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アンコール

ジョルダン&ウィーン響 名曲に新たな光あて……今秋の海外オーケストラ注目公演(下)

写真提供:サントリーホール

 今秋の来日オーケストラ公演を振り返るシリーズの最終回はフィリップ・ジョルダン指揮、ウィーン交響楽団。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者と並んで、クラシック音楽界における最高のポストとされるウィーン国立歌劇場音楽監督に就任することが決まっているジョルダンの、東京初登場となったサントリーホールでの公演について報告する。(宮嶋 極)

【フィリップ・ジョルダン指揮 ウィーン交響楽団来日公演】

 現在、ウィーン交響楽団首席指揮者と国立パリ・オペラ座の音楽監督を兼任し、2020年からはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任することが決まっているフィリップ・ジョルダン。17年はバイロイト音楽祭で新制作された「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(演出バリー・コスキー)を指揮し成功を収めるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの注目指揮者である。07年にパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)で札幌を訪れているが、首都圏での公演は今回ウィーン響を率いての日本ツアーが初めてとなる。取材したのは東京初お目見えとなった12月1日のサントリーホールにおける公演。プログラムはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(独奏・樫本大進)とマーラーの交響曲第1番「巨人」。

 筆者がバイロイトで聴いたジョルダンは、切れ味のよい音楽運びと透明感あふれる響きの構築によって対位法の妙を浮き彫りにするなどして、従来とは別の角度から作品に光を当てる音楽作りが強く印象に残っている。

写真提供:サントリーホール

 今回もマーラーでは同様のスタイルを貫き、曲の随所で独自の工夫を凝らしながら、この聴きなれた名曲の新たな魅力を掘り起こし、その才能の片りんを示してくれた。マーラー独特の陰影を描き出すというよりは、従来の演奏法にとらわれることなく、譜面にストレートに向き合って音楽そのものの面白みを聴衆に明快に提示していく。長身をフルに使った大きな身ぶりでオーケストラを細かくコントロールして、終始、すっきりと見通しのよい音場を維持しながら音楽を進めていく。第4楽章のコーダをはじめ、フォルティシモの箇所も必要以上の大音量で押さずに、各パートが織り成す複雑な動きを丁寧に解き明かしていくことで、大きなヤマ場を築いていった手腕はやはり、なかなかのものであった。

 ただ、この日のウィーン響はアンサンブルにやや緻密さを欠く場面が見受けられ、ジョルダンの目指したものが完全には実現されていなかったようにも感じられたのは残念であった。とはいえ、アンコールとして演奏されたヨハン・シュトラウスⅡ世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」とポルカ「雷鳴と電光」では、ウィーンのオーケストラとしての本領を発揮。ジョルダンの求めに応えて、躍動感にあふれる演奏で会場を大いに沸かせていた。ジョルダンが、元日恒例のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに登場する日もそう遠くではないだろう。

 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は樫本大進のソロの雄弁さが際立つ演奏となった。ソロとオーケストラの対話というよりは、彼のヴァイオリンにオケ全体が引っ張られていくような雰囲気がステージ上を支配していた。ジョルダンはそうした流れに無理にあらがうことなく、力強く変化に富んだ樫本のソロに柔軟に対応しながら、アンサンブルを巧みにまとめていく。オペラで培ったジョルダンの懐の深さをうかがわせる指揮ぶりといえよう。指揮者としては、まだ若手の範ちゅうに入る43歳。今秋来日したキリル・ペトレンコ、アンドリス・ネルソンスらとともに21世紀中盤の音楽界を支えていく才能であることは、間違いないだろう。

 

写真提供:サントリーホール

公演データ

【フィリップ・ジョルダン指揮 ウィーン交響楽団来日公演】

指揮:フィリップ・ジョルダン

ヴァイオリン:樫本 大進

管弦楽:ウィーン交響楽団

 

11月26日(日)15:00 横浜みなとみらいホール

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 Op.67 「運命」

マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」

 

12月1日(金)19:00 サントリーホール

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64

マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」

 

12月3日(日)14:00 サントリーホール

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調Op.67 「運命」

ブラームス:交響曲第1番ハ短調Op.68

 

写真提供:サントリーホール

筆者プロフィル

 宮嶋 極(みやじま きわみ)スポーツニッポン新聞社勤務の傍ら音楽ジャーナリストとして活動。スポニチ紙面、ウェブにおける取材・執筆に加えて音楽専門誌での連載や公演プログラムへの寄稿、音楽専門チャンネルでの解説等も行っている。

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