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差別事件再現映画を見ての「罪悪感」 その場にいたら自分も 「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」監督に聞く

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「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」の一場面=© 2020 KC Productions, LLC. All Rights Reserved
「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」の一場面=© 2020 KC Productions, LLC. All Rights Reserved

 双極性障害の病歴のある米国の男性がアパートで寝ていたとき、契約していた医療通報のアラームのスイッチをたまたま押してしまう。男性は、安否確認のために派遣された警察官と押し問答となり、最後は殺される。2011年に起きた事件を忠実に再現した映画「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」が公開されている。デビッド・ミデル監督(40)に、一向に改まりそうにない差別について話を聞いた。

 「キリング(殺害)」という題名で、見る者は映画の結末を知っている。60代後半の病弱そうな男性は被害妄想の気があるのか、ドアを決して開けようとはしない。一方の警察官はいらだちを募らせ、次第に侮蔑的な言葉を吐くようになる。通報を受けた息子ら身内が心配になり、アパートに来ようとするが、被害者チェンバレンは「来るな」と彼らを押しとどめる。警察による黒人差別を知る被害者は息子らに暴力が及ばないよう、ひとりで抵抗を続ける。事態はみるみる悪化し、警察は応援部隊を呼びドアを壊しにかかる。

 確実にひどいことが起きる。その場で席を立ってもいいのに、見る者は画面から目が離せない。それは、事実を最後まで見なければならないという正義感らしきもの、と言い訳することもできる。だが、もうひとつ理由がある。彼はどう殺されるのか、20年に米ミネソタ州ミネアポリスで殺されたジョージ・フロイドのように首根っこをひざで踏みつけられ窒息死するのか。1991年にロサンゼルスで起きたロドニー・キング事件のように警棒でふくろだたきにされるのか。見る者には、結末を知りたい好奇心がある。男性に共感はするが、同時に「お前も当事者、いや、少なくとも傍観者だ。そして、お前の中にも差別の種があるはずだ」という自問が生まれる。

 ミデル監督にそんな後味の悪さを吐露すると少し顔をほころばせ「この映画をつくる狙いの一つでした」と答えた。「被害者チェンバレンと同じ状況に身をおいたら、どう反応したか。また、殺害に至る現実を見届ける…

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