
社会保障のあるべき姿を専門家が論じます。
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私の社会保障論 育休、夫婦日数差が問題=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2023/9/21 02:00 941文字厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2022年度)によると、男性の育児休業取得率は前年の14%から22年には17%と上昇した。政府は、6月に策定した「こども未来戦略方針」で、これを25年に50%、30年に85%と大幅に引き上げる目標を立てた。 しかし、「取得率」よりも「取得日数格差」こそ、大きな問題
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私の社会保障論 道の駅で健康づくり?=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2023/8/24 02:02 942文字「自然に健康になれる環境づくり」による「ゼロ次予防」の効果検証を重ねている。新たに「健康支援型『道の駅』」の効果を7年かけて検証した。道の駅の拡張移転前後で、近隣に住む高齢者に、多面的な行動の変化と健康の改善がみられたことを日本公衆衛生雑誌に報告した。 舞台は千葉県睦沢町の「道の駅むつざわ」で、2
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私の社会保障論 「介護離職ゼロ」実現へ=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2023/7/27 02:00 905文字2000年代後半に、毎年約5万人だった介護離職者数は、その後、10年で倍増した。そこで、15年に当時の安倍晋三内閣は「介護離職ゼロ」を目標に掲げた。しかし、今もなお年に約7万~10万人とほぼ横ばいだ。 他方、介護休業は対象家族1人につき通算93日取得できる。また、介護休暇は、対象家族が1人の場合は
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私の社会保障論 健康なまち「共創元年」=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2023/6/29 02:00 926文字「健康なまちづくり」を目指した産官学民による「共創」の動きが増えたのは気のせいだろうか。「自然に健康になれる環境づくり」を「行政だけでなく、大学等の研究機関、企業、(中略)住民組織等の関係者が連携」して行うとした第3次国民健康づくり運動「健康日本21(第3次)」を厚生労働省が5月31日に告示した。
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私の社会保障論 児童への性加害問題=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2023/6/1 02:01 900文字20代前半から約20年間、近所の公園で「子ども会」を続けた(10年前に中断)。毎週2~3回、各2時間程度、近所の子どもとドッジボールや刑泥(刑事役が泥棒役を捕まえる遊び)で遊んだ。クリスチャンの私は毎回、聖書の話を紙芝居で熱演した。 当初、冬のボーナスで購入した「青いクマの着ぐるみ」が人気で、毎回
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私の社会保障論 健康長寿の10年=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2023/5/4 02:00 899文字「ヘルシーエージング(健康長寿)の10年」という言葉を聞いたことがあるだろうか。日本ではほとんど報じられていないが、国連と世界保健機関(WHO)は、2021年から30年までの10年間をそう位置づける決議を採択した。特にアクションを起こすべき四つのエリアなどを掲げ、取り組みを進めている。途上国を含め
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私の社会保障論 「イクメンは出世する」=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2023/4/6 02:00 919文字2006年に内閣府の委託を受け、私が担当した「スウェーデン企業のワーク・ライフ・バランス調査」で、男性役員は一般社員よりも育休取得率が高かった。つまり、男性の育休取得率が低かった頃に取得した社員が、その後、出世して役員になっていた。 数十社にヒアリングしたところ、出世した要因には共通点があった。第
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私の社会保障論 自然に健康になるには=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2023/3/16 02:00 926文字運動やダイエット、減塩はつらい。だから長続きしない人も多い。暮らしているだけで「自然に健康」なら楽ちんだ。しかし、そんなうまい話が本当にあるのだろうか? 例えば住宅。寒いと血管は収縮するから血圧は上がる。逆に、断熱改修をして暖かい住宅にすると血圧は下がる。そんな知見が蓄積され、世界保健機関(WHO
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私の社会保障論 ハラスメントを類型化=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2023/2/16 02:00 929文字私は企業コンサルティングをしているため、職場のネガティブな情報を知る機会が多い。 深刻なパワハラ(権力や立場を乱用した嫌がらせ)事案では、加害者・被害者ともに評価が高い「エース社員」が多い。加害エースが罰せられる姿を見た管理職層は、「物言えば唇寒し」と部下や後輩に対して弱腰になりやすい。部下層は「
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私の社会保障論 ごちゃ混ぜの効用=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2023/1/26 02:00 948文字多様性(ダイバーシティー)という言葉を聞く機会が増えた。「ごちゃ混ぜ」と呼ぶ人もいる。性別、年齢、障がいの有無、人種、性的指向から、キャリアや立場まで幅広い。「誰一人取り残さない」社会をめざす国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」や地域共生社会などもある。企業でも、多様な商品の少量生産にシフトし
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少数者が活躍する環境=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/12/29 02:00 922文字「女性活躍」という言葉を見るたび、「いつ次の段階に進むのか」とじれったくなる。 10年前、コンサルティングした「発達障がい者の就労支援」に取り組むNPOの事例を紹介する。発達障がい者は、ネガティブ要素の裏に才能が隠れているケースが多い。ある女性は、極度の潔癖症でコミュニケーションが苦手なため、十数
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私の社会保障論 「五方良し」は可能か=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/12/8 02:01 931文字多くの人が一度は聞いたことがある「三方良し」。「売り手良し」に加えて「買い手良し」、さらには「世間良し」の三つがそろってこそ、持続可能になるという。では社会保障の持続可能性を高めると期待されるPFS(成果連動型民間委託契約方式、Pay For Success)を聞いたことがあるだろうか。 PFSで
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私の社会保障論 中立的な指標とは=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/11/10 02:01 923文字「男女の賃金格差是正」という政府方針の下、従業員301人以上の企業は、男女別、かつ正規・非正規別の賃金差の開示が義務付けられた。女性活躍の状況を評価する指標の一つになる。 「男性と比べ女性の平均賃金の水準が低い状況」は問題で、マクロ指標(各産業の賃金総額)は是正すべきだ。しかし、各企業で賃金格差の
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私の社会保障論 「エビデンス」生む調査=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/10/20 02:00 930文字一人の力は小さくても、力を合わせれば、時に1+1が3とか4の大きな力を発揮する。それと同じように、調査への回答など数字を集めただけの「データ」から、生活や政策に役立つ「エビデンス」(科学的根拠)を生み出せる。 私たちが取り組む日本老年学的評価研究(JAGES)では、64市町村の高齢者25万人以上の
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私の社会保障論 少数者をいかす社会=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/9/22 02:01 943文字日本より数十年先を行く欧米諸国でもかつて、少数者をめぐり多くの失敗があった。例えば性的指向を転換させる「転向療法」を三十数年で計70万人以上に施した国際団体は、創始者・指導者がその有害性を認め、被害者(多数の自殺者を含む)に謝罪し、10年前に解散した。少数者の特性を矯正せず、特性を認めていかし、活
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私の社会保障論 DX時代の健康増進=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/9/1 02:00 922文字コロナウイルス感染症など病気になってから事後的に治療するのと、病気にかからない、あるいは重症化しないよう事前に努力する予防とどっちが良いか。問われれば、多くの人が「予防」と答えるだろう。効果的、効率的な予防策が確立すれば、社会にとっても、社会保障給付費を抑制できる。問題は、どんな行動が予防に有効か
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私の社会保障論 少数者への狭量な姿勢=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/8/4 02:01 946文字国会議員が参加する懇談会で「同性愛は精神の障害、または依存症」として治療回復について記した冊子が配布された問題で、政党に内容の否定を求める署名が5万超も集まった。 10年ほど前の騒ぎを思い出した。元首相らが顧問を務めた超党派の議員連盟が「伝統的な子育てで発達障害は予防できる」をテーマに勉強会を開い
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私の社会保障論 石の上にも20年=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/7/14 02:00 939文字「石の上にも3年」ということわざがある。「たとえ冷たい石の上でも、3年間も座り続ければ温かくなってくる」との意味だという。この言葉を知った子どもの頃は「お尻も痛いし、退屈そう」「3年も耐えられない」と思った。 私にとって、「石の上」とは「健康格差社会」に関する研究である。20年前の日本には、こんな
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私の社会保障論 「VS東京」地方の知恵=関西広域連合有識者委員・渥美由喜
2022/6/16 02:00 940文字民間では、他社との比較広告は珍しくない。一方、公的機関ではあまり見ない。しかし、海外には成功事例がある。その筆頭が英国のバーミンガムだ。30年前から、良好な子育て環境を前面に出して「ロンドンからバーミンガムへ」キャンペーンを展開した結果、若年人口が増えて地域活性化に成功している。20年前にロンドン
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私の社会保障論 健康長寿の「森」つくる=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
2022/5/26 02:01 928文字森にはたくさんの木が集まっている。だから木を見れば森がわかると思うのは勘違いである。なぜなら森は木の集合体というだけでないからだ。足元の草花に集まる虫や木の実などを鳥や小動物が食べて運んだり、枯れ葉などを微生物が分解したりして、森という生態系のシステムは成り立っている。だから「木を見て森を見ない」
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