本・書評
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今週の本棚
川本三郎・評 『親愛なるレニー』=吉原真里・著
2023/1/28 02:01 1330文字(アルテスパブリッシング・2750円) ◇巨匠の音楽人生に関わった二人の日本人 とても美しい秘話を読んだ。 一九九〇年に七十二歳で亡くなったアメリカの指揮者レナード・バーンスタインにこんな秘められた物語があったとは。 すべてはワシントンの議会図書館から始まる。アメリカ文化研究家の著者はある時、冷戦
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今週の本棚
小島ゆかり・評 『笑い神』=中村計・著
2023/1/28 02:01 1352文字(文藝春秋・1980円) ◇M―1に懸けた漫才師たちの記録 副題は「M―1、その純情と狂気」。結果が数値化できるスポーツや、明確な勝敗がある将棋などとは明らかにちがう、まして生産性とはいっさい無縁の<芸>という不思議なもの。そこに没入するエネルギーはまさしく、純情と狂気以外にはない。 本書は、「今
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今週の本棚
『イツァーク ヴァイオリンを愛した少年』=トレーシー・ニューマン文、アビゲイル・ハルピン絵、廣津留すみれ訳
2023/1/28 02:01 451文字(音楽之友社・1980円) 世界的なバイオリニスト、イツァーク・パールマンの幼少期から、音楽家としての成功をつかみ始める少年期までを描いた絵本。平易な文章と、色鮮やかで温かみのある絵が、偉大な巨匠を身近に感じさせる。 パールマンはパレスチナ(現イスラエル)の貧しい家に生まれた。早くから音楽に興味を
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『グレイスレス』
2023/1/28 02:01 132文字唐突に突きつけられたナイフの鋒(ほこさき)あるいは銃口のようだ。鈴木涼美+大久保明子コンビによる2度目の御登壇である。白黒の、明暗の、表裏の? 不敵に澱(よど)む女の深淵(しんえん)とは。 ◇ 『グレイスレス』(鈴木涼美著・文藝春秋・1760円)より。
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今週の本棚
『記者のためのオープンデータ活用ハンドブック』=熊田安伸・著
2023/1/28 02:01 480文字(新聞通信調査会・770円) 「えっ、そんなことまで分かるの?」と目からウロコが落ちる。 国家予算の支払先、企業の女性管理職比率、建設業者の受注履歴、削除されたウェブサイトのアーカイブ、会社役員や幹部公務員の経歴――など、誰でも閲覧可能な情報は意外に多い。多くは公的機関や企業が自ら公開しており、イ
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今週の本棚
『いま、この惑星で起きていること』=森さやか著
2023/1/28 02:01 482文字(岩波ジュニア新書・902円) サッカーのワールドカップ優勝に沸いたアルゼンチンの首都ブエノスアイレスは、南北は逆だが東京と緯度が近い。ここに生まれ横浜で育った著者は幼心に「なぜブエノスアイレスと横浜の気候は似ているのだろう」と思い、気象に興味を持った。2カ国の国籍を持つ気象予報士としてNHKワー
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今週の本棚・情報
ベストセラー
2023/1/28 02:01 165文字<1>くじら&Co.ビッグ(デアゴスティーニ・ジャパン) <2>NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編(古沢良太、NHKドラマ制作班ほか著・NHK出版) <3>日本史を暴く(磯田道史著・中央公論新社) <4>バカと無知(橘玲著・新潮社) <5>TVガイドPLUSvol.49(東京ニュース通信
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本はともだち
鈴木のりたけさん「大ピンチずかん」 「乗り越えてね」思い込めて
2023/1/28 02:01 1474文字<くらしナビ ライフスタイル> 「ガムをのんだ」「シャンプーがめにはいった」など、子どもにありがちな“ピンチ”をユーモラスに描いた絵本「大ピンチずかん」(小学館)。親子で楽しめると共感を呼び、刊行から1年足らずで発行部数は15万部に迫る。「子どもへの応援歌のつもりで描いた」という作者の鈴木のりたけ
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今週の本棚
中島京子・評 『千年の歓喜と悲哀 アイ・ウェイウェイ自伝』=艾未未・著、佐々木紀子・訳
2023/1/28 02:00 2031文字◇奪わせてはならない記憶、父子の闘い (KADOKAWA・2970円) 北京オリンピックのスタジアム「鳥の巣」の建築を手がけたことで知られる艾未未(アイウェイウェイ)は、躊躇(ちゅうちょ)なく体制批判を繰り広げる社会活動家でもあり、中華人民共和国政府にとっては危険人物である。 2011年4月、北京
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今週の本棚・著者に聞く
森功さん 『国商』
2023/1/28 02:00 837文字◆森功(もり・いさお)さん (講談社・1980円) ◇統治機能にひずみ、検証必要 2022年は、戦後の大きな節目として記録される1年だった。いうまでもなく、憲政史上最長の政権を築き、自民党最大派閥の領袖(りょうしゅう)だった安倍晋三元首相が7月8日、凶弾に倒れた年として。しかし、事件の約1カ月半前
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今週の本棚・話題の本
『馬鹿ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性』=橘玲
2023/1/28 02:00 853文字◇『馬鹿(ばか)ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性』 藤森かよこさんの『馬鹿(ばか)ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性』(KKベストセラーズ・1760円)は、ほぼすべての女性に向けた応援本シリーズの3作目だ。 著者の定義では、「知力」で上位3%(評者の計算では偏差値に換算すると
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今週の本棚・編集後記
今期の芥川賞・直木賞が決まりました…
2023/1/28 02:00 163文字今期の芥川賞・直木賞が決まりました。なんと2作品ずつ選ばれ、4人の受賞作家が誕生する結果に。当日の記者会見は想定より長くなり、取材を担当した記者たちは原稿の締め切りに追われて大わらわでした。さて、受賞作が多いと注目度が増し、単行本の売れ行きは伸びるのかどうか。書店での反響はいかがでしょうか。(五)
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今週の本棚
『街の牧師 祈りといのち』=沼田和也・著
2023/1/28 02:00 509文字(晶文社・1870円) 読み進めるのにいささか力を必要とする。難しいことが書いてあるからではない。鋭さや激しさを包み隠さず、自身の失敗や罪についてストレートな言葉で語る文章を読むと、自分がいかにたくさんのものを「見なかったこと」にして生きているかを突きつけられ、ページをめくる手がしばしば止まってし
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今週の本棚
湯川豊・評 『地形で見る江戸・東京発展史』=鈴木浩三・著
2023/1/28 02:00 1389文字(ちくま新書・1100円) ◇台地・谷・海 家康に始まる都市像 江戸・東京が国の首都になって四百年、けっこう長い時がすぎた。この大きな町がどんな土地にどんなふうに発展してきたのか、わかりやすい本が多くあるわけではない。 この本の著者である鈴木浩三氏は、専門は経済史というが、地形から江戸・東京の成り
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今週の本棚
『信仰の現代中国』=イアン・ジョンソン著、秋元由紀・訳
2023/1/28 02:00 525文字(白水社・3630円) 倪(ニー)一家は北京郊外で毎年、碧霞元君(へきかげんくん)の廟(びょう)のボランティアをする。元人権派弁護士の王怡(ワンイー)牧師は、成都でプロテスタント教会を始めた。李(リー)一家は山西省の田舎町の陰陽先生で、葬式や占いの専門家。市井の信仰を点描する良質なルポルタージュだ
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今週の本棚・なつかしい一冊
くどうれいん・選 『せとうちたいこさん デパートいきタイ』=長野ヒデ子・作
2023/1/28 02:00 1020文字(童心社 1430円) 「くどうさんは欲が多いねえ」と言われたことがある。わたしのつくる短歌には「○○したい」「○○になりたい」という欲望の歌が多いとのことだった。その人にはわたしのその欲深さがとても羨ましく好ましいのだという。みな何かしらの欲望と暮らしているだろうに、と思っていたが、確かにわたし
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今週の本棚
松原隆一郎・評 『戦国日本の生態系(エコシステム)』=高木久史・著
2023/1/28 02:00 1383文字(講談社選書メチエ・2200円) ◇庶民の暮らし、驚きに満ちた推論 日本人は戦国時代をどう生きたのか。大河ドラマ好きなら信長や秀吉、家康の合戦を空で言えるだろう。彼らが国制を変えたのも事実である。けれども彼ら英雄たちはどんな意味で「日本人」の代表なのか。 圧倒的多数は庶民なのだ。その庶民が食物を調
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文芸評論家の目黒考二さん死去 76歳 「本の雑誌」初代編集長
2023/1/25 16:17 202文字文芸評論家の目黒考二(めぐろ・こうじ)さんが19日、肺がんのため死去した。76歳。葬儀は近親者で営む。お別れの会を後日開く予定。喪主は妻有美子(ゆみこ)さん。 東京都出身。1976年に椎名誠さんらと「本の雑誌」を創刊し初代編集長に。2000年まで発行人を務めた。北上次郎のペンネームで冒険小説、ミス
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特集ワイド
「セリエA発アウシュヴィッツ行き」 ホロコーストの犠牲になったサッカー監督の半生 差別の不条理と恐怖伝える
2023/1/25 13:06注目の連載 2869文字サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会直前の昨年10月、イタリア・ファシズム政権下のサッカー史に光を当てた翻訳本が出版された。イタリアのサッカー界で活躍をしていたユダヤ系ハンガリー人の名監督が、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の犠牲となっていく過程を克明に追った一冊だ。訳者の小川光生さん(52
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Topics
洪愛珠さん著『オールド台湾食卓記』 食が喚起する思い出の時間
2023/1/25 13:05 928文字食の随筆は多いが、胸を打つものとなると限られる。母や祖母の記憶を日常の食から描いた、洪愛珠(ホンアイジュ)著『オールド台湾食卓記』(新井一二三訳、筑摩書房)=写真<下>=には、温かな感情と喪失の痛みが複雑に織り込まれている。 著者は1983年生まれのグラフィックデザイナーの女性。一族は清朝時代に中
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