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あの名テーマ曲は開会式で「脇役」だった? 1970年大阪万博

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花みこしや子どもたちのパレードで華やかな雰囲気に包まれる大阪万博の開会式=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場「お祭り広場」で1970年3月14日 拡大
花みこしや子どもたちのパレードで華やかな雰囲気に包まれる大阪万博の開会式=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場「お祭り広場」で1970年3月14日

 2025年大阪・関西万博のパビリオンの準備が難航している話題に伴い、1970年大阪万博が振り返られる機会が多くなってきた。そのテーマソングは「世界の国からこんにちは」。大にぎわいの会場の記録映像と共に、必ずといっていいほど響いてくる。だが当初は開会式で演奏される予定すらなく、脇役扱いだった。

 テーマソングの歌詞は、毎日新聞社が全国から募集した。1万3195点が寄せられ、大阪府の詩人、島田陽子さんの作品が選ばれ、66年6月16日に紙上で発表。作曲は、「上を向いて歩こう」などで知られる中村八大(はちだい)さんが手がけた。

レコード会社8社(日本クラウンは2種類)が発売した「世界の国からこんにちは」のジャケット写真=2023年9月7日、山本直撮影 拡大
レコード会社8社(日本クラウンは2種類)が発売した「世界の国からこんにちは」のジャケット写真=2023年9月7日、山本直撮影

 67年3月1日、レコード会社8社の競作という異例の形で発売され、三波春夫さん、吉永小百合さん、坂本九さん、山本リンダさんら大人気の面々が歌った。販売枚数計300万枚超の国民的ヒット曲となり、中でも三波さんのテイチク版は140万枚を売り上げて三波さんの代表曲の一つになった。

 一方、万博協会は68年9月に公式曲の歌詞を公募している。69年10月、A面が万国博こどもの歌「咲いたひらいた」(作曲・中田喜直、歌・九重佑三子)、B面が万国博の歌「世界のひろばで」(作曲・宮川泰、歌・ジェリー藤尾)のレコードを発売。だが販売枚数の記録は残っていない。

開会式でお祭り広場に降り注いだ紙吹雪や千羽鶴=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で1970年3月14日 拡大
開会式でお祭り広場に降り注いだ紙吹雪や千羽鶴=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で1970年3月14日

 70年3月14日に会場の「お祭り広場」であった開会式で、これらの曲の扱いの差は歴然としていた。

 「日本万国博覧会公式記録」(72年3月刊)によると、佐藤栄作首相や石坂泰三・万博協会会長らのあいさつ、天皇陛下の開会のおことばが終わると、世界の子どもたちが花のリングを持って登場し、「咲いたひらいた」の合唱に合わせてマスゲームを展開。続いて出席者全員で「世界のひろばで」を歌った。公式記録には両曲の譜面と歌詞のほか作詞者、作曲者の名前が「式典演出スタッフ」として収録されている。

開会式が開かれるお祭り広場に登場した巨大ロボット「デメ」=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で1970年3月14日 拡大
開会式が開かれるお祭り広場に登場した巨大ロボット「デメ」=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で1970年3月14日

 「世界の国からこんにちは」については<午後0時9分、「世界の国からこんにちは」の演奏が続けられている中で感動的な開会式は終わった>とあるだけ。譜面や歌詞の記載はない。70年万博のレガシー(遺産)を引き継ぐ万博記念公園(大阪府吹田市)の担当者は「開会式で使用された楽譜に『日本万国博テーマソング~毎日新聞社選定』とあるので、テーマソングという認識はあったと思われる」と説明する。

 当時、毎日新聞で万博取材のキャップを務めた記者が99年に明かした話によると、開会式直前に「世界の国からこんにちは」の演奏が式典プログラムに入っていないことに気づいた。記者は「これだけ万博を盛り上げた曲なのに」と万博協会に掛け合い、協会側は式典の最後に演奏することを約束したという。

開会式が終わり会場に向かう来場者たち=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で1970年3月14日 拡大
開会式が終わり会場に向かう来場者たち=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場で1970年3月14日

 万博記念公園の担当者がこのほど、当時の資料を確認したところ、70年2月24日時点の式次第の案に、最後の曲を「世界の国からこんにちは」に訂正する旨の手書きのメモが残されていた。そして開幕11日前の3月3日時点の案に正式にエンディング曲として記載されている。ただし担当者は「変更の経緯は不明」としている。

 開会式当日の毎日新聞夕刊1面の記事は「鐘の音の合間から『世界の国からこんにちは』の合唱が響き渡ってきた。十五日から六カ月間にわたって開く日本万国博へのいざないである」と結ばれている。

大阪万博の開会式を華やかに彩る「花みこし」と子どもたちによるマスゲーム=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場「お祭り広場」で1970年3月14日 拡大
大阪万博の開会式を華やかに彩る「花みこし」と子どもたちによるマスゲーム=大阪府吹田市の日本万国博覧会会場「お祭り広場」で1970年3月14日

 あやうく開会式の晴れ舞台から排除されるところだった「世界の国からこんにちは」は時代が変わっても親しまれ、今やすっかり「公式」のテーマソングになったようだ。万博記念公園のEXPO'70パビリオンでは、きょうも「こんにちは こんにちは」と、明るく希望に満ちた調べが流れている。【山本直】

【大阪・関西万博】

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