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オーケストラのススメ

~26~ 発表されたばかりの来年度のプログラムを見る

山田治生

 日本のオーケストラのシーズン(年度)は、欧米のように9月始まりとする楽団(NHK交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団など)と日本の年度に合わせて4月始まりとする楽団の二つに分けられる。秋になって、4月から翌年3月までをシーズンとするオーケストラが次々と来年度のプログラムを発表している(11月1日現在、東京交響楽団、東京都交響楽団、読売日本交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、山形交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、九州交響楽団など)。来年度といえば、2019年4月から20年3月まで。年号が変わり、20年のオリンピックイヤーに入る。そして、クラシック音楽界にとっては、20年はベートーヴェンイヤー(生誕250周年)である。

    読響が新たに常任指揮者として迎えるセバスティアン・ヴァイグレ (C)読響

     来年度、読売日本交響楽団が新しい常任指揮者を迎える。ドイツ出身で、かつてベルリン州立歌劇場管弦楽団の首席ホルン奏者を務めた、セバスティアン・ヴァイグレ。フランクフルト歌劇場の音楽総監督を務め、オペラでの活躍が知られる。ヴァイグレは、読響との最初のシーズンで、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」(5月)、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」(9月)、ブラームスの交響曲第1番(3月)、第4番(5月)、ブルックナーの交響曲第9番(5月)、マーラーの交響曲第5番(9月)、ハンス・ロットの交響曲(9月)、R・シュトラウスの「英雄の生涯」(3月)など、ドイツ音楽の王道を披露する。また、2人の若き首席客演指揮者、山田和樹によるカリンニコフの交響曲第1番(6月)とコルネリウス・マイスターのブルックナーの交響曲第2番(2月)にも注目したい。

     東京五輪といえば、前回の東京五輪の記念文化事業として創設された東京都交響楽団が思い出される。音楽監督の大野和士は、新国立劇場オペラ部門芸術監督も兼務。東京五輪・パラリンピックに向けての、オーケストラとオペラの両輪での活躍が期待される。19年度の都響は、ブルックナーとショスタコーヴィチの競演となる。ブルックナーは、交響曲第4番(7月:アラン・ギルバート)、第7番(10月:小泉和裕)、第9番(9月:大野)、ショスタコーヴィチは、交響曲第10番(3月:大野)、第11番(11月:エリアフ・インバル)、第12番(11月:インバル)が並ぶ。マーラーでは首席客演指揮者のギルバートが交響曲第6番(12月)を取り上げる。マルク・ミンコフスキが指揮するチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」(10月)やフランソワ・グザヴィエ・ロトのラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲(2月)も楽しみだ。

    都響と新国立劇場のオペラ部門を引っ張る大野和士 提供:東京都交響楽団 (C)Herbie Yamaguchi

     26年3月まで音楽監督の契約を結んでいるジョナサン・ノットと東京交響楽団は、6シーズン目。ノットは、これまで少しずつリゲティの作品を日本の聴衆に紹介してきたが、7月には大作「レクイエム」を取り上げる。また、ノットは、14年の音楽監督就任披露での交響曲第9番以来、毎シーズン、マーラーを取り上げてきた。来シーズンは11月に第7番を聴かせてくれる。14年に28歳の若さで名門チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者に就任したリオネル・ブランギエの登場(9月)にも注目したい。

     神奈川フィルでは、若きマエストロ、川瀬賢太郎が2022年3月まで常任指揮者としての契約を延長した。6シーズン目の来季も、ムソルグスキー=ストコフスキー編曲の「展覧会の絵」(12月)やブラームス=シェーンベルク編曲のピアノ四重奏曲第1番(3月)など、凝った選曲を披露する。また、神奈川フィルの主力メンバーが協奏曲のソリストを務めるのも楽しみだ。首席ソロ・コンサートマスターの石田泰尚はブロッホのヴァイオリン協奏曲(5月)を、ソロ・コンサートマスターの﨑谷直人と首席チェロ奏者の門脇大樹はブラームスの二重協奏曲(11月)を弾く。

    東響と密な関係を築くジョナサン・ノット (C)大窪道治/TSO

     小泉和裕が音楽監督を兼務する名古屋フィルと九州交響楽団では、ともに、小泉の指揮で、ブルックナーの交響曲第7番(9月)、R・シュトラウスの「英雄の生涯」(2月/3月)が演奏される。九響では7月のマーラーの交響曲第3番も話題になるだろう。

     今年度から飯守泰次郎が常任指揮者を務めている仙台フィルでは、飯守が十八番のドイツ音楽プログラムを振る(ベートーヴェンの交響曲第5、6番<5月>、第8番<2月>、ブラームスの交響曲第1番<2月>、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」<10月>など)。

     もっとも斬新な試みをしているオーケストラは関西フィルかもしれない。音楽監督のオーギュスタン・デュメイは、ベートーヴェンやメンデルスゾーンの交響曲に取り組むほか、定期演奏会でR・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ(11月)を弾く。首席指揮者の藤岡幸夫は、映画やドラマの音楽で活躍の菅野祐悟の交響曲第2番を世界初演し(4月)、ハチャトゥリアンの交響曲第2番「鐘」を取り上げる(10月)。桂冠名誉指揮者・飯守泰次郎はメンデルスゾーンの大作「エリア」を手掛ける(7月)。

     札幌交響楽団では、今年度から、スイス出身のマティアス・バーメルトが首席指揮者を務めている。来年度は定期演奏会に「作曲家が作曲家と出あうとき…何を感じ、何を与えたのだろう?」とテーマを掲げ、ブラームス=シェーンベルク編曲のピアノ四重奏曲第1番(8月)などを取り上げる。

     11月1日、来年度から山形交響楽団の常任指揮者を阪哲朗が務めることが発表された。それに伴い、現・音楽監督の飯森範親は芸術総監督に就任する。ドイツ、オーストリア、スイスの歌劇場を中心に活躍してきた阪にとっては日本のオーケストラでの初めてのシェフのポストである。阪は初年度、シューマンの交響曲第4番(5月)、第2番(3月)を取り上げ、飯森は、ラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」(6月)、ブルックナーのミサ曲第3番(2月)などを指揮する。

    バロックから日本の近現代まで幅広い作品をひもとく鈴木優人 (C)Marco Borggreve

     来年度の注目の指揮者としては、チェンバロやオルガンの演奏など、古楽での活躍で知られる鈴木優人があげられよう。読響ではストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」(4月)を、関西フィルでは芥川也寸志の交響曲第1番を含む邦人作曲家プログラム(6月)を、神奈川フィルではハイドンの「天地創造」(7月)を、そして東響ではバッハ(メンデルスゾーン編曲)の「マタイ受難曲」(3月)を指揮する。彼の父親である鈴木雅明は仙台フィルでメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」などを取り上げる(9月)。

     19年はベルリオーズ(1803~1869)の没後150周年にあたる。彼の代表作「幻想交響曲」は、大野&都響(4月)、バーメルト&札響(5月)、小泉&名古屋フィル(11月)など、それぞれのオーケストラがシェフで競う。そのほか、広上淳一&九響の交響曲「イタリアのハロルド」にも注目(10月)。

     ベートーヴェンの交響曲は、メモリアルイヤーと関係なく、頻繁に演奏されているが、20年のベートーヴェンイヤーではどうなるのであろうか。まずは1月にバーメルト&札響が交響曲第7番を演奏する。

    筆者プロフィル

     山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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