本・書評
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村上春樹をめぐるメモらんだむ
村上春樹さん新作小説刊行 幻の中編の封印がついに解かれるか?
2023/3/25 09:00 4245文字◇1980年文芸誌に発表した「失敗作」 4月刊行の新作長編小説のタイトルは「街とその不確かな壁」だった! これは長く村上春樹さんの文学に親しんでいる者なら、すぐにピンとくる題だ。そう、1980年の文芸誌「文学界」9月号に発表され、単行本にも全集にも収録されなかった幻の中編(あるいは長い短編)「街と
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本はともだち
文部科学大臣賞受賞者たち 苦労と喜び、読書感想画
2023/3/25 02:01 1389文字<くらしナビ ライフスタイル> 本を読んだ感動を絵で表現する「第34回読書感想画中央コンクール」(全国学校図書館協議会、毎日新聞社など主催、文部科学省など後援、凸版印刷協賛、竹中工務店特別協力)の表彰式が2月24日、東京都千代田区の如水会館で開かれた。最優秀の文部科学大臣賞に4人が選ばれ、受賞者を
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今週の本棚
『菅江真澄 図絵の旅』=石井正己編・解説
2023/3/25 02:01 505文字(角川ソフィア文庫・1650円) 菅江真澄(すがえますみ)は江戸時代後期の旅行家。三十歳で三河国の郷里を離れて、以後四十六年間ずっと旅を続けた。見たものを絵と文章で記しながらの好奇心の旅である。 この人について断片的には知っていたし絵も少し見ていたが、本書でようやく全容を知ることができた。とりわけ
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今週の本棚
『音楽学への招待』=沼野雄司・著
2023/3/25 02:01 506文字(春秋社・2860円) よく耳にする、たとえば「お酒にモーツァルトの曲を聞かせるとよく熟成する」とか「プロレスラーが入場するときの音楽は興奮を誘う」といった、まあ会話に首を突っ込んでも、まじめになる前に手をひくような話題をきっかけに、あれよあれよという間に、物事の本質的な論議に転換する。それ自体、
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今週の本棚
大竹文雄・評 『そのビジネス、経済学でスケールできます。』=ジョン・A・リスト著、高遠裕子・訳
2023/3/25 02:01 1325文字(東洋経済新報社・2090円) ◇「机上の空論」検証重ねレッテル返上 経済学者にビジネスの相談をしても無意味だというのが世間の常識だろう。経済学を机上の空論だと思っている人は多いからだ。しかし、現在の経済学はビジネスや公共政策に直結している。それを自ら示してきたのがシカゴ大学教授である著者のジョン
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『ルポ筋肉と脂肪アスリートに訊け』
2023/3/25 02:01 148文字五輪の競技種目表示で認知度を上げたピクトグラムが、単行本のための強力なアイコンとなって新鮮だ。アスリートという未知に、直(じか)に対峙(たいじ)する著者の姿勢を垣間見る。 ◇ 筋トレや体脂肪のメカニズムを探る『ルポ筋肉と脂肪アスリートに訊(き)け』(平松洋子著・新潮社・2310円)。
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今週の本棚
『好きになってしまいました。』=三浦しをん・著
2023/3/25 02:01 455文字(大和書房・1650円) 著者の「愛」をつづったエッセーだ。「好きすぎて社会生活に支障をきたすほど」読書を好み、「宝塚、EXILE一族、新日本プロレス」の輝きに引きつけられ、植物や動物たちと過ごす。そんな日常を通し、おもしろおかしく自身の「愛」を歌い上げる。 しかし、笑いだけで終わらせないのが作家
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今週の本棚
中村桂子・評 『世界を変えた100の手紙 上・下』=リン・ソルター著、伊藤はるみ・訳
2023/3/25 02:01 1377文字(原書房・各2640円) ◇戦争、科学、芸術…放たれる強い思い 手紙には何か知りたいことが隠れていそうな気がする。本来宛先の人だけが読むものであり、そこには送り手の強い思いがこめられているからである。公的な手紙、公開を意識して書かれたものもあるが、それでも人間や生活を感じさせるところがあり、手紙を
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今週の本棚・なつかしい一冊
君塚直隆・選 『火曜クラブ』=アガサ・クリスティー著、中村妙子・訳
2023/3/25 02:01 1042文字(クリスティー文庫 1078円) 「ミス・マープル」。この名前はクリスティー・ファンのみならず、世界中のミステリー好きに愛される響きを持つ。クリスティーといえばかのエルキュール・ポワロを真っ先に思い浮かべるかもしれない。筆者もかつてはそうであった。しかし、短編集ながらもミス・マープルがはじめて登場
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今週の本棚
鴻巣友季子・評 『テーゲベックのきれいな香り』=山﨑修平・著
2023/3/25 02:01 1392文字(河出書房新社・1980円) ◇詩と小説、重なり変位しあう関係性 小説は詩に還りたがっているのではないか。ここ数年、そんなことを思うことがある。定型詩の形で物語を書いていた西洋で、散文が文学の中心を担うようになるのは、十七、十八世紀に「小説」が急速に発達してからだ。定型の束縛からの解放。わたしたち
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今週の本棚
持田叙子・評 『よき時を思う』=宮本輝・著
2023/3/25 02:00 2080文字(集英社・2200円) ◇90年生きた記憶、晩餐会が呼び覚ます 一族郎党そろっての晩餐(ばんさん)――じつに絵になる。私たちの体内に伝わる古代の血をゆさぶる何かがある。世界芸術のアイコンだ。 たとえばキリストと弟子がパンとぶどう酒を分かちあう名画「最後の晩餐」はその代表。ドイツの文豪トーマス・マン
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今週の本棚・著者に聞く
宇野重規さん 『近代日本の「知」を考える。』
2023/3/25 02:00 851文字◆宇野重規(うの・しげき)さん (ミネルヴァ書房・2420円) ◇世界と直結、関西知識人の反骨 関西で生まれ育ったり、大きな仕事をしたりした研究者や作家ら29人と、その著書を論じた。東京生まれで東京大の博士号を持つ生粋の東京人が、なぜ? 「よそ者だからこそ、気づける面白さがあります」 明治以降、特
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今週の本棚・情報
ベストセラー
2023/3/25 02:00 207文字<1>DJふぉいフォトエッセイ 「#チラ裏」(DJふぉい著・KADOKAWA) <2>魔女と過ごした七日間(東野圭吾著・KADOKAWA) <3>マジキシュガーフレンズ(デアゴスティーニ・ジャパン) <4>TRIANGLEmagazine01乃木坂46 山下美月cover(講談社編・講談社) <5
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今週の本棚・編集後記
認定NPO法人「水俣フォーラム」…
2023/3/25 02:00 160文字認定NPO法人「水俣フォーラム」(東京都)のウェブサイトで、各界で活躍する作家や研究者、医師らがつづる「水俣コラム」が始まりました。公害の原点とされる水俣病について、ネットを通じて知ってもらい、「水俣と現代をつなぐ」ことが目的だそうです。書評欄の執筆者も筆を執る予定。掲載は月2回です。(五)<デザ
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今週の本棚・話題の本
『ケーキの切れない非行少年たち』=ヒコロヒー
2023/3/25 02:00 835文字十数年前の私といえば、それはもう、ろくでもない少女だった。いつからか、自分は「みんな」と同じようにできないことに拗(す)ねていた。「みんな」が汚いとばかにする喫茶店が好きだったし、「みんな」がかっこいいという先輩の何がいいのか分からなかった。「みんな」に同化できない自分にげんなりし、ろくでもなくな
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今週の本棚
『ボブ・ディラン』=北中正和・著
2023/3/25 02:00 486文字(新潮新書・836円) 「ボブ・ディランはすごい!」といわれても、いまひとつピンとこないという人は多いと思う。ぼくもそうだ。たしかに「風に吹かれて」は名曲だけど、ほかはよく知らない。美声とはほど遠いダミ声だし。ましてや、なんでノーベル文学賞? そんな疑問に北中正和はやさしくていねいに答える。ディラ
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今週の本棚
『俠』=松下隆一・著
2023/3/25 02:00 520文字◆『俠(きゃん)』 (講談社・1815円) 時代小説だが主人公が六十歳の老人というのが渋くていい。銀平というその老人は隅田川の東、本所の竪川(たてかわ)近くで、小さな蕎麦(そば)屋を営む。 一日に二十杯の小商い。客も同心の下働きをしている初老の男、夜の町で客を取る夜鷹(よたか)、物乞いの親子(父親
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全米批評家協会賞 川上未映子さん受賞ならず 日本作家初の最終候補
2023/3/24 09:58 161文字全米批評家協会は23日(日本時間24日午前)、2022年の同協会賞の小説部門に、米国の作家リン・マー(Ling Ma)さんの「Bliss Montage: Stories」を選んだと発表した。同部門では川上未映子さん(46)の「すべて真夜中の恋人たち」が日本の作家として初めて最終候補に入っていたが
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「本を大人から子どもに」 「リリーさん文庫」登場 市民文化賞の賞金 書籍169冊寄贈 北九州市立文学館 /福岡
2023/3/24 05:10 463文字北九州市出身の俳優で作家のリリー・フランキーさんにちなんだ「リリー・フランキー こども文庫」が、市立文学館(小倉北区城内)にお目見えした。リリーさんは市主催の「子どもノンフィクション文学賞」の選考委員を初回から務めている縁から、2022年に受賞した北九州市民文化賞の副賞賞金で子ども向けの書籍169
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愛された鉄橋復旧 別所線 上田の夫婦、絵本に描く /長野
2023/3/24 05:03 776文字2019年の台風19号で崩落した上田電鉄別所線の鉄橋が復旧するまでの過程を写真と絵を使って描いた「赤い鉄橋を渡っていくよ」を長野県上田市の夫婦が出版した。千曲川に架かり、赤く塗られた姿が特徴の鉄橋は住民に長く愛され、多くの人の後押しで復旧した。「絵本を読んで、別所線に乗りに来てくれる人が増えてくれ
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