「消防団の報酬返せ」市議同士が法廷バトル “幽霊”問題で対立?
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「私の報酬を返せ」――。消防団員の報酬を巡り、市議が同僚市議を訴える異常事態になっている。かつては同じ消防団のメンバーで、市議会で同じ会派にいたこともあるという2人に何があったのか。法廷バトルの背景には、全国で横行する消防団のずさんな会計処理や「幽霊消防団員」の問題が見え隠れする。【金森崇之】
8年分、計82万円が未払い
訴えたのは東京都町田市の消防団員だった新井克尚(よしなお)市議(49)=6期目。消防団が団員の報酬を管理して個人に渡さないのは不当だとして、同じ消防団の幹部だった渡辺厳太郎市議(50)=4期目=に8年分の報酬計82万円の支払いを求めて7月、町田簡裁に提訴した。消防団の報酬返還を巡る訴訟は異例だ。
消防団員は普段、他の仕事を持ちながら火災や水害などがあれば現場へ駆け付ける非常勤の地方公務員だ。
新井市議が団員だった当時、町田市は一般団員に年10万3000円の報酬に加え、災害や訓練で出動する度に1500~3200円を支給すると定めていた。
消防団員の報酬を巡っては、各地の消防団で不適切な管理が発覚し、総務省消防庁が2021年4月、団員に直接、報酬を支給するよう全国の自治体に通知した。町田市も直接支給に切り替えたが、以前の報酬がいまだに新井市議に渡っていないというのだ。
被告側の反論は…
記者が8月4日、提訴された渡辺市議に電話すると、意外なことを口にした。
「彼(新井市議)が(活動実績のない)幽霊消防団員だったのは知っていますか? それで金だけをくれと言っているんです。これは裁判の政治利用ではないでしょうか。取材を受けるか検討しますが、センセーショナルに取り上げると、一生懸命に出動している団員に迷惑がかかります。記事を書いてほしくはありません」
渡辺市議から再び電話があったのは、その日の午後6時半ごろ。取材申し込みに対して返ってきた答えは「弁護士に一任しているのでノーコメントでお願いします」だった。
新井市議の主張に対する反論を取材したいと記者が食い下がっても「ノーコメントでお願いします」と繰り返した。
同じ地元、選挙の手伝いも
そもそも2人はどういう関係なのか。
新井市議が…
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