北東北に根付く民間信仰「オシラサマ」を取り上げた特別展「陸前高田のオシラサマはいま」が、岩手・陸前高田市立博物館で開かれている。オシラサマは「家の守り神」と呼ばれ、市内38世帯が所有する113体を展示する。菓子のお供えなどを紹介した同館のSNSが話題になり、全国から見学者が訪れている。
オシラサマは、馬や女性の顔を彫った木などに何枚も色鮮やかな布をまとわせる。民俗学者、柳田国男の「遠野物語」で取り上げられ、知られるようになった。守る対象は、養蚕や子ども、目、火難よけなどさまざまで、多様な性格を持つ神様だ。同市内では、これまでに107世帯の353体が確認され、全国の自治体で最も多い。
同館では、オシラサマ展を過去2回開催した。2006年の展示後、家に戻ったオシラサマに、「オガミサマ」という「イタコ」のような役割を担う人が感想を聞くと、「行ったこともない博物館ってところに行って面白かったが、誰も何もお供えしてくれなかった」と答えたという。
そこで今回はすべてのオシラサマに菓子を供え、会期の前日にオシラサマの「コメント」と写真をX(ツイッター)に投稿したところ、「かわいい」「地元の駄菓子をお供えしたくなった」「会いに行きたいなあ」などのコメントとともに拡散され、約525万回以上閲覧された。
各地から菓子が送られてくるようになり、これまでに全国から70件届いた。「オシラサマに会いに来た」と来館する人も相次ぎ、沖縄県や熊本県からこの展示を見るために来県した人もいたという。
3月には隣の大船渡市で大規模な山火事が発生した。「火難よけ」のオシラサマもいることから、同館がXに「オシラサマ。どうぞ山火事を鎮めてください」と投稿すると、こちらも拡散され、「菓子を送るかわりに大船渡市へ寄付します」など、被災地に心を寄せる反応が広がった。
同市は、東日本大震災で甚大な被害を受けた。そこで、改めて震災後のオシラサマの所有状況と習慣・信仰の変化について調査した。その結果を伝えるのが今回の特別展だ。
津波被害では、17世帯の48体が行方不明になったことが分かった。最近は、年3回実施する儀式の様子を、SNS(ネット交流サービス)のLINEを使って家族で共有しているというケースもあった。一方、儀式でオシラサマの声を伝えるオガミサマは市内で1人だけとなり、後継者がいない状況だ。若い世代が地域を離れ、空き家に残されているオシラサマもいるなど、信仰の継承が課題になっている。
同館の主任学芸員で、Xの投稿もした熊谷賢さん(58)は「オシラサマは、身近な神様として家庭で祭られ、大事にされてきた存在だ。現代社会にあっても信仰や文化を大切にしている地域という点も共感を得たのではないか」と話す。
特別展は30日まで。月曜休館。観覧料は無料。【永山悦子】