
社会部・滝野隆浩専門編集委員のコラム。
-
親を家でみとる覚悟
2023/9/24 02:01 956文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> これまで家族問題や子供の虐待、ネット依存などについて世に問うてきた石川結貴さん(61)は、同世代で旧知のジャーナリストである。彼女が昨春、実父を自宅でみとったことを、新著の「家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取(みと)るまで」で初めて知った。 「仕事柄、在
-
遍路の地で学ぶ生と死
2023/9/17 02:01 953文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> みとりなどにかかわる専門職が集う「日本死の臨床研究会年次大会」が11月25日から2日間、松山市で開催される。2020年の開催予定がコロナ禍で延期となり、オンライン開催をへて4年ぶりの完全対面大会となる。 松山は「お遍路」の地、四国にある。そして不治の病にかかり死
-
「てらそうそう」の本意
2023/9/10 02:02 930文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 埼玉県新座市の霊園「さくら浄苑」で、寺院葬の説明会があった。お寺で葬儀をすればどんなメリットがあるのか。残暑厳しい日曜日なのに約20人が集まり、熱心に聴き入った。 配られた資料の表紙には「お迎え・安置から49日まで、すべてに対応いたします」とあった。住職がワンス
-
「こまちぷらす」の希望
2023/9/3 02:00 954文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 横浜市戸塚区の認定NPO法人「こまちぷらす」は「子育てを『まちで』プラスに」を合言葉にしている。いまの時代、子を産み育てる親たちは孤立しがち。それを地域の人たちが声をかけ、支えていこうという取り組みだ。 2012年に任意団体から始め、翌年NPO法人化。誰もが気楽
-
地方から変えていく
2023/8/27 02:01 937文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 自民党の「身寄りのない高齢者(おひとりさま)等の身元保証等を考える勉強会」(会長=上川陽子・元法相)が8月7日、岸田文雄首相に提言書を手渡し、首相も前向きに取り組む考えを示した。頼れる家族がいないと、人生最終盤は困難に直面する。「知られざる生活危機」がようやく、
-
-
供養の席で「雲もなか」
2023/8/20 02:01 945文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 赤ちゃんの手にちょうど乗るくらいの小さな菓子を、半分、口に入れる。かむとシャリと皮が裂け、ほんのりゆっくり甘みが口の中に広がった。 この和菓子、名前を「雲もなか」という。体験型手づくりもなか。白あんに、赤、黄、緑、青、紫、茶、黒と7色の「色こな」で自分好みの色を
-
僧侶・古溪の「幸福論」
2023/8/13 02:05 961文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 群馬県安中市にある雲門寺の僧侶、古溪光大(ふるたにこうだい)さん(28)に会った。動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)で仏教について語り、般若心経の現代語訳をラップにして動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で流し人気だ。彼が初めての本を書い
-
楽しいから記憶は残る
2023/8/6 02:00 961文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 一般社団法人「記憶工学研究所」(池田義博所長)が、筑波大学付属視覚特別支援学校(東京都文京区)に「生徒が(東洋医学の)ツボの名称を覚えるための教材」を贈呈するという。どんな教材なのか。そもそも目の不自由な人は、どうやってものを覚えるのだろう。知りたくて7月、贈呈
-
「みとり」をする寺へ
2023/7/30 02:00 959文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> タイトルにひかれて「100年後も信頼される寺社の運営ガイドブック」を手に取った。財務関連の説明をする第1章はいいとして、これからの寺のあり方について書かれた第2章は興味深かった。離れて住む子供世代に代わり、寺社は「親戚になれる」とあった。 作製したのは行政書士で
-
祈りと記録の場として
2023/7/23 02:00 929文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 前回、大阪北摂霊園で始まった「ドイツ型樹木葬墓地」を紹介した。監修した上田裕文・北海道大准教授はいま、ドイツの大学で客員教授をしている。オンラインで話を聞いた。 ドイツの樹木葬は森林保護が大前提で、その資金集めのために森を埋葬地にした。2001年に初めてそのスタ
-
-
100年後、墓は森に
2023/7/16 02:01 952文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 前回触れた大阪・能勢妙見山の「循環葬」を見たあと、大阪北摂霊園に足を延ばした。車で20分ほど。ここに「ドイツ型樹木葬墓地」があるという。 総面積98・3ヘクタールの広大な霊園である。千里ニュータウンの新住民などの墓地需要に対応するため1973年に開園した。人口増
-
「循環葬」という選択肢
2023/7/9 02:01 948文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 心配した雨は降らなかった。薄日の中、森の緑の小道をゆっくり歩く。スギやヒノキ、幹にイボ状のとげがあるカラスザンショウの古木もある。湿った地面の感触が心地いい。 6月下旬、JR伊丹駅からレンタカーで1時間ほどかけて、大阪府北部の妙見山山頂にたどりついた。能勢妙見山
-
野党は何しているのか
2023/7/2 02:01 942文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 「身寄りのない高齢者(おひとりさま)等の身元保証等を考える勉強会」が6月15日午後、参院議員会館の会議室で開催された。人生の最終盤に家族がいないと困難な状況になる。費用の支払いや死後の手続きなどを気にして入院・施設入所を断られるのだ。この問題に与党・自民党の国会
-
「身寄りなし問題」動く
2023/6/25 02:01 914文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 「身寄りなし問題」、もしくは「高齢おひとりさま問題」といえばいいのか。日本では人生の最終盤に家族がいないと、ひどく困難な状況に陥ってしまう。そうした課題の解消に向けて、政府や国会が動き出し始めた。 家族が身元保証しないと、病院や施設は受け入れを嫌がる。亡くなった
-
三十三回忌の同期たち
2023/6/18 02:00 932文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> なんと形容したらいいのだろう。6月3日午後、私は長崎県雲仙・普賢岳を仰ぎ見ていた。1991年のこの日、同期入社の石津勉君が取材中、この場所で命を落とした。三十三回忌に当たり、同期12人が集まった。眼前にそそり立つこの活火山を見ながら、さまざまな思いがわき上がる。
-
-
「引率係」が学んだこと
2023/6/11 02:01 924文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 九州で1人暮らしをする母がひ孫と初対面したことを前回取り上げた。ひ孫との距離がつかめない感じを母は「ぴんとこない」と言った。このほかにも味わい深い表現をしている。たとえば今回の私の役回りを「引率係」とした。 ひ孫を連れていくと電話で告げたとき、「引率係がいちばん
-
母とひ孫の「初対面」記
2023/6/4 02:03 942文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 親子でやっている無料通信アプリ「LINE(ライン)」に、長女が「息子を連れておばあちゃんに会いに行きたい」と書いてきた。すると次女も「私も行く!」と同調。九州で1人暮らしをする母に都合を聞いたら「私はいつも予定はなかけん、どうぞ」と。こうして母とひ孫2人の初対面
-
マムシ流「人生の極意」
2023/5/28 02:00 938文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 毒蝮三太夫さん(87)が出したばかりの「70歳からの人生相談」(文春新書)が気に入って、直接話を聞く機会をいただいた。九州で1人暮らしする母とほぼ同じ年。対面してすぐ、「それでお母さん、元気なの?」と聞かれて、いきなり親に関する私の悩み相談になった。「この年にな
-
「好き」貫いた牧野の墓
2023/5/21 02:01 937文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> NHKの連続テレビ小説はほとんど見てこなかったが、いまの「らんまん」は毎朝見ている。「お墓博士」の長江曜子・聖徳大教授と、東京・谷中霊園に隣接する天王寺(東京都台東区)にある牧野富太郎(1862~1957年)の墓に行ってきたから。調べるにつれ、この世界的な植物学
-
「自宅で最期」を考える
2023/5/14 02:00 957文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> ある在宅医の講演で示された見慣れたグラフを見て、「異変」を実感した。 高齢者医療を考えるときよく使われる「死亡場所の経年変化」の折れ線グラフ。日本人は自宅で亡くなるか病院か。1951年は「自宅」が8割を超えていた。これが年を追うごとに直線的に減少し、対照的に「病
-