時代は変わっても、変わらず温かいのが古里の言葉。方言は地域の大切な文化。九州でも独特と言われる大分の言葉をご紹介します。
-
いぬる(動詞) 古語のナ行変格活用 /大分
2023/3/25 05:18 386文字◇いぬる(動詞) 帰る。去る 「よい、くろうなるき、はよ、いぬるど」(おい、暗くなるから、早く帰るぞ)とか、「なんかえ、もう、いんじしもうたんか」(なんだよ、もう帰ってしまったのか)などと使う。 語釈に「帰る」と書いたが、家に帰り着くことではなく、家に向けて出先を退去することを言う。 古語辞典にも
-
ええらしい(形容詞) 元は「愛らしい」から /大分
2023/3/18 05:11 410文字◇ええらしい(形容詞) 可愛らしい 県立竹田高校時代の恩師である日田市在住の宇野公是さんからのリクエストにお応えして取り上げる。 『ひたの方言』(日田方言研究会/1993年)には「えらしい」の形で載るが、その他の県内の各種方言集には「ええらしい」の形で載っている。「なんちゅう、ええらしい子じゃろう
-
ぎり(名詞) 県内には「さら」「うず」も /大分
2023/3/11 05:52 384文字◇ぎり(名詞) つむじ 頭髪が渦を巻く部分を言う。「おまや、ぎりがみっつもあるのお」(おまえは、つむじが三つもあるねえ)などと使う。 『日本方言大辞典』によると、静岡、三重、奈良、鳥取、島根、岡山、香川、愛媛県の一部と新潟、広島県で使う。九州では唯一、大分県東部で使う。私の知る限りでは竹田、豊後大
-
ざった(助動詞) 古語の助動詞「ず」から /大分
2023/3/4 05:07 405文字◇ざった(助動詞) ~しなかった 「言うてん、しよいねえき、言わざった」(言っても仕方ないから言わなかった)とか、「書かざった」(書かなかった)、「せざった」(しなかった)などと使う。 『日本方言大辞典』は「活用語の未然形に付いて、打ち消しの過去を示す」と説明している。元は古語の助動詞「ず」だろう
-
ふうがわりい(句) 大分独自の表現か /大分
2023/2/25 05:20 389文字◇ふうがわりい(句) 機嫌が悪い 「嫁さんが、ふうがわるうじ、昨日かり、くちゅうきかん」(嫁さんが機嫌が悪くて、昨日から口をきかない)などと使う。 『忘れなんなえ大分弁』(阿南光彦著/郁朋社/2011年)は「フーガワリー」を「機嫌が悪い」と説明し、さらに「フーガイーという表現はない」と指摘している
-
-
ふ(名詞) 「まん」も同義 /大分
2023/2/18 05:36 396文字◇ふ(名詞) 運。巡り合わせ 「おおごとにならんじ、ふが良かったのお」(大事にならなくて運が良かったなあ)などと使う。 『日本方言大辞典』によると、使用地域に群馬、千葉、岡山、宮崎県の一部のほか島根、広島、山口、徳島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島県がある。 「運が良い」との意味で「ふが良い
-
りごう(名詞) 西日本各地で使用 /大分
2023/2/11 05:28 403文字◇りごう(名詞) 狭い道での車のすれ違い 広辞苑の「離合」の項には語釈の2番目に「列車や自動車がいきちがうこと」とあるので、一概に方言とは言えないのかもしれない。そのせいか『日本方言大辞典』には見当たらないし、共通語引きの『日本方言辞典』で「すれ違い」「離合」を引いても見つからない。 辞書にあって
-
おとんぼ(名詞) 県南を中心に使用か /大分
2023/2/4 05:20 404文字◇おとんぼ(名詞) 末っ子 大分市の河村トシさん(83)から「使用地域を知りたい」との問い合わせをいただいた。「甘やかされてわがままに育った末っ子といった意味を含んでいるようです」と言う。 『日本方言大辞典』で「おと」を引くと、語釈の5番目に「末子」がある。「おとんぼ」の形は長野、三重、京都、大阪
-
げさきい(形容詞) 県東部や南部で使用 /大分
2023/1/21 05:28 398文字◇げさきい(形容詞) 下品である 「あげな、げさきいおとこはおらん」(あんなに下品な男はいない)などと使う。また、人の言動に限らず、並外れて派手な身なりなどについても使う。 おそらく「下作」から来ているのだろう。『日本方言大辞典』にも「下作」の字が使われている。それによると、「げさくい」の形で和歌
-
おる(動詞) 飲み物や食べ物に使用 /大分
2023/1/14 05:43 392文字◇おる(動詞) 保存がきく 「ジャガイモは土のついたまんまんほうが、なごうおるんで」(ジャガイモは土が付いたままの方が長く腐らないんだよ)とか、「さみいき、冷蔵庫に入れんでん、しばらくはおるわ」(寒いから冷蔵庫に入れなくてもしばらくはもつよ)などと、主に飲食物について使う。 県内の方言に関する各種
-
-
ぼんじい(名詞) 土地の境界を示した /大分
2022/12/17 05:54 398文字◇ぼんじい(名詞) ムクゲ 『日本方言大辞典』には「ぼんじー」があり、「植物、むくげ(木槿)」と説明されている。使用地域は大分県だけで、「ぼんじぐ」の形を宮崎県児湯郡で使うという。 どこから来た言葉なのか、前から不思議だった。その謎に迫った人がいる。豊後大野市緒方町に住む戸次伊津子さん(87)だ。
-
はたかる(動詞) 古語では濁らなかった /大分
2022/12/10 05:30 392文字◇はたかる(動詞) 足を広げる 「船い揺れち、はたからんと立っちょられん」(船が揺れるので足を広げないと立っていられない)といった使い方をする。 広辞苑には「はだかる」(開かる)があり、語釈の2番目に「手足などを広げて立つ」と説明されている。「立ちはだかる」の「はだかる」だ。 また、「古くは清音」
-
じいしい(形容詞) 元は「凜々しい」 /大分
2022/12/3 05:58 402文字◇じいしい(形容詞) 元気だ。達者だ 「食うしゃ、じいしい。食わんしゃ、じいしゅうねえ」(食べる人は達者だ。食べない人は達者ではない)と使われる。 『日本方言大辞典』で「じいしい」を調べると、意外なことに「りりしー」を見よとある。「きりっとして勇ましい」という意味を持つ「凜々(りり)しい」から来た
-
ちょっかまけ(副詞) 否定の言葉を伴って /大分
2022/11/26 05:42 401文字◇ちょっかまけ(副詞) ちょっとやそっとでは 「としゅうとったら、体い言うこつうきかんじ、ちょっかまけ、間にあやせん」(年を取ったら体が言うことをきかず、ちょっとやそっとでは間に合うものではない)。豊後大野市清川町に住む母(86)が口癖のように言う。 『日本方言大辞典』にはない。県内の各種方言辞典
-
じぶくる(動詞) 飲んでも飲まなくても /大分
2022/11/19 05:32 411文字◇じぶくる(動詞) 酔って繰り言を言う 臼杵市野津町清水原(そうずばる)の神野(かみの)譲二さん(69)から「知っていますか」とのはがきをいただいた。「私の地区で、特に酒を飲み過ぎてしつこく繰り言を言い始めた時の様子を言います」とのことだった。 初耳だったので早速調べたが、県内の各種方言集にはまっ
-
-
てにまめらん(句) 豊後大野、日田市で使用 /大分
2022/11/12 05:31 401文字◇てにまめらん(句) うまくつまめない 実家の畑で小豆を収穫した。1斗ほどもある小豆の中から、虫食いや変色した豆を取り除くのは根気のいる作業だ。小さくてつるつるする豆を指先でうまくつまめない。母が「小豆はてにまめらん」(小豆は手にかからない)と言った。 「まめらん」は動詞「まめる」の未然形。普段は
-
いちべ(副詞) 「等倍」でも「2倍」でもなく /大分
2022/11/5 05:17 390文字◇いちべ(副詞) 一層。ますます 「いちべ、いとうなったがえ」(ますます痛くなったよ)などと使う。 「一倍」(いちばい)が変化したもので、「いちべえ」と伸ばして言うこともある。 『日本方言大辞典』によると、「いちばい」の形を熊本県下益城郡で使う。「いちべ」の形の使用地域としては長崎県壱岐があるだけ
-
つう(名詞) 県内各地で使用 /大分
2022/10/22 05:15 403文字◇つう(名詞) かさぶた 子どものころ、外で遊ぶのが好きだったので、切り傷や擦り傷が絶えなかった。その傷跡にできるかさぶたをはがして血がにじむということがあった。「つうは、はがしなんなえ」(かさぶたははがさないでね)と言われたが、傷の治りかけはかゆくなって、ついかきむしってしまった。 『日本方言大
-
まへび(名詞) 蛇の中の蛇 /大分
2022/10/15 05:15 395文字◇まへび(名詞) マムシ 先日、私の従兄(いとこ)が畑で草むしり中に右手指をマムシにかまれた。私が「従兄がまへびにかまれました」と119番通報をした。「マムシと言い直すべきかな」と思ったが、ちゃんと通じた。 『日本方言大辞典』は、「まへび」に「真蛇」の字を使用している。確かに「蛇の中の蛇」という印
-
とぶ(動詞) 連用形は「つうだ」 /大分
2022/10/8 05:29 390文字◇とぶ(動詞) 走る 運動会の花形といえば、やはりリレーで、応援席は大いに盛り上がる。「しゃんととべやあ」(しっかり走れよお)などと声援が飛んだものだ。 古語辞典には「飛ぶ」の項に「駆ける。速く走る」とある。『日本方言大辞典』によると、東北から九州までの広い地域で使われる言葉だ。 連用形は共通語と
-