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必聴!

ラ・プティット・バンドによる、バッハの音楽の真骨頂

 歴史的考察にもとづいた演奏で古楽界を牽引(けんいん)するラ・プティット・バンドが10月、大阪、東京、福島ほかで来日公演を行う。今回のプログラムの特徴は、J.S.バッハが残した作品の、多彩な魅力をひとときに楽しめる点だ。フランス風の形式で書かれた管弦楽組曲第3番、複雑な対位法の中にも旋律の美しさが際立つ「音楽の捧げ物」トリオ・ソナタ、華やかなイタリアの器楽協奏曲形式で書かれたチェンバロ協奏曲第5番、ドイツの世俗カンタータ第204番「われ心満ちたり」と、プログラムに並ぶ作品だけでも、いかにバッハが多くの様式を心得、多彩な作品を残したのかがわかる。

音楽監督を務めるシギスヴァルト・クイケン(ヴァイオリン)

 ラ・プティット・バンドは、今は亡き名チェンバロ奏者、グスタフ・レオンハルトの指揮でリュリの「町人貴族」を録音するため、レオンハルトとシギスヴァルト・クイケンによって1972年に結成された。彼らが掲げたのは、作曲当時使われていた楽器=古楽器を用い、オリジナルな演奏技法により歴史的に忠実な響きを再現すること。それは、楽譜に書かれたことだけを忠実に再現するのではない。むしろ書かれた作品が当時どのように演奏されていたかに重きが置かれるため、例えばある法則のもとで演奏者にゆだねられていた装飾も同じように用いて、はるか遠い時代の音楽を生き生きと現代へよみがえらせるのだ。彼らが採用する各パート1人という小編成での演奏も、作曲家の意図を明確にするためで、細かいニュアンスや対位法のあやなす旋律美がより一層楽しめる。

今回来日するラ・プティット・バンドのメンバー。演奏にはフラウト・トラヴェルソなどのオリジナル楽器が用いられる

 バッハの作品の演奏史をひもとくと、さまざまな演奏スタイルがあったことがわかるが、ラ・プティット・バンドが実践する取り組みは、一時的な流行にとどまらない。今ではより広がりを見せ、バッハ演奏におけるスタンダードにもなった。このことからも、同時代にこうした演奏習慣を実践し始めたニコラウス・アーノンクールやフランス・ブリュッヘンらに並び、彼らの功績がいかに大きいかがわかるだろう。45年にわたり古楽界をリードし続けるラ・プティット・バンドの演奏で、J.S.バッハの音楽の真骨頂を堪能したい。(正木裕美)

公演データ

10月9日(月・祝)14:00 ザ・シンフォニーホール(大阪府)

10月11日(水)19:00/12日(木)13:30 浜離宮朝日ホール

10月14日(土)14:00 福島市音楽堂

10月16日(月)19:00 電気文化会館 ザ・コンサートホール (愛知県)

 

ソプラノ:アンナ・グシュヴェンド

ラ・プティット・バンド

 

J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068(弦楽合奏版)

J.S.バッハ:「音楽の捧げ物」BWV1079よりトリオ・ソナタ

J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056

J.S.バッハ:カンタータ 満足について「われ心満ちたり」BWV204 (全8曲)

 

筆者プロフィル

 正木裕美(まさき・ひろみ) 国立音楽大学(音楽教育学)、同大学院(音楽学)修了。クラシック音楽の総合情報誌「音楽の友」編集部勤務を経て、現在は仙台市在住。「音楽の友」編集部では、全国各地の音楽祭を訪れるなどフットワークを生かした取材に積極的に取り組んだ。東日本大震災発生後、仙台に移り住み、同市を拠点に東北各地の音楽状況や音楽による復興支援活動などの取材に力を入れている。

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