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アンコール

表現力で魅せたパスカル・ヴェロ指揮、仙台フィルの第300回定期演奏会

仙台フィルの常任指揮者として10年の節目を迎えるパスカル・ヴェロ

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 4月16日、仙台フィルの第300回定期公演を日立システムズホール仙台で聴いた。ベルリオーズの「幻想交響曲」、そして作曲者が続けて演奏するよう意図したとされる「レリオ、または生への回帰」を合わせた同公演。このまれな機会に、当日は多くの人が足を運び、注目度の高さをうかがわせた。

     オーケストラの演奏のみならず、演劇(演出)、合唱、語りなど複合的な要素が絡み合う今回の2曲連続演奏会は、結果としてオーケストラの節目を飾るにふさわしい好演だった。中でも「レリオ」に限らず、冒頭の「幻想交響曲」からベルリオーズの世界観に誘う演出は、特筆すべきだろう。舞台上、ベルリオーズと思わしき人物(渡部ギュウ)が、当時を思わせるセットにたたずむ。そこへ舞台上手から指揮者、パスカル・ヴェロが登場し、作曲者から譜面を受け取ったり、演奏者に何やら指示をしつつ、演奏はその場面に聴き手が見入るうちに始まった。「これから大曲を聴くのだ」という気構えなしに始まった「幻想」は、躍動感に満ち、フレーズの遊びや、時に洒脱(しゃだつ)な雰囲気をまとうヴェロならではの演奏。フレーズを丁寧に重ねつつもふわりと遊びを持たせることで、特有のロマンティシズムが美しく表現され、作品に投影された作曲者の恋情を垣間見る思いがした。

    「レリオ」で語りを務めた渡部ギュウ

     「レリオ」では、「幻想」のセットをそのままに独白者レリオ(渡部)が舞台下手で語り、照明を巧みに使って物語が進行した。本来の演出とは異なり、「亡霊の合唱」や「山賊の歌」では、舞台や客席前方を合唱が往来し、熱演したが、場面の特徴を捉えやすく、筆者自身はおもしろく聴いた。渡部の語りにPAを用いたことでオーケストラや合唱とやや不釣り合いな気もしたが、それを用いるか否かは意見が分かれるところだろうし、また本質的な問題ではないだろう。

    「漁師(ゲーテのバラード)」を歌うジル・ラゴン(テノール)
    威勢よく現れて「山賊の歌」を熱演した宮本益光(中央・バリトン)と合唱

     ヴェロは、オーケストラ、独唱、合唱、語りの入り混じる稀有(けう)なこの作品を、場面ごとに演劇的要素を効かせつつ、コントラスト豊かに仕上げていた。特に、以前にも増して合唱を伴う作品に積極的に取り組み、ヴェルディ「椿姫」やメンデルスゾーン「エリヤ」などで好演を重ねきたオーケストラは、表現の幅広さ、対応力が格段に増している。2曲を通じ、ベルリオーズの狂おしくもはかないロマンティシズムが見事に表現されており、新しい発見とともに音楽へ没入する幸せなひとときとなった。

    (正木裕美)

    熱演で300回の節目を飾った仙台フィル

    公演データ

    【パスカル・ヴェロ指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団 第300回定期演奏会】

    4月15日(金)19:00 16日(土)15:00 日立システムズホール仙台

    ベルリオーズ:「幻想交響曲」―ある芸術家の生涯―Op14a

    ベルリオーズ:叙情的モノドラマ「レリオ、または生への回帰」Op14b

     

    指揮:パスカル・ヴェロ

    レリオ役:渡部ギュウ

    テノール:ジル・ラゴン

    バリトン:宮本益光

    合唱:仙台フィル第300回定期記念合唱団

    管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団

    【パスカル・ヴェロ指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団東京特別演奏会】

    2016年4月17日(日)14:00 サントリーホール

    ※曲目・出演者ともに300回定期と同じ

    筆者プロフィル

     正木裕美(まさき・ひろみ) 国立音楽大学(音楽教育学)、同大学院(音楽学)修了。クラシック音楽の総合情報誌「音楽の友」編集部勤務を経て、現在は仙台市在住。「音楽の友」編集部では、全国各地の音楽祭を訪れるなどフットワークを生かした取材に積極的に取り組んだ。東日本大震災発生後、仙台に移り住み、同市を拠点に東北各地の音楽状況や音楽による復興支援活動などの取材に力を入れている。

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