で、分析や評価ができたのは良かったと思っています。
――どんな場面で外部の力を借りる必要性を感じましたか。
◆感染症対応では、感染経路を特定することが重要です。例えば集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の疫学調査では、電話機や枕カバーからウイルスが検出されましたが、そうした物と接触することで感染が広がったのかを調べることは実は難しいのです。
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