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アンコール

15〜16シーズンスタート 9月国内オケ総チェック

サントリーホールで2015年9月12日(写真提供・東京交響楽団)

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 クラシック音楽の世界では1年間のシーズンの始まりは9月。国内の各オーケストラでは大型企画や大曲を取り上げたプログラムで新シーズンのスタートを華やかに彩った。そこで、国内オーケストラの9月定期公演の中から特に注目されたコンサートをダイジェスト形式で振り返る。

緻密なアンサンブルで堅牢な構造物 ノット東響・マーラー3番

【ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 9月定期演奏会】

サントリーホールで2015年9月12日(写真提供・東京交響楽団)

 英国の実力派、ジョナサン・ノットが第3代音楽監督に就任して2シーズン目を迎えた東京交響楽団はマーラーの大作、交響曲第3番を9月定期で取り上げた。古典から現代音楽まで幅広いレパートリーを誇るノットは、楽曲に対する高い分析力の持ち主として知られ、その実力がいかんなく発揮された見事な演奏が繰り広げられた。

 室内楽を拡大したかのようなアンサンブルによって、ひとつひとつの旋律やフレーズが緻密に組み立てられ、全体としては大きくて堅牢な構造物が目の前に現れたかのような印象を受けた。第4楽章の少年少女合唱を客席2階通路の上手に配置し、空間をフルに利用した立体的な音作りが行われていたことにもノットの綿密な計算が窺えた。

 東響は指揮者の高度な要求を余すところなく実際の音にすることで、その合奏能力の高さを改めて示した格好で、両者の相性はとても良好であることが分かる。ノットの音楽監督としての任期は2026年夏まで延長され、最近では珍しい“長期政権”となることが決まっている。ノットの下、このオーケストラがどう進化していくのか、期待が大きく膨らむ演奏会であった。

 なお、ノットの次回登場は11月22日サントリーホールにおける定期演奏会と翌23日、ミューザ川崎シンフォニーホールでの名曲全集。リゲティの《ポエム・サンフォニック 〜100台のメトロノームのための》、J.S.バッハ/ストコフスキー編《甘き死よ来たれ》BWV478、リヒャルト・シュトラウスの《ブルレスケ》ニ短調(ピアノ=エマニュエル・アックス)、ショスタコーヴィチの交響曲第15番 イ長調という、ノットの持ち味が存分に堪能できるプログラムが組まれている。

写真提供=大阪フィル

情熱と思い入れを前面に 大植大フィル・マーラー3番

【大植英次指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 9月定期演奏会】

写真提供=大阪フィル

 大阪フィルハーモニー交響楽団も東響と同じくマーラーの交響曲第3番で新シーズンの幕開けを飾った。指揮は同響の前音楽監督で、現在、桂冠指揮者のタイトルを持つ大植英次。取材したのは18日に大阪・フェスティバルホールで行われた2日目の公演。

 同じ曲でも演奏者と会場が異なると、こうも違って聴こえるものかと少なからず驚きを覚えた。ノットの緻密な楽曲分析をベースにしたアプローチに対して大植は、情熱と作品に対する熱い思い入れを前面に打ち出した演奏を繰り広げ、好対照を成した。

 大植は05年に日本人指揮者としては初めてワーグナー作品上演の総本山といわれる、ドイツ・バイロイト音楽祭に招かれ楽劇《トリスタンとイゾルデ》(クリストフ・マルターラー演出)を指揮しているが、この時は日本人初のバイロイト指揮者という栄誉に輝いた一方で、音楽的には必ずしも本人が満足するような結果を得ることが出来なかったようだ。その影響からか、その後、数年にわたって大植本来の“ハートフルな音楽作り”がやや薄らぎ、作品によってはテンポ設定などで極端な解釈が行われることもあった、と感じていたのは筆者だけではないはずだ。

 しかし、当夜のマーラー3番は“完全復活”を実感させてくれる充実ぶりであった。互いに気心の知れた大阪フィルだけに大植の意図を十二分に汲(く)み取り、第1楽章から彼らしい彫りの深い鮮烈な表現を繰り返しながら最終楽章のコーダ(終結部)に向かって大きなヤマ場を築いていくアプローチは見事にその狙い通りの効果を上げていた。

ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」=サントリーホールで2015年9月16日(写真提供・NHK交響楽団)

現代的なベートーヴェン像鮮やかに ブロムシュテットN響

【ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK交響楽団 9月定期公演A・Bプログラム】

ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第5番「皇帝」=NHKホールで2015年9月26日(写真提供・NHK交響楽団)

 NHK交響楽団の9月定期公演は今年88歳の同団名誉指揮者、ヘルベルト・ブロムシュテットがオール・ベートーヴェンによるA、B、2種類のプログラムを指揮した。NHKホールで行われたAプロは、交響曲第2番とピアノ協奏曲第5番(ピアノ=ティル・フェルナー)、サントリーホールにおけるBプロでは交響曲第1番と3番が演奏された。

 ブロムシュテットは3年かけてN響及び、同じく名誉指揮者を務めるバンベルク交響楽団とともにベートーヴェンの全交響曲と主要な協奏曲、管弦楽曲などを東京で連続演奏していく予定。つまり、このツィクルスが完成する時には彼は90歳を迎えていることになる。

 さて、その演奏だが老いとは無縁の若々しさと生命力に満ちあふれた素晴らしい内容であった。実際、ブロムシュテットはしっかりとした足取りで登場し、イスを使わず終始立ったままで指揮をするなど、外見上も年齢からくる衰えは微塵(みじん)も感じさせることはなかった。

 ベートーヴェンの自筆譜や手紙、メモなどの資料を基にした最新の研究・校訂結果が演奏に色濃く反映されており、20世紀の巨匠と呼ばれた指揮者たちの精神性重視のスタイルとは明らかに一線を画した音楽作りによって、現代的なベートーヴェン像がクッキリと描き出されていた。使用楽譜も最新校訂版であるベーレンライター版が使われており、随所に弦楽器にヴィブラートをかけさせないなど、作曲家在世当時のスタイルを再現するピリオド(時代)奏法の要素も取り入れられていた。

 後日、NHK・Eテレで1983年にブロムシュテット指揮、N響によるベートーヴェンの第3交響曲の一部が今回の演奏と比較するために放送されていたが、弦楽器の総勢が60人のフル編成のオーケストラによる重厚なサウンドをベースに遅めのテンポで劇的な表現を繰り出す、いかにも20世紀的な演奏であった。これに対して今回は弦楽器が40人または、50人(第3交響曲の時のみ)と人数を絞り、速めのテンポで作品の本質にアプローチを試みており、その変化は誰が聴いても明らかであった。年齢と経験を重ねてもなお、時流に乗り遅れることなく進化し続けるブロムシュテットの指揮者としての姿勢は尊敬に値するものである。そうした尊敬の念が、オーケストラのメンバー全員を奮い立たせ、聴く者の心を動かす名演を生み出すのであろう。

公演日程とプログラム

【ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 9月定期演奏会&名曲全集】

9月12日(土)18:00 サントリーホール/13日(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ジョナサン・ノット

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子

合唱:東京少年少女合唱隊 東響コーラス

管弦楽:東京交響楽団

マーラー:交響曲第3番ニ長調

【大植英次指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 9月定期演奏会】

9月17日(木)19:00、18日19:00 フェスティバルホール

指揮:大植英次

メゾ・ソプラノ:ナタリー・シュトゥッツマン

合唱:大阪すみよし少年少女合唱団 大阪フィル合唱団

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

マーラー:交響曲第3番ニ長調

【ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK交響楽団 9月定期公演A・Bプログラム】

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

ピアノ:ティル・フェルナー

管弦楽:NHK交響楽団

◎Bプログラム

9月16日(水)、17日(木)19:00 サントリーホール

ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調 op.21

ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 op.55 《英雄》

◎Aプログラム

9月26日(土)18:00 、27日(日)NHKホール

ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 op.36

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 op.73 《皇帝》

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