「山高くしたいなら…」10兆円大学ファンド、識者が懐疑的なわけ

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文部科学省=東京都千代田区で
文部科学省=東京都千代田区で

 世界トップレベルに肩を並べる研究大学を育てようと、政府が創設した10兆円規模の「大学ファンド」。その支援先となる「国際卓越研究大」候補の第1号に東北大が選ばれた。巨額ファンドの運用益から研究資金を捻出しようという国主導のプロジェクトは、低迷著しい日本の研究力浮上の特効薬となるのか。大学政策に詳しい石原俊・明治学院大教授(社会学)に展望を聞いた。【聞き手・松本光樹】

 ――東北大が国際卓越研究大の認定候補となりました。

 ◆まず、1校ということに驚きました。そんなに「選択と集中」を進めていいのでしょうか。

 ――東北大は初年度に最大100億円程度を受け取る見通しです。その使い道は卓越大の裁量に任されますが、巨額資金を何に使うべきでしょう。

 ◆今、日本の大学が抱える問題の一つは、もはや研究や教育が維持できないほどの人材不足です。文系はもちろん、理系でも、特に基礎科学分野は非正規の研究者が30~50代を中心に多くいます。

 日本の科学崩壊を免れるには何より研究者の正規雇用による人材活用が必要です。任期付きの不安定な立場でポストを渡り歩いているような優秀な人材を、卓越大が正規雇用するとよいと思います。卓越大が一定数を雇用すれば、残った非正規の研究者たちも別の組織にポストを得やすくなる。日本全体への波及効果が大事なのであって、卓越大単独の話にしてはいけません。

 ――卓越大には国際的に優れた研究成果を出すとともに、年平均3%程度の事業成長が求められます。

 ◆大学が研究者の正規雇用を進めれば、おのずと研究成果は上がり、大学の事業規模は成長するでしょう。その点で、最初から卓越大に事業成長を求めるのはおかしい。研究成果は10年、20年たった後に出るものです。評価軸を変えるべきです。

 ――東北大は国際化も計画に掲げています。

 ◆海外から優秀な研究者を何年かの約束で連れて来るだけ、というのが一番やってはいけないことです。研究実績や大学ランキングだけが一時的に上がり、後は何も残らない、最悪のパターンになります。

 教育分野では15年ほど前から問題になっていますが、今、大学院に日…

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