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ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

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学術も文化も「工作」手段 ロシアの諜報機関

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冬空の大ルビヤンカ通り。正面、壁がカーブしたビルが2番地に建つ旧KGB本庁舎。現在はFSBで、監視カメラが通行人をにらむ=モスクワで2013年11月19日午後3時50分、真野森作撮影
冬空の大ルビヤンカ通り。正面、壁がカーブしたビルが2番地に建つ旧KGB本庁舎。現在はFSBで、監視カメラが通行人をにらむ=モスクワで2013年11月19日午後3時50分、真野森作撮影

 民間軍事会社ワグネルの創設者、プリゴジン氏も死亡し、盤石に見えるロシアのプーチン政権。背景には、諜報(ちょうほう)機関と一体化した国家体制があるという。この体制はどう成立し、どこへ向かうのか。旧ソ連時代からの諜報機関を研究する保坂三四郎エストニア・国際防衛安全保障センター研究員に聞いた。【聞き手・鈴木英生】

反体制派にまで諜報機関が浸透

 ロシアは「諜報国家」だ。プーチン大統領が旧ソ連の情報機関・国家保安委員会(KGB)出身なだけではない。KGBの後身、連邦保安庁(FSB)の職員や協力者が省庁や企業、大学、反体制派にまで浸透し、幅広い権限を持つ。

 KGBは形式上、共産党の監督下にあったが、今のFSBはプーチン氏のいわば私的機関だ。ソ連崩壊で共産主義と決別した後も、諜報機関独自の思想「チェキズム」は温存された。約100年前のロシア革命後、民衆を弾圧し、数十万人とされる犠牲者を出した超法規的組織チェーカーと、その指導者ジェルジンスキーを崇拝する危険な思想である。このチェーカーこそFSBの源流である。

あらゆる対外交流が「工作」手段に

 チェキズムは、外国の敵対勢力がロシアを包囲し、民主化の名の下に工作員を送り込み国家を内部から解体しようとしていると教える。ビジネスだけでなく、宗教や文化も、外国による「破壊工作」の手段だと捉える。だから、「敵」と同じことをしているつもりで、外国に工作員を送り込んだり、選挙に介入したりする。学術や文化の民間交流も、ロシアに都合の良い認識を他国民へ植え付ける場と映る。

 FSBは、チェキズムの陰謀論…

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【ウクライナ侵攻】

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