
毎日新聞デジタルの「SUNDAY LIBRARY」ページです。「サンデー毎日」の書評「SUNDAY LIBRARY」の記事を掲載します。
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著者インタビュー 村田沙耶香『信仰』
2022/7/5 18:41 1433文字今の世界の仕組みから弾かれてしまう人を描きたい◆『信仰』村田沙耶香・著(文藝春秋/税込み1320円) 芥川賞作家・村田沙耶香さんの最新作は六つの短編小説と二つのエッセイで構成されている。 表題作の「信仰」では、「現実」こそが真実の世界と信じる主人公の永岡が、石毛という男からカルト商法に誘われる。彼
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開沼博・評『デマの影響力 なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』シナン・アラル/著
2022/7/5 18:38 1544文字抗えない変化の波の中で解のない問いに向き合う◆『デマの影響力 なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』シナン・アラル/著 夏目大/訳(ダイヤモンド社/税込み2420円) 来年、関東大震災から100年の年になる。関東大震災は地震とその後の火災等による被害の拡大によって、東京、その周辺地域に
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木村 衣有子・評『おいしい文藝 おいしい沖縄』池澤夏樹、他
2022/7/5 18:34 916文字食への愛着は地元愛でははかれない◆『おいしい文藝 おいしい沖縄』池澤夏樹、他、著(河出書房新社/税込み1782円) 沖縄を舞台にした食エッセイ選集。収録された24編のうち、地元に根を張っているといえる人による作品は半分に満たないのはやはり観光地であるゆえん。通り過ぎる旅人の書くものにはたしかに新鮮味
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武田 砂鉄・評『人薬』山本昌知、想田和弘・著
2022/7/5 18:31 933文字解決を急がずに関心を持って話を聞く◆『人薬(ひとぐすり) 精神科医と映画監督の対話』山本昌知、想田和弘・著(藤原書店/税込み2200円) 「精神病院の鍵は誰が締めているのだろうか」との疑問を持ち、閉鎖病棟の鍵を開ける取り組みを進めた精神科医・山本昌知。その山本をとらえたドキュメンタリー作品『精神』『
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岡崎 武志・評『雨滴は続く』『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』ほか
2022/7/5 18:25 1807文字今週の新刊◆『雨滴は続く』西村賢太・著(文藝春秋/税込み2200円) 今年2月、西村賢太の訃報には驚いた。54歳はまだ若く、2010年下期『苦役列車』で芥川賞を受賞した記憶も新しい。自伝的長編『雨滴は続く』は未完の最後の作品となった。1000枚の大作。 同人雑誌に発表した小説が文芸誌『文豪界』に転載
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白河桃子・評『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』『K―POP時代を航海するコンサート演出記』
2022/7/5 18:22 1552文字BTSが最強のチームなのは弱さを見せることができるから◆『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』ダニエル・コイル/著、楠木建/監訳、桜田直美/訳(かんき出版/税込み1760円)◆『K―POP時代を航海するコンサート演出記』キム・サンウク/著(小学館/税込み2200円) BTSが「
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著者インタビュー Uru『セレナーデ』
2022/6/28 18:25 1482文字原稿の間にはさまっていた消しゴムのカスが愛おしかった◆『セレナーデ』Uru・著(角川書店/税込み1760円) シンガー・ソングライターとしてデビューした6回目の記念日、初の著書を出版した。「本を読むことが好きで書店にはよく通っているんですけど、ずっと眺めてきた書店の棚にわたしの名前の本が置かれるとい
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工藤 美代子・評『狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅』中澤雄大・著
2022/6/28 18:20 1549文字ひたすら書いて生きた作家が書かれることによって蘇る◆『狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅』中澤雄大・著(中央公論新社/税込み4180円) 佐藤泰志(やすし)の名前を知っている人は少ないかもしれない。しかし、一部の文学関係者の間では高く評価され、彼の作品の愛読者は多い。映像化もされ、現代に至るまで読み継がれて
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本郷 和人・評『江戸藩邸へようこそ』久住祐一郎・著
2022/6/28 18:15 905文字記されることのなかった歴史の「日常」を知る◆『江戸藩邸へようこそ』久住祐一郎・著(インターナショナル新書/税込み968円) 本書は三河吉田藩(知恵伊豆こと、松平信綱の子孫が藩主を務める譜代の藩)の日常を、「江戸日記」によりながら復元する、すばらしい試みである。江戸藩邸の観察がとくに詳細だが、国元であ
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三浦 天紗子・評『死神を祀る』大石大・著
2022/6/28 18:10 909文字命を全うすることの尊さを教えてくれる◆『死神を祀(まつ)る』大石大・著(双葉社/税込み1980円) 商店街は寂れ、人口流出もひどい。〈街全体が、死に向かって着実に歩みを進めているように〉見える、東北の架空の地〈はるみ市〉。その街にある知る人ぞ知る神社に、30日間欠かさず甘い供物を携えて参拝すると、恍
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岡崎 武志・評『沖縄の街で暮らして教わったたくさんのことがら』『渚の螢火』ほか
2022/6/28 18:05 1851文字今週の新刊◆『沖縄の街で暮らして教わったたくさんのことがら 「内地」との二拠点生活日記』藤井誠二・著(論創社/税込み2200円) 今年は沖縄の本土復帰50年。それに合わせ、新聞やテレビが特集を組み、関連書籍が出版されている。我々本土にいる者たちがいかに沖縄について無知、無関心であるかと気づかされるの
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村松 友視・評『大工道具の歴史』『「猪木」』
2022/6/28 18:00 1547文字自身の為すべき役割を静かに貫き通す矜持と美学◆『大工道具の歴史』村松貞次郎・著(岩波新書/税込み1056円)◆『「猪木」』原悦生・著(辰巳出版/税込み2530円) 子供の頃、普請場で働く大工さんが使う、不思議な形をした墨壺に強い興味をもったことがあった。その墨壺に糸をくぐらせてピンと張り、パチンと弾
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著者インタビュー 倉持よつば『桃太郎は嫁探しに行ったのか?』
2022/6/21 19:59 1462文字人の生き方に影響するような力が物語にはあると学びました◆『桃太郎は嫁探しに行ったのか?』倉持よつば・著(新日本出版社/税込み1760円) 鬼退治をして宝物をもらって帰った、というのが一般的な桃太郎話。しかしある絵本では、桃太郎が「たからものはいらん。おひめさまをかえせ」と言い、連れ帰った姫と結婚して
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川本 三郎・評『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』莫理斯(トレヴァー・モリス)/著
2022/6/21 19:54 1538文字西洋列強との複雑な関係を背景に科学的捜査に努める名探偵◆『辮髪(べんぱつ)のシャーロック・ホームズ 神探福邇(しんたんフーアル)の事件簿』 莫理斯(トレヴァー・モリス)/著 舩山むつみ/訳(文藝春秋/税込み2200円) ホームズがロンドンで活躍していた十九世紀末、香港にはもう一人のホームズがいた!
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木村 衣有子・評『ロシア点描』小泉悠・著
2022/6/21 19:48 913文字生活の様子を知ると決して遠い国ではない◆『ロシア点描』小泉悠・著(PHP研究所/税込み1760円) モスクワとサンクトペテルブルクでは異なる地下鉄の車両のドアが閉まるときの音、ソ連時代に集合住宅に潜んでいたKGBの所業、メドベージェフ元大統領はピンク・フロイドがお好き。そういった微に入り細を穿(うが
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武田 砂鉄・評『世界を手で見る、耳で見る』堀越喜晴・著
2022/6/21 19:44 935文字方法が異なるだけで把握する世界は同じ◆『世界を手で見る、耳で見る』堀越喜晴・著(毎日新聞出版/税込み1760円) 2歳半までに網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)により両眼を摘出した著者が……という紹介をしてしまうのだが、果たしてこれでいいのかと悩む。 毎日新聞社が発刊を続けている「点字毎日」に掲
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岡崎 武志・評『今日は、これをしました』『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ほか
2022/6/21 19:40 1835文字今週の新刊◆『今日は、これをしました』群ようこ・著(集英社/税込み1430円) 1980年代後半からの群ようこの人気はすごかった。文庫の夏のフェアを「群さんだけで組んだら売り上げがすごいことに」と漏らした編集者がいた。小説でも『かもめ食堂』や数々のシリーズを持ち、息の長い作家となった。 『今日は、こ
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大平 一枝・評『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』『エーリッヒ・ケストナー こわれた時代』
2022/6/21 19:38 1529文字ケストナーとナチスと菅田将暉と Wi―Fiをつなぐ風刺の威力◆『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』岡本雄矢・著(幻冬舎/税込み1650円)◆『エーリッヒ・ケストナー こわれた時代』クラウス・コルドン/著(偕成社/税込み2750円)「連ドラが菅田将暉のアップで終わりCMが菅田将暉で
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著者インタビュー 有吉玉青『ルコネサンス』
2022/6/7 18:25 1445文字「オヤジ」と呼べた瞬間、世界の色が変わったように感じた◆『ルコネサンス』有吉玉青・著(集英社/税込み2035円)「いつか書きたいと思っていた父と娘の物語を、完成させることができました」 本作の主人公で、母と祖母を亡くした大学院生の中条珠絵(ちゅうじょう・たまえ)は、伯父から二十数年会っていなかった父
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平松 洋子・評『中野ブロードウェイ物語 「日常」の向こう側へ』長谷川晶一・著
2022/6/7 18:20 1536文字新奇性と自由と混沌。“蠱惑的な生き物”を深掘りする◆『中野ブロードウェイ物語 「日常」の向こう側へ』長谷川晶一・著(亜紀書房/税込み1870円) 東京を横切るオレンジ色の電車・中央線、その東西の中間あたり。JR中野駅北口を出て、細長い中野サンモール商店街に入ると、参道を歩く気分になる。待ち受けている
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