特集 ゴーン被告逃亡

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ゴーン被告逃亡

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が2019年にレバノンに逃亡。なぜ逃亡できたのか。今後の裁判の行方は。

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 日産自動車の資金を私的に流用したとする会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産の前会長、カルロス・ゴーン被告が2019年12月29日、日本を出国し、国籍を持つレバノンに入国した。

日本メディアの代表取材に応じるカルロス・ゴーン被告=レバノン・ベイルートで2020年1月10日、代表撮影

 レバノン外務省は31日に声明を発表し、ゴーン前会長が「30日に入国した」と公式に認めた。入国は「合法的だった」と強調し、レバノン政府の関与を否定している。声明は日本との間で「犯罪人引き渡し条約」を結んでいないことにも言及しており、今後、前会長の身柄引き渡しには応じない姿勢も示したとみられる。

「追放キャンペーンの犠牲」

 ゴーン前会長は2020年1月8日、ベイルートで記者会見し、西川広人前社長らの実名を挙げながら、自身の逮捕を「数人による組織的な(追放)キャンペーンの犠牲となった」などと、日産の陰謀だったと主張した。日本の司法制度についても「弁護士の立ち会いも無く1日8時間取り調べを受けた。国連の基準にも反する」と厳しく批判した。ロイター通信が伝えた。

被告はどんな罪に問われた

 ゴーン前会長は10~17年度、有価証券報告書に自身の役員報酬計約90億円を記載しなかったとして金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で起訴された。また、私的な投資契約の損失を日産に付け替えた▽サウジアラビアとオマーンの知人にそれぞれ日産の資金を送金して会社に損害を与えた――とする会社法違反(特別背任)にも問われている。

元グリーンベレー隊員を逮捕

 ゴーン前会長の国外逃亡を手助けしたとして、米当局は20年5月、米国籍で元米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」隊員のマイケル・テイラー容疑者と息子のピーター・テイラー容疑者を逮捕した。東京地検は1月、犯人隠避などの容疑で逮捕状を取得。身柄引き渡しのために逮捕を求めていた。司法当局は、2人は逃亡の「エキスパートだ」と強調している。

まるで映画のような逃亡劇

 司法当局の文書によると、ゴーン前会長が逃亡したのは19年12月29日。ピーター容疑者は、前会長が逃亡する前の19年7月、8月、12月初旬の少なくとも3回の来日で、前会長とは7回面会していた。

 ゴーン前会長は29日、新幹線などを乗り継ぎ大阪へ移動。大型の黒い箱の一つに潜み、マイケル容疑者らが乗ってきたプライベートジェットに積み込まれ、関空を離陸した。

元代表取締役の公判は続く

 ゴーン前会長の役員報酬約91億円を有価証券報告書に記載しなかったとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に問われた日産元代表取締役、グレッグ・ケリー被告の公判は、東京地裁で開かれている。

日本の刑事司法に改めて注目

 ゴーン前会長の国外逃亡により、日本の刑事司法が海外の注目を集めた。被告の主張には的外れな点や誇張が多いが、取り調べや身柄拘束のあり方などについて、課題を抱えているのは事実だ。

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