
世の中が半歩でもいい方向へ進めばとの思いを込めた記者コラムです。
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境界地域の宿命=本間浩昭 /北海道
2023/6/4 05:02 514文字「ビザなし交流の30年間は、日露関係の間氷期でした」。北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕教授(国境学)はそう分析する。「ウクライナ侵攻によって、いきなり氷河期に入ってしまいましたが」と。 簡潔にして要を得た指摘に、34年前の根室を思い出した。当時は東西冷戦の末期で、まさに氷河期だっ
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天才の教え=細谷拓海 /北海道
2023/5/28 05:01 510文字目当ての選手は練習前に真っ先にグラウンドに飛び出し、ボールを蹴り始めた。両足の内・外、かかと、胸、肩――。全身を使い、誰よりも器用にボールを操る姿は見ているだけで楽しい。視線の先にいたのはサッカーJ1・北海道コンサドーレ札幌の小野伸二選手(43)。終始にこにこしながらボールと戯れる姿が印象的だった
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副議長を出すのはどちら?=石川勝義 /北海道
2023/5/21 05:05 502文字統一地方選後、初の臨時道議会が11~17日に開かれた。取材すべき内容の一つが、副議長をどの会派から選ぶかだった。慣例では第1会派から議長、第2会派から副議長を出すが、過半数を握った自民党・道民会議(54人)の一部に「副議長も出すべきだ」という意見があり、第2会派の民主・道民連合(26人)に打診した
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余市を歩き学んだこと=後藤佳怜 /北海道
2023/5/14 05:02 509文字銅色にきらきらと光り、フルーツチョコレートのように華やかに香るウイスキー「シングルカスク余市10年」。ほんの15ミリリットルで1000円の高級品だが、新人記者として働き始めた自分を鼓舞するため、少し背伸びして挑戦した。 5月初めに訪れたニッカウヰスキー余市蒸留所の試飲コーナーで「ここでしか試せない
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分断よりも深い溝=高橋由衣 /北海道
2023/4/30 05:11 509文字ススキノ交差点のシンボル・ニッカウヰスキーの「ヒゲのおじさん」の口角が、心なしか普段より上がって見える。新型コロナの流行が落ち着き、活気が戻りつつある中心部の夜。5月の東京への異動が決まってから、初任地として4年間過ごした街の景色がより輝いて映った。次に帰ってくる時、札幌はどうなっているだろう。
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平和への思い=米山淳 /北海道
2023/4/23 05:08 486文字利尻町の漁師、吉田欽哉さん(97)は第二次世界大戦後、旧ソ連によってシベリアに4年間抑留された経験を持つ。抑留者は約60万人に上り、飢えや寒さで約5万5000人が亡くなったとされる。うち約3万3000人の遺骨が現地に残されたままだ。「今も冷たい凍土の中にいる彼らが、どうして安らかに眠れるでしょうか
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ローカル線存廃の行方=影山哲也 /北海道
2023/4/16 05:16 489文字北海道に赴任して2年。休暇で遠出する際にはなるべく列車を使うようにしている。車窓からの雄大な景色に魅せられたからだ。 道内の鉄道を初めて利用したのは2009年夏。「総理番」記者だった私は麻生太郎首相(当時)の衆院選遊説を取材するため、帯広から札幌まで列車に乗り、北海道の緑の美しさにしばしみとれた。
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「我流」貫く墨アート作家=鈴木斉 /北海道
2023/4/9 05:07 504文字4歳の時に広島市で被爆した鹿追町在住の墨アート作家、月下美紀さんから手紙が届いた。墨を使った独特の筆致だから、確認しなくても差出人は分かる。6月に広島市でアート展を開くのだと、チラシが同封されていた。意気盛んな82歳のおじいさん。元気を分けてもらい、うれしくなった。 昨年夏、原爆の熱線と爆風に耐え
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心にファイト!=真貝恒平 /北海道
2023/4/2 05:14 500文字この季節になると、よく聴く曲がある。札幌出身のシンガー・ソングライター、中島みゆきさんの「ファイト!」。字余り風の歌詞がメロディーに乗って優しく語りかけてくる。多くのアーティストがカバーしているが、やはり本家本元の声が一番心に響く。 名曲誕生のきっかけが、自身のラジオ番組に寄せられたリスナーのはが
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意思決定層に多様性を=今井美津子 /北海道
2023/3/26 05:42 498文字友人が「結婚と出産を経験したら、政治が身近になった」と言っていた。私も同感だ。 結婚すると妻が夫の姓に変えることが多い。私は仕事で旧姓を使っているが、退職したら名乗れないと思うと、名前はアイデンティティーだと実感する。子育てでは待機児童解消や子どもの医療費の無償化など、生活が政治に直結し、翻弄(ほ
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新しい街に美しい歌を=三本木香 /北海道
2023/3/19 05:06 503文字今月30日、いよいよ北広島市の「北海道ボールパークFビレッジ」がオープンする。最新の球場を中心に、子供の遊び場や農園ゾーンなどが広がり、四季折々の花が咲くガーデンや、アウトドア体験施設も続々と誕生すると聞き、とても楽しみにしている。 内覧会で球場や農業学習施設を見学し、よくこれだけ巨大でユニークな
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刻まれた記憶 /北海道
2023/3/12 05:00 503文字東日本大震災から12年が経った。当時、私は16階建ての大阪本社ビルの14階にいた。午後2時46分、緊急地震速報が全テレビチャンネルで流れた。「宮城県沖で地震」の表示に、写真記者として緊張を少し解いた。その瞬間、足元が大きく揺れ始めた。 長周期地震動によって、震源から約700キロも離れた大阪市内の高
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廃止予定路線の旅=土屋信明 /北海道
2023/2/12 05:00 495文字JR根室線の富良野駅から東鹿越駅行きのディーゼル列車に乗った。東鹿越駅が近づき、トンネルを抜けた列車がかなやま湖にかかる鉄橋を渡ると、シカの群れが雪を跳ね上げ林を走る姿が見えた。 ワンマンカーには、高校生が5人、高齢の男女、観光客風の女性1人と私を含め9人が乗車し、途中下車した2人を除いて6人が東
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健康不安に対策を=平山公崇 /北海道
2023/2/5 05:12 500文字室蘭市の給油所の地下埋設管から漏れたガソリンが水道管を透過し、水道水から国の基準値を超える発がん性物質のベンゼンが検出されてから間もなく半年を迎える。しかし、給油所を所有するENEOS(東京)は1月から汚染された地下水の浄化作業を始めたばかりで、健康面や進展しない補償の協議など、住民の不安は高まっ
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日本最北端=金将来 /北海道
2023/1/29 05:04 490文字とある取材で先日、初めて稚内市に足を運んだ。約6時間の列車旅は、シカが線路を横断するたび急停車を繰り返し、線路横では「ひかれなくてよかった」と言わんばかりに、シカがぽつんと列車を見つめていた。道外から昨年4月に引っ越してきたばかりの私は、日本最北端の壮大な景色に札幌市とはまた違った魅力を感じ、北海
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ライフライン=本多竹志 /北海道
2023/1/22 05:10 494文字オホーツク地方の興部町で、ある話題に関心を引いた。昨年暮れの大雪の出来事だ。送電線の鉄塔倒壊が全戸停電を引き起こしたのだが、この陰でもう一つの事態が起こっていた。湿った雪で電線などの断線が多発。光ケーブルの断線も相当数に上ったのだという。 興部町は、町が光ケーブルの幹線を敷設し、住民の半数以上の約
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雪がとけたら?=水戸健一 /北海道
2023/1/15 05:06 507文字「何かクイズを出してよ」と小学生の我が子にせがまれた。冬なので「雪がとけたら何になるでしょうか」と尋ねた。すると「春になる」と答えが返ってきた。思わず笑い声を上げてしまい、子どもの発想の柔軟さに驚いた。テストで先生はマルをつけるかな。 14、15日は大学入学共通テスト。大学入試センター試験から衣替
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手紙のぬくもり=山田豊 /北海道
2023/1/8 05:08 514文字年始め、札幌市内の自宅で、これまでにいただいた手紙を読みあさった。新年に届いた年賀状の影響かもしれないが、手紙を一枚ずつ、丁寧に読み返したくなった。 手紙を読んでいると、あの日の感情がよみがえってくる。書いてくれた人の顔が浮かび、楽しかった思い出や落ち込んだ自分を勇気付けてくれた優しさが、今もすぐ
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未来担うサーモン=三沢邦彦 /北海道
2022/12/25 05:08 485文字日本で唯一、太平洋と日本海の二つの海を抱える八雲町。ここで2019年から取り組むのが、道内初となるトラウトサーモン(ニジマス)の海面養殖の事業化で、「北海道二海(ふたみ)サーモン」のブランド名で売り出している。 漁船による漁業が頭打ちで、道内でもサンマやサケ、スルメイカなどの漁獲量が落ち込んでいる
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モノクロの世界=高橋由衣 /北海道
2022/12/18 05:00 500文字あの日、中学の卒業式を終えたばかりの私は、母が運転する車の後部座席にいた。突然感じた強い揺れは体を浮かせ、フロントガラスから見える信号は激しく揺れていた。2011年3月11日、福島県から約200キロ離れた場所で感じた恐怖を今でも鮮明に覚えている。 その後に起きた福島第1原発の爆発事故。目に見えない
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