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視界不良の大阪万博 計画の見直し避けられぬ

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 2025年4月に開幕予定の大阪・関西万博の準備が思うように進んでいない。

 最大の要因が、万博の華である海外パビリオンの建設計画の具体化が遅れていることだ。

 150以上の国・地域が参加する見込みだ。このうち自前で建設するタイプAを希望する約50カ国中、施工業者が決まっているのは14カ国にとどまる。建設の前提となる大阪市への許可申請も進んでいない。

 背景には、人手不足や資材費の高騰などで施工内容が固まらないことがある。

 日本国際博覧会協会は、デザインの簡素化などを提案し、早期着工を求めている。

 他の参加国には、建設工事発注の代行や協会が建てた簡易施設を活用する方式なども新たに提案している。

 参加国の意向を丁寧に把握し、工期が集中して混乱しないよう、万全を期さなければならない。

 会場建設費の拡大も大きな懸念材料だ。国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担するが、暑さ対策などで既に当初計画の約1250億円から、1・5倍の約1850億円に膨らんでいる。

 運営主体の協会が精査を続けているが、さらなる上振れが必至とみて、政府は数百億円規模の新たな予算措置を検討している。安易な増額は受け入れられない。

 開幕に間に合わせるため、現場に無理がかかってはならない。

 建設業界では、来年4月から時間外労働の上限規制が適用される。にもかかわらず、準備の遅れに危機感を募らせた協会が、除外の検討を政府に求めていたことが7月に判明し、批判を浴びた。

 過労死問題に取り組んできた弁護士らが「言語道断」と即時撤回を求めたのは当然だ。「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博テーマにも反する。

 万博は日本維新の会が党を挙げて「成長戦略」の要として誘致した。だが、大規模イベント頼みの甘い見通しのツケを、国民に回すようなことがあってはならない。

 岸田文雄首相は8月、関係者会合で「先頭に立つ」との覚悟を示した。そうであるならば、厳しい現実を直視し、規模や内容の見直しに指導力を発揮すべきだ。

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