戦場はネット上だけではなかった。韓国史上最悪とされるデジタル性犯罪事件「n番部屋事件」を学生時代に告発した朴志玹(パク・ジヒョン)さん(29)。今、彼女はネット犯罪だけでなく、政界の旧体質とも言える文化とも戦っていた。
韓国では2018~20年に「n番部屋事件」と呼ばれる事件が起きた。複数の男らが女性を脅迫して性的な映像を撮影させ、通信アプリ「テレグラム」を使って流布・販売などをした事件だ。
高校生にも満たない子供たちの自慰行為や、刃物で体に「奴隷」という文字を刻む映像などが確認され、実際に利用者に女性がレイプされるケースもあった。残酷な手口と約26万人とされる利用者の多さが社会に衝撃を与えた。
この大規模犯罪を暴いたのが当時大学生だった女性2人「追跡団火花」で、朴さんはそのうちの一人だ。朴さんらはテレグラム内に形成されているコミュニティーに潜入し、会話や共有されている撮影物を証拠として集めた。警察への通報はもちろん、実態を知らせる記事も配信。瞬く間に社会問題化し、性暴力に関する法律や制度の大改革が行われた。朴さんらはこれらの活動を「n番部屋を燃やし尽くせ」という本にまとめ、日本でも23年に邦訳が光文社から発売された。
3月下旬、私はとあるイベントで朴さんと対面する機会があり、話を聞いた。朴さんらがn番部屋の調査を始めたのは、自身が記者志望だったからだという。就職に役立つと思い、調査報道の公募に応募することを決意。盗撮問題をテーマに調べていたところ、n番部屋の端緒をつかんだ。
調査では、かつて一緒に海外ボランティアをした男性も利用者の一人であることが判明した。信頼している人だった。「それまではどんな人でも話をすれば分かり合えると信じ、世の中は美しいと考えていた」。だが、事件を知り「思っていたほど世の中は美しくないかもしれない」と感じた。
社会問題化した後も警察などと連携し、摘発と被害者救済を続けた。だが、被害者の撮影物は依然としてネットに出回り、類似の犯罪は続いていた。「活動に限界を感じていた」ころ、転機が訪れた…
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