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母娘で関係を見つめ直したり、母が治療に積極的に関わったり。拒食症克服に母娘で歩む取り組みが注目されている。模索する現場を追った。【飯田憲】
この連載は全4回です。
このほかのラインアップは次の通りです。
第2回 「死なないで」と母は祈った やせ細る娘と頼った治療
第3回 「太るのは悪」と言ってしまった母 同じ苦しみの娘にできたこと
第4回 「良い親と子」演じないで 拒食症治療で大切なこと 専門医に聞く
やせていたい。それが、自分のことを認められるたった一つの支えだから。そう思い詰め、気付けば体重は、171センチの長身に釣り合わない30キロ台に落ちていた。東京都の国際基督教大学4年、河野瑞夏(みずか)さん(22)は3年前に「神経性やせ症」、いわゆる拒食症と診断された。「ママの言うとおり頑張ってきたのに」。診断後、母とぶつかった。だがその衝突が、回復のきっかけにもなった。
幼い頃からダンスやバレエに打ち込んできた河野さん。母(50)からは「人は見た目が9割だから」とたびたび言われてきた。今振り返ると、清潔感や第一印象が大事という意味だったと思える。ただ当時は、内面に自信がないのに高校卒業までクラスの中心でいられた体験から、「見た目9割」は大きなよりどころになった。
2019年4月の大学入学後。「スタイルを保ちたい。太ったら何者でもなくなっちゃう」とジム通いと本格的なダイエットを始めた。
目標は前月の体重を下回ること。食事は酢昆布やコーヒーで済ませて空腹をごまかすことが多かった。鏡に映るガリガリの姿を見ても「もっとやせなきゃ」と焦りが募った。その年の夏、生理が止まる。冬には体重が標準より25キロ少ない39キロまで落ちた。
ちょうどその頃、新型コロナウイルスの流行が始まった。大学は休校になり、ジムにも通えない。自宅では極端な食事制限はしづらく、母が作ってくれる3食の料理に感謝よりもストレスを感じた。張り詰めた緊張の糸が切れたのか、ある日、空腹を我慢できずにナッツを1袋食べきってしまい、吐いた。
以来、深夜に作り置きのおかずや冷凍食品を胃に詰め込んでは「罪悪感から解放されすっきりする」と嘔吐(おうと)を繰り返すようになった。台所のシンクにも吐いたことで母が気付き、専門病院の精神科を受診する。2年生だ…
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