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悼む 音楽写真家・木之下晃さん=1月12日死去・78歳

木之下晃さん=山本修司撮影

一瞬の静寂も写し取り 木之下晃(きのした・あきら)さん=虚血性心不全のため、1月12日死去・78歳

 「ぼくは撮るばっかりで、自分の写真が2枚しかないんですよ。絶対送ってね」。3年前の8月。私のカメラに向かって、世界的な音楽写真家はくつろいだ表情を見せてくれた。それが左の写真だ。

     このとき、最も親交の深かった指揮者、山田一雄さんの生誕100年を迎え、その生涯をたどる写真展を横浜みなとみらいホールで開いていた。鬼気迫る指揮ぶりに加え、妻とじゃれ合う無邪気な一面も切り取り、被写体との深い友情まで写し込む。木之下さんの写真はどれもそうだ。

     カール・ベーム、カルロス・クライバー、マリア・カラス、ロストロポービチ……。世界中の指揮者や歌手、演奏家の写真を半世紀にわたって撮り続けた。フィルムは3万本を超える。あの帝王・カラヤンからは「専属のカメラマンに」と誘われたという。「カラヤンを撮るのが夢でした。夢は必ずかなう」と熱く語っていたが、話を振ると「ああ、あれは即座に断りましたね」とそっけなかった。

     中日新聞社を辞めてフリーになったばかりの1974年には、憧れのバーンスタインを撮影した。が、つい居眠りしてフィルムを現像液に1時間もつけてしまって真っ黒に。ところが、これが思わぬ効果を生み、マーラーの交響曲第5番を指揮する気迫みなぎる作品になった。「後に巨匠に見せたら『おお! マーラー』と大感激。失敗が巨匠との強い絆をくれました」

     1日まで銀座で開かれていた追悼展で「奇跡の1枚」を見た。1990年7月、バーンスタイン最後の日本公演。36枚撮りフィルムの37枚目に、顔の前でタクトを包み込むように手を合わせ、最後の音を切った神々しいカットだ。拍手までの一瞬の静寂が写る。音楽を写真に深く刻み込む天才だった。【山本修司】

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