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必聴!

満20年を迎えた東京オペラシティ「B→C」シリーズ

12月の同シリーズに出演する高野麗音 (C)Mami Yasui

 東京オペラシティ・リサイタルホールを舞台としたユニークな演奏会シリーズ「B→C(ビー・トゥー・シー)」(東京オペラシティ文化財団主催)が2018年度で満20年を迎えた。これまでに200人を超える若手アーティストが出演。プログラムにJ・S・バッハ(B)とコンテンポラリー(C)の作品を入れるという約束事はあるが、自由に選曲したチャレンジングなプログラムはまさに千差万別。聴く側にとっても未知の作品との出合いや新たな才能の発見の場となり、音楽ファンにとって目の離せないシリーズとして定着している。                            【野宮珠里】

    若手音楽家の新たな登竜門

     B→Cは、若手の日本人アーティストに発表の場を提供する目的で、1998年4月からスタートした。毎年25人程度の候補者に、各自の演奏を収めた音源とプログラミングに関するリポートを提出してもらい、それを基に選定委員会が審査し最終的な出演者(毎年10回開催)を決定している。20年間の出演者の顔ぶれを見ると、今や日本の音楽シーンに欠かせない実力派がずらりと並ぶ。同財団の澤橋淳プロデューサーは「バッハと現代曲の両方を一つのコンサートの中で演奏することは、出演者にとってかなりヘビーで、守備範囲が広くなければ難しい。一方で、日ごろの『仕事』ではなかなかできないチャレンジも思い切りできる。B→Cへの出演は演奏家として新たな道を切り開くきっかけにもなっている」と語る。

     例えば、2015年度に出演した三味線の本條秀慈郎(ほんじょう・ひでじろう)は、文字通り三本の絃(げん)でバッハに挑戦。邦楽器独特の奏法を封印し、西洋の楽器のように音程を機械的に出すところから始めた。スタッフもサポートし、何度も録音を取りながら工夫を重ね、2度目のノミネートでようやく出演が実現した。リサイタルでは「音楽の捧(ささ)げ物」や「無伴奏チェロ組曲」などのバッハ作品の他、現代曲も多数演奏し、三味線の大いなる可能性を提示。B→Cでの演奏が世界へ羽ばたく画期となった好例だ。

    「シリーズを継続することの大切さとともに難しさもあるが、常に新しいものを求め、広がりを持った企画を作っていきたい。アーティストがいい演奏会を作れるようにしっかりとサポートしていく」と澤橋。さらなるB→Cの展開が楽しみだ。

    今年の最終回はハープで――高野麗音(れいね)リサイタル

     18年最後のB→C出演者はハープ奏者の高野麗音だ。東京芸術大学を経てフランスのパリ国立高等音楽院に留学。19世紀初頭に現代ハープ(ダブルアクションハープ)が誕生し、ハープのオリジナル曲も数多く生まれた本場・フランスで磨いたセンスとテクニックを携えて、現在はソロから室内楽、オーケストラまで幅広い活動を展開している。

     今回のプログラムは現代曲に力点を置いた。「ハープはクラシックの名曲が少なく、ピアノやヴァイオリンに比べると『日陰の存在』(笑う)ですが、逆に現代曲ではよく使われる楽器。ここにハープの生きる道があるような気もしています」

    自らの歩みの「節目に出合った作品」という点も選曲の際に意識した。例えばフランス組曲第6番は、留学して最初に学んだバッハの作品だ。「留学先の年度末の試験は45分程度のリサイタル形式で、バッハと現代曲を1曲ずつ入れることになっていて、この曲を最初に勉強しました」。元々クラヴィーアのための作品で、ハープで演奏するためには日ごろとは違った奏法を求められる。「一音一音止めてください、と言われて結構衝撃がありました(笑う)。ピアノのような切れのある感じはハープでは難しいのですが、ハープならではのエレガントな表現を目指したいと思います」。パリ留学中の同級生で友人の台信遼(だいのぶ・りょう)の「円柱――ハープのための」は2010年のリサイタルの際に委嘱した作品で、次々に湧き上がっていく透明な響きが印象的だ。ほかにも武満、ホリガー、フォーレといった多彩な作曲家の作品が並び、ハープのさまざまな魅力を堪能できる一夜となりそうだ。

     今後の目標は、作曲家と一緒に勉強の機会を作ること。「ハープについて作曲家により深く知ってもらい、新たな作品が生まれれば」。現代曲を得意とする演奏者ならではの新たな挑戦に思いをめぐらす。   

    公演データ

    【B→C 207 高野麗音ハープリサイタル】

    12月18日(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール

    ハープ:高野麗音

    フルート:森川公美*

    J・S・バッハ:フランス組曲第6番 ホ長調 BWV817

    コンスタン:アルパリセ(1980)

    ダマーズ:シシリエンヌ・ヴァリエ(1966)

    台信 遼: 円柱 ─ ハープのための(2009/11)

    武満 徹:海へⅢ ─ アルト・フルートとハープのための(1989)*

    ホリガー:前奏曲、アリオーソとパッサカリア(1987)

    サルセード:バラード Op28

    フォーレ:即興曲 Op86

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