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アンコール

生命力に満ちたメンデルスゾーン ミンコフスキ指揮 レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

(C)大窪道治 提供:東京オペラシティ文化財団

 マルク・ミンコフスキがレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル(「ルーヴル宮音楽隊」と呼ばれることもある)とともに来日し、2月27日、東京オペラシティコンサートホールでオール・メンデルスゾーン・プログラムを披露した。レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルは、1982年にミンコフスキによって創設された時代楽器(オリジナル楽器)によるオーケストラ。初期は、フランス・バロック音楽やヘンデルをレパートリーの中心としていたが、近年は、ロマン派の音楽にも積極的に取り組んでいる。2009年の初来日公演のときは、ラモー、モーツァルト、ハイドンを取り上げた。2013年以来、5年ぶりの来日。今回は、弦楽器が第1ヴァイオリン12、第2ヴァイオリン10、ヴィオラ6、チェロ5、コントラバス3という編成。演奏が始まる前の聴衆の拍手に応えて、オーケストラ全員でお辞儀をするところが彼らのスタイル。

 最初の序曲「フィンガルの洞窟」からオーケストラの素朴な音色に魅了される。楽譜は通常演奏されるものといささか異なるホグウッド校訂によるベーレンライター新版の「ロンドン稿」が使用された。交響曲第4番「イタリア」では、快活な演奏が楽しめたが、それでもむしろ、弱音部分での繊細な表現に魅力を感じた。

 後半は、交響曲第3番「スコットランド」。彼らの演奏は、音色、楽器のバランス、音のブレンド感、フレージングなどが独自で、通常のモダン楽器のオーケストラの演奏で聴き慣れたものとは随分違う。例えば、昨年12月に聴いたシャルル・デュトワ&NHK交響楽団の「スコットランド」の洗練されたきれいな音に比べると、ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルはとてもざらついた音に聴こえる。それは時代楽器による音の出にくさもあろう(特に管楽器は発音の仕方や音の安定感が違う)が、もともとメンデルスゾーンの音楽はこういうものであったのではないかと気づかされた。メンデルスゾーンが聴いていた楽器(特に管楽器)やオーケストラは発展途上にあり、それゆえに、彼は何度も楽譜を書き直したのかもしれない。また、オーケストラの音の出始めのタイミングがいま一つ合っていないところもあったが、ミンコフスキはそれほど気にしていない様子だった。彼は、それよりも演奏における即興性や自由度、そして生き生きとしたドラマティックな表現を重視しているようであった。

 彼らの演奏を聴いていて、もしかしたら、現代のモダン楽器によるオーケストラは、音色の洗練やアンサンブルの正確さ・緻密さに固執し過ぎているのかもしれないと思った。もちろん、現代人には現代人の音への嗜好(しこう)があるわけで、モダン・オーケストラがその美学に従った方法論で演奏したきれいなメンデルスゾーンを否定するつもりはまったくない。ただ、メンデルスゾーン本人が耳にしていた音は、この日のレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルのように、雑味(多少の荒々しさ)を含んだ、しかし生命力に満ちた音ではなかったかと思うのである。

 ミンコフスキは、2016年からボルドー国立歌劇場総監督を務め、今年9月からオーケストラ・アンサンブル金沢の芸術監督も兼務する。この夏には金沢(7月30日)のほか、東京オペラシティコンサートホール(8月1日)でも、オーケストラ・アンサンブル金沢とともにドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」を上演する。幅広いレパートリーに取り組み、それによってそれぞれの作品の時代様式の違いを際立たせる彼の指揮にますます注目したい。

(音楽評論家 山田 治生)

(C)大窪道治 提供:東京オペラシティ文化財団

公演データ

【マルク・ミンコフスキ指揮 レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル演奏会】

2月27日(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

指揮:マルク・ミンコフスキ

管弦楽:レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

 

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」Op.26

        :交響曲第4番イ長調Op.90 「イタリア」

        :交響曲第3番イ短調Op.56 「スコットランド」

 

筆者プロフィル

 山田治生(やまだ・はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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