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東京・春・音楽祭2017

神々しさに陶然 オペラの世界にどっぷり 東京春祭「HORNISTS 8」

写真提供=東京・春・音楽祭実行委員会(C)青柳 聡

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【ホルニスト8〝ワーグナー×ホルン〟~N響メンバーと仲間たちによるホルン・アンサンブル】

 ホルンって、こんなにも魅力的で、表現の可能性が大きい楽器だったのね……。東京・春・音楽祭の「HORNISTS 8 〝ワーグナー×ホルン〟~N響メンバーと仲間たちによるホルン・アンサンブル」(3月22日、東京文化会館小ホール)で、そんなうれしい驚きを伴う感動を味わった。

 NHK交響楽団はこの音楽祭で、ワーグナーの「ニーベルングの指環」の演奏をしている。昨年の「ジークフリート」では、2幕のジークフリートが角笛を吹き鳴らす場面で、ホルン首席奏者の福川伸陽さんが舞台に登場し、素晴らしいソロを演奏して客席を沸かせたのは、今も記憶に新しい。

(ゲネプロの映像が残っている→https://www.facebook.com/nobuaki.fukukawa1981/videos/1708258749412407/ )

 今回の演奏会は、その福川さんが、音楽祭の事務局に提案して実現した。出演は、福川さんや今井仁志さんらN響のメンバー7人に読売日響の久永重明さんを加えた8人。前評判も上々で、チケットは完売し、当日の客席はぎっしり満杯だった。

 プログラムは、ウェーバー「魔弾の射手」より〝序奏、狩人と村人の合唱〟で始まる。ベートーヴェン「フィデリオ」序曲、フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」より〝前奏曲とコラール〟のほかはワーグナー作品。「ローエングリン」幻想曲、「ラインの黄金」幻想曲、「トリスタンとイゾルデ」幻想曲、「ジークフリート」幻想曲の4曲で、ウィーン・フィルやバイロイト音楽祭出演のホルン奏者らが編曲したものだ。

 演奏者はステージ上に4人ずつ前後2列で座り、「ラインの黄金」と「ジークフリート」では、後列の奏者がワーグナー・チューバに持ち替えて演奏した。

 私がとりわけ感銘を受けたのは、「ローエングリン」と「ジークフリート」。「ローエングリン」では、第1幕の前奏曲「聖杯の動機」の光が降り注ぐような神々しさに陶然となり、「エルザの大聖堂への行進」「結婚行進曲」を経て、第1幕終曲で華やかに終わった時には、心はオペラの世界にどっぷり。後者は、実は「神々の黄昏」第3幕を中心にまとめられているのだが、鮮やかなソロと分厚く濃密な響きが雄大、浩々(こうこう)たる世界を作り出していて、オペラ全曲を聴いたような充足感を味わうことができた。

 1種類の楽器で、こんなにも重層的で厚みのある音楽を作れるのは、音域が広い(福川さんに聞いたところ、なんと5オクターブ!)ホルンだからこそなのだろう。音色の多様さなど、この楽器の表現力の豊かさも教えられた音楽会だった。

 それにしても、これだけ見事な演奏をする奏者が8人もそろうというのは、本当に素晴らしい。最近、日本のオーケストラのホルン・パートの大きな進化を感じているのだが、今回の8重奏なども、ふた昔前にはちょっと考えられなかった企画ではないか。このような時代の変化の証しを見せてもらえたことも、この音楽会がもたらしてくれた喜びの一つだ。

 アンコールの1曲目は、ウェーバーの「魔弾の射手」より〝狩人の合唱〟でホルンの魅力を堪能。2曲目は、福川さんが編曲したワーグナー「ワルキューレの騎行」で、奏者たちは思い切り高難度のテクニックを披露し、残っているエネルギーを全て発散するようなにぎやかさで終わった。

 ああ、楽しかった!――聴衆をそんな幸福感に導く締め方も、実にお見事。

 できれば今回だけに終わらせず、来年のこの音楽祭に再登場を期待したい。ホルン8重奏向けに編曲されている曲は、まだまだあるようだし、このアンサンブルのために、新たな編曲がなされてもいいのではないか。その際には、ワーグナーの「愛の死」を入れて下さるよう、心の底からお願いしたい。

(ジャーナリスト・江川紹子)

公演データ

【HORNISTS 8 〝ワーグナー×ホルン〟~N響メンバーと仲間たちによるホルン・アンサンブル】

3月22日(水)19:00 東京文化会館小ホール

ホルン:今井仁志、福川伸陽、石山直城、勝俣 泰、木川博史、野見山和子、山本 真、 久永重明

 

ウェーバー(ヴァレンドルフ編):「魔弾の射手」 より 序奏、〝狩人と村人の合唱〟

ワーグナー(シュティーグラー編):「ローエングリン」 幻想曲

ワーグナー(クリアー編):「ラインの黄金」 幻想曲

ベートーヴェン(テルツァー編):「フィデリオ」 序曲

フンパーディンク(キルシェン編):「ヘンゼルとグレーテル」 より 前奏曲とコラール

ワーグナー(ユーリセン編):「トリスタンとイゾルデ」 幻想曲

ワーグナー(シュティーグラー編):「ジークフリート」 幻想曲

※アンコール

ウェーバー(ヴァレンドルフ編):歌劇「魔弾の射手」より〝狩人の合唱〟

ワーグナー:「ワルキューレの騎行」

 

筆者プロフィル

 江川 紹子(えがわ・しょうこ)神奈川新聞社会部記者を経てフリーライターに転身。その後、オウム真理教による一連の凶悪事件などの取材・報道を通じて社会派ジャーナリストとして注目を集める。新聞、週刊誌の連載やテレビの報道・情報番組のコメンテーターとして活躍。近年、クラシック音楽やオペラの取材、アーティストのインタビューなどにも取り組んでいる。

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