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アンコール

俊英ソヒエフとドイツ名門オーケストラ、ベルリン・ドイツ響の重厚感あふれる演奏

写真提供:サントリーホール

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【トゥガン・ソヒエフ指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団日本公演】

 30代にしてフランスの名門トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団首席指揮者及び芸術監督、ロシア・モスクワのボリショイ劇場音楽監督およびボリショイ管弦楽団首席指揮者、そしてベルリン・ドイツ交響楽団の音楽監督と重要な楽団のシェフを務めながら、世界のひのき舞台で躍進中のトゥガン・ソヒエフを初めて聴いた。

 音楽監督を務めるトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団との来日公演やNHK交響楽団への客演など既に日本でも数々の公演を行なってきたが、ベルリン・ドイツ交響楽団とは初来日となる。

 12年9月からこの名門楽団の音楽監督としていかなるリーダーシップを発揮してきたのか、フランスやロシアの楽団を率いる場合との違いなど音楽ファンの興味は尽きないのだろう、祝日のサントリーホールの客席はよく埋まっていた。

 幕開けはメンデルスゾーンの序曲≪フィンガルの洞窟≫。表情豊かで深い音色のオーケストラは、オペラ指揮者としても名をはせるソヒエフのタクトによく応えており、一幅の絵画を味わうような創造的な世界が広がっていく。

写真提供:サントリーホール

 続くベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番では、前回2010年のショパンコンクールの覇者ユリアンナ・アヴデーエワをソリストに迎えた。ソヒエフはソリストに寄り添いオーケストラと室内楽のような親密な音楽を創っていく。アヴデーエワは多彩な音色で変幻自在なベートーヴェンが特長だ。感情を自然に吐露するような演奏には若々しさがあふれる。アンコールではショパンの≪雨だれ≫でファンの期待に応えていた。

 後半はブラームスの交響曲第1番。ソヒエフは驚くほど正統で奏者1人1人の意志を尊重するかのような指揮をする人だという印象を受ける。自然体で無理なく100人の楽員のパワーを引き出すことは、実は至難の業だと思うが、まったくそういったことを感じさせず、まるで大家のような力の抜けた指揮ぶりだ。それでいてここまでの重厚感あふれるブラームスをさらりと聴かせるあたりが、際立つ才能の由縁なのかもしれない。

 演奏の後に感じたのは、演奏者の個性というよりもブラームスの素晴らしさだ。それこそが、スコアを再現する“演奏”という意味では最上のものかもしれない。

 フランスものやロシアものを演奏する時には違ったアプローチで全く印象が変わるのだろうか、むしろ楽器を取り替えるように自在にさまざまな音楽を創り出してゆく指揮者なのだろうと思ったのは、アンコールの2曲で見せた見事な対比からだ。

写真提供:サントリーホール

 グリークの≪過ぎし春≫での内省的な歌と、モーツァルトの≪フィガロの結婚≫序曲での胸躍る疾走感、めくるめく音楽の変化を目の当たりにしてみて、この日のメーンプログラムがすべてドイツものへの真っ向勝負だったことの真意に得心が行ったのだった。ソヒエフとベルリン・ドイツ交響楽団が今後挑むであろうプログラムに一層期待が高まる公演となった。

 来年1月のNHK交響楽団定期公演ではラフマニノフやチャイコフスキーのロシアものからブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲やベルリオーズの≪幻想交響曲≫というまさしくロシア、ドイツ、フランスという3カ国の作曲家が取り上げられるだけに、ソヒエフの魅力を知る上では聴き逃せないプログラムだ。(毬沙 琳)

公演日程とプログラム

【トゥガン・ソヒエフ指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団日本公演】

指揮:トゥガン・ソヒエフ

管弦楽:ベルリン・ドイツ交響楽団

■10月27日(火)19:00 東京文化会館

ベートーヴェン:劇音楽≪エグモント≫序曲 Op.84

:交響曲第7番イ長調Op.92

:交響曲第3番変ホ長調Op.55≪英雄≫

■10月30日(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール

シューベルト:≪ロザムンデ≫序曲D644

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64

(ヴァイオリン:神尾 真由子)

ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調Op.92

■11月3日(祝・火)14:00 サントリーホール

メンデルスゾーン:序曲≪フィンガルの洞窟≫Op.26

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調Op.37

(ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ) 

※アンコール ショパン:24の前奏曲 op.28から第15番≪雨だれ≫

ブラームス:交響曲第1番ハ短調Op..68

※アンコール グリーグ:2つの悲しき旋律op.34から≪過ぎし春≫

モーツァルト:歌劇≪フィガロの結婚≫序曲K.485

          □              □          

筆者プロフィル

毬沙琳(まるしゃ・りん) 大手メディア企業勤務の傍ら、音楽ジャーナリストとしてクラシック音楽やオペラ公演などの取材活動を行う。近年はドイツ・バイロイト音楽祭を頻繁に訪れるなどし、ワーグナーを中心とした海外オペラ上演の最先端を取材。在京のオーケストラ事情にも精通している。

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