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貧困や虐待、両親の不在などの困難を抱えて育った児童養護施設出身の若者らを支援する民間団体の取り組みが全国に広がろうとしている。若者やその支援者に助成する「若者おうえん基金」を運営する「首都圏若者サポートネットワーク」は、西日本の3地域で基金を設立すると記者会見で発表した。資金には10年以上取引のない「休眠預金」を社会問題の解決などに役立てる制度を活用する。
児童養護施設や里親家庭など社会的養護を受けて育った子どもや若者は全国に約4万2000人いるとされる。児童養護施設の入居は原則18歳までで、巣立った若者「ケアリーバー」は、頼れる大人がいない中で自立を迫られる。虐待の経験から精神的なケアが必要なことや、病気や失業で住む場所や食べ物にも困ることがある。
記者会見には、児童虐待を経験した若者たち70人が出演する映画「REAL VOICE」の監督を務めた山本昌子さん(30)が出席。自身も生後4カ月から19歳まで児童養護施設などで過ごした。児童養護施設の出身者の振り袖姿を撮影するボランティア団体を設立し、活動してきた。その中で、大人になっても生きづらさを抱え、苦しみと闘っている人が多いことに改めて気づいたという。
山本さんは「自分は卒園する時にすごく孤独を感じ、22歳ぐらいまで不安定になった。映画を通して社会的養護のことを知ってもらえたら」と話す。
若者おうえん基金は、困難を抱えた若者の進学や就労、住まいなどの支援者に対して助成している。各種団体からの寄付やクラウドファンディングを中心に資金を集めていたが、民間公益事業に活用することを定めた法律に基づく休眠預金を今回活用する。
助成対象は、これまでは首都圏の若者を支援する団体などだったが、今後、全国に対象を拡大することを目指す。今回基金を設ける先として選ばれた3団体は、NPO法人おおいた子ども支援ネット(九州・沖縄)▽NPO法人どりぃむスイッチ(広島県・岡山県)▽労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団(兵庫県北部・鳥取県・島根県)。3団体は若者の課題やニーズの調査に向けた準備を始めている。
ネットワークの顧問で、元厚生労働事務次官の村木厚子さん(67)は「基金は、頑張っている子、一生懸命にやっている子、厳しい環境の中であがいている子を応援していきたい。若者支援に力を貸してほしい」とメッセージを寄せた。
基金は首都圏を含む4地域の事業費用を募るクラウドファンディングも始めた。目標金額は1000万円で11月26日まで。4地域では「REAL VOICE」の上映会も開催する。スケジュールなどの詳細はクラウドファンディングサイト(https://readyfor.jp/projects/wakasapo)で。【三股智子】