天才ギタリストを主人公に2015~16年、平野啓一郎さんが毎日新聞に連載した「マチネの終わりに」。この小説をテーマとする演奏会が、東京都調布市で開かれた。日本を代表するクラシックギタリストで、構想段階から取材に協力した福田進一さんと大萩康司さんのデュオ・リサイタルだ。作中に流れる曲を中心にプログラムが組まれ、合間には作家を交えての鼎談(ていだん)も。「ピアニストなどオーケストラと共演する主人公では登場人物が増えすぎるので、主にソロで活動するギタリストを選んだ」と平野さんが明かすと、2人は「クラシックギター界から表彰状を贈りたい」と応じた。
平野さんによると執筆のモチーフは、福田さんがギターで弾いたバッハの「無伴奏チェロ組曲」。作中でも組曲第3番が、印象的に使われた。ギターの音色を通奏低音に、中年に差し掛かった男女が魂のレベルで引かれ合う--。2人を結び付ける曲「幸福の硬貨」は、映画のテーマという設定。唯一架空の作品だったが、小説完結後に林そよかさんによって作曲され、この日も演奏された。「文学世界を音で味わえるのは、至福の体験」と福…
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