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「新芸」とその時代

(44)ソ連の仕事Ⅶ 伝説のピアニスト・リヒテル②

1970年10月、初来日の演奏旅行中、新潟のホテルでリヒテルと=村上氏提供

「あなたのヤマハを弾く」

 1970年8月31日午後3時、スヴャトスラフ・リヒテルを乗せたソ連の客船オルジョニキーゼ号が大阪港に入港した。飛行機嫌いのリヒテルは8月10日にシベリア鉄道でモスクワを出発し、途中のオムスク、イルクーツクやハバロフスクなどで演奏会を開き、ナホトカから乗船。計3週間の長旅を経ての初来日だった。妻とともにデッキに姿を現したリヒテルは、出迎えにきた関係者の中に、信頼する日本人調律師の姿を見つけて、安心したようににっこりとほほえんだ。ヤマハのピアノ調律師、村上輝久(88)である。

 村上は、本場で技術を磨くために66年に渡欧。67年、公式調律師として招かれた南仏のマントン音楽祭で…

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