
社会保障のあるべき姿を専門家が論じます。
-
私の社会保障論 少数者への狭量な姿勢=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/8/4 02:01 946文字国会議員が参加する懇談会で「同性愛は精神の障害、または依存症」として治療回復について記した冊子が配布された問題で、政党に内容の否定を求める署名が5万超も集まった。 10年ほど前の騒ぎを思い出した。元首相らが顧問を務めた超党派の議員連盟が「伝統的な子育てで発達障害は予防できる」をテーマに勉強会を開い
-
私の社会保障論 石の上にも20年=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/7/14 02:00 939文字「石の上にも3年」ということわざがある。「たとえ冷たい石の上でも、3年間も座り続ければ温かくなってくる」との意味だという。この言葉を知った子どもの頃は「お尻も痛いし、退屈そう」「3年も耐えられない」と思った。 私にとって、「石の上」とは「健康格差社会」に関する研究である。20年前の日本には、こんな
-
私の社会保障論 「VS東京」地方の知恵=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/6/16 02:00 940文字民間では、他社との比較広告は珍しくない。一方、公的機関ではあまり見ない。しかし、海外には成功事例がある。その筆頭が英国のバーミンガムだ。30年前から、良好な子育て環境を前面に出して「ロンドンからバーミンガムへ」キャンペーンを展開した結果、若年人口が増えて地域活性化に成功している。20年前にロンドン
-
私の社会保障論 健康長寿の「森」つくる=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/5/26 02:01 928文字森にはたくさんの木が集まっている。だから木を見れば森がわかると思うのは勘違いである。なぜなら森は木の集合体というだけでないからだ。足元の草花に集まる虫や木の実などを鳥や小動物が食べて運んだり、枯れ葉などを微生物が分解したりして、森という生態系のシステムは成り立っている。だから「木を見て森を見ない」
-
私の社会保障論 一家で移住=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/4/28 02:02 917文字この4月に首都圏から転出した。私は東京生まれ東京育ちで人並みの郷土愛はある。他方で、人口問題の研究者として、東京一極集中の弊害と地方活性化の必要性を痛感してきた。 2人の息子をはじめ、子ども会に来てくれる子たちに自然の中での生活体験を、とこれまで千葉県の九十九里の海近くと栃木県の那須の山近くに自然
-
-
私の社会保障論 孤独・孤立のゼロ次予防=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/4/7 02:02 931文字一人暮らし、一人旅は昔からあったが、一人カラオケ、さらにここ数年で一人焼き肉を楽しめる店も増えた。その背景に、50歳時の未婚率が、男性の4人に1人、女性の6人に1人、さらに独居高齢者が700万人以上に増え、所帯持ちも時には1人の方が気楽なことがある。 一人でも、気楽に不安なく生活しているのなら問題
-
私の社会保障論 「大変だ合戦」の放棄=東レ経営研究所特別研究員・渥美由喜
2022/3/24 02:00 942文字16年前、会社で最初の男性育休取得者になった。課長で4カ月、2回目は部長で半年休んだ。「パートナーは幸せですね」と言われて「実は離婚寸前でした」と返すとギョッとされる。 非は私にある。当時、父の統合失調が悪化し、実家に日参した。父は愛らしい孫たちの姿に目を細めたが、私には攻撃的。猜疑心(さいぎしん
-
私の社会保障論 第三の居場所=白十字訪問看護ステーション統括所長・秋山正子
2022/3/10 02:03 937文字英スコットランドの造園家、マギー・ジェンクスは、再発した乳がんの診察で自分の余命を聞いた際、医師から「3、4カ月ですね」とあっさり告げられて言葉を失った。治療できなくてもいろいろなことを試みたいと思ったが、言葉が出てこない。「次の患者が待っていますから」と言われ、廊下に出たという。 病状を突然告げ
-
私の社会保障論 疫学の歴史と展望=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/2/17 02:00 931文字新型コロナ感染症の流行で、その価値を再発見したものがある。マスク、手洗い、そして対面でコミュニケーションし、共に笑う喜びだ。さらに保健所、公衆衛生、そしてこれらの重要性を明らかにしてきた疫学である。 1月末に開催された日本疫学会学術総会の会長講演で疫学の歴史や展望を考えた。疫学は疫(伝染・流行)病
-
私の社会保障論 自己満イクメン=東レ経営研究所特別研究員・渥美由喜
2022/2/3 02:01 953文字この秋から、父親版産休(産後2カ月以内の父親社員に企業が休暇制度を周知する義務を負う)の仕組みが始まる。修羅場は経験しないと分からないので、良い取り組みだ。しかし、「やらされ感」や、特別なことをしたと勘違いする「自己満イクメン」が増えないように願う。 自己アピールでイクメンを自称する輩(やから)が
-
-
私の社会保障論 暮らしの保健室=白十字訪問看護ステーション統括所長・秋山正子
2022/1/20 02:02 887文字日々の暮らしで、役所などに聞くほどではないけれど、気軽に誰かに相談したい時がある。そんな施設が東京都新宿区戸山にある。「暮らしの保健室」だ。高齢化が進む巨大団地の一角にあり、地域のよろず相談所として2011年7月に開所した。 相談は無料で、予約もいらない。地域の医療や介護の事情を熟知した相談員(主
-
私の社会保障論 つながり確保に工夫を=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2021/12/30 02:00 893文字あと少しで新型コロナウイルス感染症の流行も終わると期待していたら、今度はオミクロン株がやってきた。従来株と比べて重症化する割合が低いと聞いてあなどってはいけない。感染者1人が平均してうつす人数「実効再生産数」がデルタ株の約4倍に上るという報告もある。入院する人の割合がデルタ株の仮に4分の1だとして
-
私の社会保障論 野球と多様性=東レ経営研究所特別研究員・渥美由喜
2021/12/16 02:00 951文字30年間ダイバーシティー(多様性・多面性を生かす社会づくり)の研究をしてきた。最初の15年は上司から「役に立たない研究は認めない」と禁止命令を受けた。終業後に研究するしかないので、定時に帰宅し合コンの誘いも断った。 当時、ダイバーシティー=女性活躍と思われていたので「何で男性なのに?」とよく聞かれ
-
私の社会保障論 模索が続く面会=白十字訪問看護ステーション統括所長・秋山正子
2021/12/2 02:06 923文字新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除されたとはいえ、多くの医療機関は感染予防のため入院患者らとの面会制限を設けている。 そんな中、東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)は、入院患者と家族との面会の機会をできるだけ設けようと工夫をこらし、高齢者を中心とした患者のQOL(生活の質)の維持に効
-
私の社会保障論 ファミリーヒストリー=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2021/11/11 02:01 917文字「ファミリーヒストリー」というNHKの番組がある。ある人の両親や祖父母などが何をしてきたのかが紹介される。ある分野で活躍している人がそこに入った因縁やミームを感じる構成である。ミームとは、英国の生物学者ドーキンスによる造語で、技能、物語など文化や情報を次世代に伝える遺伝子以外のものである。 例えば
-
-
私の社会保障論 「公平」と「公正」=東レ経営研究所特別研究員・渥美由喜
2021/10/28 02:01 930文字仕事柄、私はよく北欧に行く。15年前、友人のストックホルム商科大学助教授から「スウェーデンは金魚鉢」と聞き、「うまい」と思わず膝を打った。小さいながらも透明性が高い同国で、友人は「ある自治体の発注に、首長の息子の会社が入札したことが騒がれた」と語った。 しかし、聞くと息子の会社は受注を逃したらしい
-
私の社会保障論 ヘルプマークは優れ物=白十字訪問看護ステーション統括所長・秋山正子
2021/10/14 02:01 924文字筆者は、がん療養中の方や、ご家族、友人など、がんに関わる方々のために無料で相談支援する認定NPO法人マギーズ東京(東京都江東区)でも活動している。 もともとは、ふらりと立ち寄ってもらえる場所だったが、コロナ下では予約を原則として人数が増えすぎないように工夫しながら、毎日10~20人に対応している。
-
私の社会保障論 ネット利用で健康保持も=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2021/9/23 02:00 924文字電車やバスの中で周りを見回すと、起きている人の大半がスマートフォンに触っている。人は新しい情報やコミュニケーションが大好きだ。高齢者にも当てはまるのだろうか? 過去1年間に、パソコン・携帯電話などでインターネット(以下ネット)やメールをどのぐらい使ったのか。2019年度の冬に高齢者に尋ねてみた。対
-
私の社会保障論 11歳の次男に学ぶ=東レ経営研究所特別研究員・渥美由喜
2021/9/9 02:00 907文字ちょうど10年前。次男は1歳半で脳腫瘍とわかり、脳の一部を摘出した。手術後、風船のように顔面が膨れた変わり果てた姿を見て、私は号泣した。せがれの命を救ってくださった病院の皆様に感謝しつつも、行く末を思うと気が重かった。 切除した部位は、言語・運動機能をつかさどっていた。保育園のお友達から「なにしゃ
-
私の社会保障論 母国語で橋渡し=白十字訪問看護ステーション統括所長・秋山正子
2021/8/26 02:18 883文字新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、海外からの観光客が減る一方で、母国に戻れずに日本に長く滞在する外国人が増えているようだ。 特に、筆者が主に活動する東京都新宿区内に住む外国人は、都内の自治体で最も多い3万7827人(今年1月現在)。新大久保などにたくさんの外国人が居住する。 日本に住む外国人の
-