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アンコール

今秋相次いだ在京オーケストラ記念公演総ざらい

 今秋、在京オーケストラの創立記念、音楽監督就任披露等の特別公演が相次いで開催された。記念すべき節目を飾るコンサートだけに意欲的なプログラムで熱演が繰り広げられた。そこで、これらの公演の中からいくつかピックアップして報告したい。

 

NHK交響楽団創立90周年記念特別演奏会=NHK交響楽団提供

NHK交響楽団創立90周年記念特別演奏会

 秋のシーズン冒頭の9月8日、先陣を切って開催されたのがNHK交響楽団の創立90周年を記念した特別公演。首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィのタクトでマーラーの大曲、交響曲第8番変ホ長調「一千人の交響曲」を取り上げた。

 広いNHKホールは満員の大盛況。ヤルヴィとN響に対するファンの熱い期待が会場全体に充満しているかのような雰囲気。ヤルヴィの棒の下、メンバーひとりひとりが全力の熱演で披露した演奏はマーラーという作曲家に対する既成概念を打ち破るほど先鋭的であり、このコンビが紡ぎ出す音楽の独自性を強く印象付けるものであった。

 ヤルヴィの解釈はマーラー独特の陰うつな感情のうねりや、それに交錯する空虚な陽気さ、そして世紀末ならではの漠然とした不安感を表すような音場の陰りのようなものを一切排し、譜面の隅々にまで光を当てて、その音楽的な意味合いを明快に浮き彫りにしていくスタイル。テンポは全般的に速めで、大きなエネルギーを放出しながら音楽はよどみなく進んでいく。マーラーの音楽はかくあるべきとのオーソドックスな演奏法とは対極にありながら、不自然さや不合理を感じさせないところが興味深い。何よりもヤルヴィが指揮台に立つと常にN響の各パートの奏者が大きなアクションで力のこもった演奏を繰り広げる光景は、両者の相性の良さを示すものであった。それを知る聴衆の期待も大きく、この日に限らずチケットはほぼ毎回売り切れとなる人気ぶりなのだという。まさに新時代到来である。

(宮嶋 極)

 

NHK交響楽団創立90周年記念特別演奏会=NHK交響楽団提供

■公演データ

【NHK交響楽団創立90周年記念特別演奏会】

9月8日(木)19:00 NHKホール

指揮  :パーヴォ・ヤルヴィ

ソプラノ:エリン・ウォール

    :アンジェラ・ミード

    :クラウディア・ボイル

アルト :カタリーナ・グライマン

    :アンネリー・ペーボ

テノール:ミヒャエル・シャーデ

バリトン:ミヒャエル・ナジ

バス  :アイン・アンガー

合唱  :新国立劇場合唱団 栗友会合唱団

児童合唱:NHK東京児童合唱団

管弦楽 :NHK交響楽団

 

マーラー:交響曲第8番変ホ長調「一千人の交響曲」

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 上岡敏之音楽監督就任記念公演=みなとみらいホール(C)三浦興一

新日本フィルハーモニー交響楽団 上岡敏之音楽監督就任記念公演

 ドイツを拠点に活躍を続ける上岡敏之を第4代音楽監督に迎えた新日本フィルハーモニー交響楽団の記念演奏会。リヒャルト・シュトラウスの人気交響詩2曲を並べたプログラムで、通常の定期に加えて、横浜みなとみらいホールでも特別演奏会が開催された。取材したのは11日、みなとみらいホールにおける公演。

 大編成を要し、壮麗かつ緻密なオーケストレーションが施されたリヒャルト・シュトラウスの交響詩は上岡が得意とするレパートリーのひとつであり、これから彼が新日本フィルをどのような方向に導いていくのかを分かりやすく示すにはうってつけのプログラムといえよう。言い換えれば新監督による〝所信表明〟である。それだけに演奏の隅々にまで上岡のコントロールが行き届いており音量、アーティキュレーション(音と音のつなぎ合わせ方)、和音のバランス調整等々、あらゆる面において綿密な計算をベースにした音楽に仕上げられていた。

 そこから投影されていく音楽の表情はときに多くの聴衆が聴きなじんだものとは少し違いがあったりもする。とはいえ、それらは奇をてらったものではなく、上岡が譜面を深く考察した上で導き出された解釈であり、聴く側にもその意味合いを理解できるだけのスキルが求められているようにも感じられた。

 鳴りやまぬ拍手に楽劇「サロメ」から〝7つのベールの踊り〟をアンコール。こちらも勢いだけで音楽を進めていくのではなく、響きを微細に変化させながら官能的な雰囲気を巧みに表出させていく、上岡の意思が見事に透徹された演奏であった。

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 上岡敏之音楽監督就任記念公演=サントリーホール(C)三浦興一

■公演データ

【新日本フィルハーモニー交響楽団 上岡敏之音楽監督就任記念 定期演奏会&横浜みなとみらい特別演奏会】

9月9日(金)19:00 サントリーホール 11日(日)14:00 横浜みなとみらいホール

指揮 :上岡 敏之

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

 

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」Op.30

   :交響詩「英雄の生涯」Op.40

 

東京都交響楽団 エリアフ・インバル80歳記念/都響デビュー25周年記念定期演奏会(C)堀田力丸

東京都交響楽団 エリアフ・インバル80歳記念/都響デビュー25周年記念定期演奏会

 東京都交響楽団の第813回定期(9月10日、東京芸術劇場)は、桂冠指揮者エリアフ・インバルの80歳記念と都響デビュー25周年記念を兼ねた3回シリーズの初日。エルガーのチェロ協奏曲ホ短調(チェロ独奏=ターニャ・テツラフ)と、シューベルトの交響曲第8番ハ長調「グレート」を演奏した。

 インバルは1991年9月のベルリオーズ「レクイエム」以来、約130回の共演を重ね都響との絆を深めてきた。特別客演指揮者として「マーラー・サイクル」(94~96年)、プリンシパル・コンダクターとして「新・マーラー・ツィクルス」(2012~14年)は、現在の都響らしさを形作る大きな礎となっており、ファンの間でも名演の誉れが高い。

 遠い山びこのようなホルンから始まった「グレート」では、インバルと都響との濃密な25年間が余すところなく示された。インバルが深く踏み込めば、低弦の地鳴りのような響きがホールに満ち、若々しくリズミカルに体を揺らせば、オーボエやクラリネットが歌い出す。テンポの小揺るぎにもピタリと息を合わせ、師の教えを一言も聞き漏らすまいというひたむきさが伝わるような演奏だった。公演は完売。客席を埋めた聴衆からは、鳴りやまぬ「ブラボー」と惜しみない拍手が送られ、80歳のマエストロは何度も笑顔で応えていた。

 

東京都交響楽団 エリアフ・インバル80歳記念/都響デビュー25周年記念定期演奏会(C)堀田力丸

■公演データ

【東京都交響楽団第813回定期演奏会Cシリーズ インバル80歳記念/都響デビュー25周年記念】

9月10日(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール

指揮 :エリアフ・インバル

チェロ:ターニャ・テツラフ

 

エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 op.85

シューベルト:交響曲第8番ハ長調 D944 「ザ・グレート」

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