サーモン生み出す巨大な「プラント」 日本各地で続々と建設計画
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私たちの身近にある海や魚を通して、気候変動や社会の問題に迫る連載企画「サカナ新時代」。第2部では「養殖」を取り上げます。世界的に漁による漁獲量は頭打ちの一方で、世界人口の増加や魚食の流行で需要は高まっており、養殖に注目が集まっています。現場を歩くと、養殖の新しい動きや、さまざまな課題が見えてきました。
連載「サカナ新時代・養殖編」(全7回)は以下のラインアップでお届けします。
第1回 サーモン生み出す巨大な「プラント」
第2回 外資企業が狙う陸上養殖の付加価値
第3回 限界突破の「ゲームチェンジャー」
第4回 飛行機に乗る「近大マグロ」の卵
第5回 「完全養殖」に立ちはだかる壁
第6回 60年来の悲願マダコ養殖
第7回 カニを食べ、個室に住まうマダコ
工業団地の一画で
陸上の閉鎖空間で、すしや刺し身に使われる生食用のサーモンを育てる初めての大規模な養殖場の建設計画が、日本各地で進んでいる。毎日新聞の取材によると、進行中の計画が全て順調に進めば、現在の国内における生食用サーモン市場の半分に相当する年間約4万5000トンが内陸の施設で養殖されることになる。事業には投資ファンドや外資系企業が相次いで参入しており、サーモンの陸上養殖は活況を迎えている。
伊勢自動車道・久居(ひさい)インターチェンジから車で約5分。津市の郊外にある「ニューファクトリーひさい工業団地」は、造成した三重県土地開発公社が2000年から企業誘致を進めてきた。この団地内の一画、約14万平方メートルで今年4月、大規模なサーモンの陸上養殖場の建設が始まった。
取り組むのは、シンガポールの投資ファンドが設立したサーモンの養殖会社「ピュアサーモン」の日本法人「ソウルオブジャパン」(東京都港区)。回転ずしのネタとして人気の高いアトランティックサーモンを、国内で最大級となる年間1万トン生産する計画だ。
7月上旬、記者は現地を訪れた。緑に囲まれた広大な敷地で、建屋の建設工事が進められ、重機の音が響いていた。
「(養殖場の)建屋の中は、配管や電気設備、機械など、まさに『プラント』です」。同社で工事責任者を務める久原文規さんはそう説明した。久原さんは、ゼネコンなどで約30年間、米国や東南アジアに駐在して巨大な液化天然ガス(LNG)プラント建設などに携わってきた。その経験を買われ、今春に転職してきたという。
取り組むのは「閉鎖循環式陸上養殖」と呼ばれる方法だ。海外から輸入した卵を養殖場でふ化させた後、成長に応じて、複数の建屋に段階的にサーモンを移していく。病気の…
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