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墓の景色が語るもの=伊藤和史

断崖に口を開けた風葬墓。周囲にギンネムも生い茂る=沖縄県・宮古島で
断崖に口を開けた風葬墓。周囲にギンネムも生い茂る=沖縄県・宮古島で

 衝撃的な墓の景色を思い出す。一つは、三重県名張市で女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の現地集落の墓地。死刑囚となった男の家の墓石は、他の家々の墓石群から一つだけぽつんと離されていた。濃密な人間関係が壊れた時の傷の深さをまざまざと見た思いがした(現在は市外に移転)。

 もう一つ。沖縄などの南島では、天寿を全うできなかった事故死や若年死を「キガズン(怪我死)」「キガガン(怪我神)」と忌んだ。本来の墓には入れなかった。先年、沖縄県・宮古島の集落の墓地で、コンクリート製の立派な家形の墓の隣に、小さく粗末なブロック積みの墓があるのを見た。キガガンを一時的に納め、後に改葬して壊すのだと聞き、戦慄(せんりつ)した。

 それにしても、お墓を見る機会が多い。歴史探訪と墓の見学は不可分だ。考古学の大事な遺物は墓からの出土が多いし、古墳時代は名前通りの墓が主役の時代。海外でも、ヨーロッパの聖堂は偉人の墓所でもあるし、中国の兵馬俑(へいばよう)坑は秦の始皇帝陵の付属施設……。旅とは墓を見ることだ、と思うほどに墓は歴史情報の宝庫なのである。

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