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踏み跡にたたずんで

芥川賞作家、小野正嗣さんの小説「踏み跡にたたずんで」がスタート。月1回、原則として第4土曜日に掲載します。

  • 風の運ぶもの=小野正嗣

     地面は凸凹で、雨が降ったらしく、ぬかるみ、ところどころに茶色い水たまりもあった。 見渡すかぎりその空き地には、いま目の前にあるキャンピングカーも含めて、バンや…

  • 光の環=小野正嗣

     出ておいで、と声がした。 そこに別の声が続いた。 怖くないよ。何もしないから、何も痛くないから、出ておいで。 それを聞いて、「痛くない? なんでわざわざそんな…

  • 雲の狩人=小野正嗣

     罠(わな)をしかけているのだ、と長身の老人は言った。言ったように聞こえた。 そばにいた小柄な中年女性が、やめなさい、と訴えかけるまなざしで老人を見つめた。 ふ…

  • 雲か煙か=小野正嗣

     島に着いて2週間が過ぎようとしていた。フライトはキャンセルされ、別の便を予約しようとすると、運行がいつ再開されるかわからないと言われた。 テレビの教養番組のた…

  • 隙間=小野正嗣

     夜中に目が覚めて、一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。自分の家ではないことだけは確かなのに、思考はそれ以上進まず、前進を、いや後退でもいいが、とにかく動…

  • 襞=小野正嗣

     ずいぶん早く目が醒(さ)める。小鳥のさえずりやときどき道を行き交うバイクや車のエンジン音、どこかから大声で呼びかけたり笑ったりする声が聞こえてきて、さすがに南…

  • つぼみ=小野正嗣

     島に暮らす作家に会いに行った。 飛行機で同じ列の席には、そろってふくよかというか、体格のよい女性がふたりいた。仲がよいようでずっと喋(しゃべ)っていた。 これ…

  • 雪の上に=小野正嗣

     雪の上に落ちていたのは? 思い出そうとするが、それが絵で見た光景だったのか、あるいは小説の一場面だったのか、雪に道を見失ったかのように記憶は身動きがとれなくな…

  • 日の出=小野正嗣

     あらゆるものの輪郭がおぼろになっていく、とベス姉がため息まじりに漏らし、彼女に背負われていたベスが、賛同するように、くううんと鼻を鳴らした。 ベス姉は10年近…

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