
毎日新聞デジタルの「SUNDAY LIBRARY」ページです。「サンデー毎日」の書評「SUNDAY LIBRARY」の記事を掲載します。
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著者インタビュー 谷川俊太郎『となりの谷川俊太郎』
2022/9/27 19:11 1464文字悪口でも、何か言ってもらえると作者としては手ごたえを感じます◆『となりの谷川俊太郎』谷川俊太郎・著(ポエムピース/税込み1599円)「自分が書いた詩、とくに若い頃の作品にはつねに不満があるんです。いまならもっとうまく書けるのにと思うこともある」 90歳を迎えた谷川俊太郎さんは、本書を前にそう話す。デ
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平松 洋子・評『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』ジェフ・フレッチャー/著
2022/9/27 19:07 1489文字既存の基準では測れないパイオニアの覚醒と進化の記録◆『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』ジェフ・フレッチャー/著 タカ大丸/訳(徳間書店/税込み1980円) アメリカン・リーグMVPはニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジか、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平か、議
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本郷 和人・評『合戦で読む戦国史』伊東潤・著
2022/9/27 19:04 908文字実証を追求しつつ物語を紡ぐ歴史家◆『合戦で読む戦国史』伊東潤・著(幻冬舎新書/税込み1100円) 明治前期の日本史学会において、日本史学のみならず天下の碩学(せきがく)として知られた重野安繹(やすつぐ)と川田剛(たけし)とのあいだに、歴史認識の方法に関する大議論が起きた。重野は実証を徹底した「科学的
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三浦 天紗子・評『葬儀!』ジュリエット・カズ/著
2022/9/27 19:02 932文字故人への慈しみや敬意の表れとしての儀式◆『葬儀!』ジュリエット・カズ/著 吉田良子/訳(柏書房/税込み1980円) 父を送ったとき、ごく簡易な仏式を選んだ。父からこうしてほしいという要望も聞いていなかったし、高齢になった親族の負担やコロナ禍を考えると、順当な判断だったと思うけれど、一方で「これでよか
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岡崎 武志・評『ウクライナにいたら戦争が始まった』『平成ロードショー』ほか
2022/9/27 18:57 1803文字今週の新刊◆『ウクライナにいたら戦争が始まった』松岡圭祐・著(角川書店/税込み1760円) 松岡圭祐『ウクライナにいたら戦争が始まった』は、まさにその通りの書き下ろし長編小説。6歳で東日本大震災を体験した「わたし」は17歳。中1の妹、母の3人で3カ月、父の赴任先へ私費留学することに。それがウクライナ
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上原 隆・評『レヴィンソン&リンク劇場 突然の奈落』『沈黙のセールスマン』
2022/9/27 18:54 1540文字騙されたり驚いたりする最後の一行をひねり出す醍醐味◆『レヴィンソン&リンク劇場 突然の奈落』リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク/著 後藤安彦ほか/訳(扶桑社ミステリー/税込み1045円)◆『沈黙のセールスマン』マイクル・Z・リューイン/著 石田善彦/訳(ハヤカワ・ミステリ文庫/税込み158
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著者インタビュー 滝口悠生『水平線』
2022/9/13 20:12 1488文字◇語られなかった声を垣間見せるのが小説の仕事であり、役割かなと思う◆『水平線』滝口悠生・著(新潮社/税込み2750円) 硫黄島における日本軍と米軍との激戦は有名だが、当時、島に住んでいた家族が引き裂かれた歴史は、どれほど知られているだろうか。千人あまりいた島民は内地へ強制疎開させられた。高齢者を除
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開沼博・評『マスメディアとは何か 「影響力」の正体』稲増一憲・著
2022/9/13 20:05 1514文字凡庸な結論がむしろラディカルに見える現在地から未来を模索する◆『マスメディアとは何か 「影響力」の正体』稲増一憲・著(中公新書/968円)税込み 地味ながらとがった各地の飲食店を主人公である中年男性が一人で食べ歩く姿を描く「孤独のグルメ」が、テレビドラマとして放送されるようになり10年がたつ。元々は
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木村 衣有子・評『ハラヘリ読書』宮田ナノ・著
2022/9/13 20:00 959文字懐かしい食の思い出が瑞々しくよみがえる◆『ハラヘリ読書』宮田ナノ・著(KADOKAWA/税込み1265円) イラストレーターの宮田ナノさんは、祖母譲りの渋好みで、北関東の出身だそう。そのふたつの要素は私とぴったり重なる。とはいえ宮田さんは1995年生まれで、私とは20歳の歳(とし)の差があるけれど、
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武田 砂鉄・評『アイドルについて葛藤しながら考えてみた』香月孝史ほか/編著
2022/9/13 19:53 922文字その主体性を奪っているのは誰か◆『アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティ/〈推し〉』香月孝史ほか/編著(青弓社/税込み1760円) 10年ほど前、男性との交際が発覚した女性アイドルが丸坊主になって謝罪させられた映像が忘れられない。そもそも恋愛禁止というルールが人権侵害だと
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岡崎 武志・評『ぼくらに噓がひとつだけ』『野の書物』ほか
2022/9/13 19:50 1816文字今週の新刊◆『ぼくらに噓がひとつだけ』綾崎隼・著(文藝春秋/税込み1760円) 藤井聡太という天才棋士の出現で情報量が増え、将棋の世界に明るくなった。初の女性棋士誕生が期待される里見香奈女流五冠も話題に。実力の差がこれほどはっきりする世界はほかにない将棋の世界を舞台としたミステリが出た。 綾崎隼『ぼ
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白河桃子・評『ストリート系都市2022』『Kawaii(カワイイ)経営戦略』
2022/9/13 19:48 1507文字生活や価値観が揺さぶられる中で何が幸せなのかを改めて考える◆『ストリート系都市2022』福田淳・著(高陵社書店/税込み1760円)◆『Kawaii(カワイイ)経営戦略』髙木健一、小巻亜矢両・著(日本経済新聞出版/税込み2200円) 新型コロナと突然起きた21世紀の戦争で、多くの国で多くの人の価値観が
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著者インタビュー 万城目学『あの子とQ』
2022/9/6 18:25 1396文字主人公の変化に読者がついていけるよう、その〝速度〟には気を使っている◆『あの子とQ』万城目学・著(新潮社/税込み1760円)「日常の中に非日常が入り込んでいる世界を描くのが好きなんです」 新作の主人公・弓子の一家は吸血鬼だが、血を吸う習性を封印して人間社会に溶け込んでいる。彼らには「脱・吸血鬼化」の
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工藤 美代子・評『恋ふらむ鳥は』澤田瞳子・著
2022/9/6 18:20 1601文字権謀術策、骨肉の争いの中で冷静で強靱な自己をもつ女性◆『恋(こ)ふらむ鳥(とり)は』澤田瞳子・著(毎日新聞出版/税込み2200円) 歴史上の人物だが、なぜかとても気になる女性がいる。例えば、ヴィクトリア女王とか光明皇后とか、本書の主人公の額田王(ぬかたのおおきみ)とかだ。実像はよくわからない。でも生
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本郷 和人・評『幻の戦争マンガ』矢口高雄、バロン吉元ほか著
2022/9/6 18:15 932文字戦争とは、人の命とは 今だからこそ考えたい◆『幻の戦争マンガ』矢口高雄、バロン吉元ほか著(祥伝社新書/税込み1485円) 先日NHKの「所さん!事件ですよ」という番組に関わったが、番組取材班が発掘してきたデータフィルムに戦慄(せんりつ)した。太平洋戦中のアメリカのもので、どうしたら日本の家屋を効率よ
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三浦 天紗子・評『健康寿命を延ばす「選択」』浅野拓・著
2022/9/6 18:10 918文字生存率でははかれない患者の価値観を基準に◆『健康寿命を延ばす「選択」』浅野拓・著(KADOKAWA/税込み1760円) 健康に関心がある人ほど「良さそう」という健康情報に飛びつき、振り回されてはいないだろうか。著者が繰り返し強調するのは、リスクの見える化と、そこから導き出す合理的な選択の大切さ。たと
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岡崎 武志・評『岡村昭彦を探して ベトナム戦争を報じた国際報道写真家の光と影』『日本居酒屋遺産 東日本編』ほか
2022/9/6 18:05 1839文字今週の新刊◆『岡村昭彦を探して ベトナム戦争を報じた国際報道写真家の光と影』松本直子・著(紀伊國屋書店/2750円)税込み 岡村昭彦(1929~85)は、1964年ベトナム戦争を取材、その報道写真はグラフ誌の世界的権威『LIFE』で特集され時代の寵児(ちょうじ)に。しかし『岡村昭彦を探して ベトナム
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村松 友視・評『鶴見俊輔、詩を語る』『瓢簞から人生』
2022/9/6 18:00 1478文字繊細な仕事ぶりに感服するとともに絶妙な“かろみ”に心地よく酔う◆『鶴見俊輔、詩を語る』谷川俊太郎、正津勉・著(作品社/税込み2420円)◆『瓢簞から人生』夏井いつき・著(小学館/税込み1485円) 作家になりたての頃、私は京都で催される、「京都」をテーマとするシンポジウムへの出席を依頼され、企画者の
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川本 三郎・評『木々、坂に立つ』黄順元/著
2022/8/30 21:31 1446文字生き残った者たちは「傷」を背負って生きていく◆『木々、坂に立つ』黄順元/著 白川豊/訳(書肆侃侃房/税込み2640円) 「今度の戦争で若者たちのうち何らかの意味で傷つかなかった人がいたでしょうか」。小説の最後で、戦争によって恋人を失った女性がいう。この言葉が重い。 「今度の戦争」とは朝鮮戦争のこと。
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木村 衣有子・評『お酒はこれからどうなるか』都留康・著
2022/8/30 21:19 948文字過半数が飲まない現在 どうつくりどう商うか◆『お酒はこれからどうなるか 新規参入者の挑戦から消費の多様化まで』都留康・著(平凡社新書/税込み990円) 日本での、お酒の「今」が手に取るように分かる本。 近年、都市部ではなく、産地として蔵が集約されてもいない土地にて新しく立ち上げられたお酒の醸造所で、
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